ウエディングパーク
2018.12.13
結婚した友人への願いを込めて。イラストレーター・はしゃが語る「表現」の力
あるカップルのプロポーズ、結婚式場探し。
そして、晴れの場である結婚式。
ぬくもりのある色づかいとやわらかなタッチ、シンプルさと大胆さのバランスが織りなす雰囲気からは、結婚するカップルへの眼差しが伝わってくるよう。
ウエディングパークWEB限定CM第一弾「式場探しに行くパ!」のイラストを描いたのは、幼い頃から絵を描くことが好きだったと話すイラストレーターのはしゃさん。
はしゃさんの代名詞とも言える、独特な目の描き方。このスタイルでイラストを描くようになった背景には、自分の「好き」を大切にする決断と、「表現の力」を信じる強さがありました。
今回のイラストに込めた思いと合わせて、はしゃさんの「表現」との向き合い方を探ります。
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▼プロフィール
はしゃ
1992年新潟県生まれ。大学在学中に漫画を学び、フリーランスのイラストレーターに。漫画連載の他、書籍のカバーイラストや挿絵、ミュージックビデオの制作など多様なジャンルで活躍中。海外旅行が好きで、イラスト入りの旅行記を制作している。2017年には初の単行本『さめない街の喫茶店』(イースト・プレス)を出版。Twitter(@hasya31)
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「好き」をすくすく伸ばせる環境で
── はしゃさんがイラストを描くお仕事をしたいと思ったのは、いつからなんでしょうか。
小さい頃から絵を描くのが好きで、物心ついた頃からイラストを仕事にしたいと思っていました。私の両親も兄弟も漫画が大好きで、ずっと漫画に囲まれて育ってきました。
近所にも漫画好きな人がいたので、いつも回覧板のように漫画がまわっていて。私が『ちゃお』を買って、読み終わったら別の人にまわす。そうして、お兄ちゃんが買った『少年ジャンプ』やお母さんが買ったミセス系の漫画や、近所の人が持っている漫画も読んでいました。なので、子どもの頃から幅広いジャンルの漫画に触れていました。
気がついた時には、読んだ漫画を真似しながら自分で絵を描くようになっていて。小学校の文集にも将来の夢は「イラストレーター」って書いていました。その頃からずっと絵を描いています。
── ご自分の「好き」を思いっきり伸ばしやすい環境だったんですね。
そうですね。大学に進学するときも「芸術系の大学に行きたい」と両親に伝えたら、「どうぞ」って。反対されることもなく、漫画に焦点を絞った学科に進みました。周囲の理解や環境にも恵まれていて、ありがたいことに夢をあきらめようと思うタイミングはありませんでした。
人物の目をシンプルに描くことにした理由
── 進学後はどんな大学生活を送っていたんでしょうか。
漫画家の教授達からノウハウを学び、同じく絵が好きな友人達と絵を描いていました。先生に勧められて、漫画雑誌への投稿も始めました。あとは雑誌編集者の方が大学で漫画を見てくださる機会もあったので、チャンスに恵まれている環境でした。
── 本格的に絵を勉強するようになってから、何か転換点はありましたか?
大学生活の途中で画風を大きく変えました。以前はいわゆる“漫画らしい”絵を描いていて、特に人物の目をもっと描きこんでいました。でもそういう絵はなんか違うなと思って、いろいろ試していくうちに今のシンプルなスタイルになりました。
── どんなタイミングで「なんか違うな」って気づかれたんでしょう。
きっかけは、漫画本の雑誌に掲載されたこと。紙面を見てみたら、自分のイラストだけがすごく拙く見えて。「浮いているな」と思ったし、これ以上頑張っても他のページの漫画に追いつけないと感じました。
それまではずっと「普通の漫画を描こう」って思っていたんですけれど、それって無理していたなあ、楽しくないなって。そのときから無理に漫画らしい絵を描くのも、雑誌に投稿するのもやめました。
── その後、絵のスタイルを変えるに至ったんですね。
雑誌への投稿をやめてから、ひたすら自分が好きなように描くことに注力しました。それまで私が“漫画らしい”目や表情を描くと、私の技術不足が原因なんですが、同じ人物を描いていても場面によって違う人物に見えることがあって。どうにか試行錯誤したところ、今の絵柄に落ち着きました。
一時期、顔が見えていない人物を描いていたことがあって。後ろ姿や、顔が何かで隠されているような。そういうものをインターネットに公開していたら、反響があったんです。言葉もなく表情も見えない絵から、何かを感じ取ってくれる人たちがいました。そのときに「あ、表情がないほうが、見てくれる人が自分を投影しやすいのかな」「シンプルなスタイルのほうが絵を邪魔しないこともあるんだ」って気づきがありました。
それに、「楽しくない」と思いながら“漫画らしい”絵を描いていたときよりも、シンプルにしたいところをシンプルにしたほうがすごくしっくりきたんですよ。自分の絵に合うなあって。ようやく自分のイラストになったように感じました。
── 周囲に漫画家志望の学生がたくさんいる中で、自分だけ別の表現を始める決断をすることは、はしゃさんにとって重たいものではなかったですか?
「自分の好きなほうでいっか」と思っていました。周囲と自分を比べても仕方ないので、それよりも絵を描くことが好きだと思う気持ちを優先しました。あとは独自のスタイルで売れている方々を見て支えられました。
大学生になってから、学校で教わる“普通”とは違うスタイルで描かれた漫画と出会って。「あ、鉛筆で描くのもありなんだ」「もはや枠がないじゃん」って驚いたんです。でも、そういうものが印刷されて読者に受け入れられていた。そっか、“普通”じゃなくても生きていける道があるんだ、と思って。だから安心して、好きだと思えるほうを選べました。
言葉を超えて、イラストが自分の「好き」を伝えてくれた
── その転換点がスタートになって、実際にはしゃさんはご自分のスタイルでイラストのお仕事を続けていらっしゃるんですよね。どんな場面でイラストを描きたい気持ちになるんですか?
ふとした瞬間に構図が下りてくるときもあれば、街を歩いていて「いいな」と感じたものを描くこともあります。日常の中で「あ、これ描きたいな」って思うものに目がいっていますね。
── 海外旅行がお好きなのも、「これを描きたい」と思うものを見つけられるからでしょうか。
日本とは街並みが全然違うので、歩いていると気づきが多くて楽しいですね。建物の並び、階段や草、道に入っているヒビの形、影。雰囲気や人の様子、食べ物も。おいしいものを食べることが大好きなのと、たくさんの質感が一つの食べ物の中で一緒くたになっているのがおもしろいなって。そういう楽しさや気づきを誰かに伝えられたらいいなと思って、旅行に行くたびにイラストを入れた旅行記をまとめています。
── 幼い頃からずっと絵を描いてきた中で、イラストがもたらしてくれた印象的な経験はありますか?
今年はニュージーランドに滞在したのですが、私は英語があまり得意じゃないんです。でもカフェでイラストを描いているときにウェイターさんが声をかけてくれたり、街のイラストを描いて見せたらすごく喜んでくれたり。
「私はこれだけこの街のことを好きなんだよ」「この暮らしに今すごく満足しているよ」って言葉では伝えきれなくても、イラストを見たときにわかってくれたのかなと感じられて。言葉だったらここまで感動してもらうことはできなかっただろうな、って思ったんです。言葉を超えて「好き」を伝えられたかなって。
── 言葉が通じなくて孤独を感じそうな土地で、イラストが言葉を超えてはしゃさんの気持ちを表現してくれたんですね。
イラストって自分のフィルターをとおして描いているので、当たり前ですけど、実物を見たときと私のイラストを見たときとでは感じ方が違うんですよ。イラストのほうがより私の目線を伝えやすいような気がして、「この場所が好きだから届くといいな」「これがおいしかったから伝えたい」って気持ちで描いています。自分の気持ちがどこで動いたのかを伝えやすい表現の方法が、私にとってはイラストなんです。
表現を見てもらえることが救いになる
── 今回ははしゃさんのイラストで、カップルのプロポーズから結婚式までを表現していただきました。
以前はあまり結婚式に興味を持っていませんでした。原っぱでみんなとバーベキューしたらいいんじゃないかな、くらいに。でも友人の結婚式に出席することが増えると、それぞれの新郎新婦の思いが伝わってくるんですよね。自分が楽しいだけじゃなくて、来場者に楽しんでほしいと思っているんだなって。そう気づいたときに、結婚式の良さに触れられたような気がしました。
つい最近も、友人の結婚式に出席したばかりで。「リングを入れるケースにこだわった」「来場者へのお土産もこうやって用意した」って教えてもらったんです。だから今回のイラストは、友人に対して「幸せになってくれ〜」と願いながら描いています。
── その思いを特に込められたと感じる部分はありますか?
主人公の女の子ですね。髪の毛や服の線を気持ちよく描けました。あとはやっぱり食べることが好きなので、ケーキがお気に入りです。ネイキッドケーキが流行っていることを知って、ケーキの端でクリームがちょっとぽったりするように描いています。
── ここまでお話をうかがっていて、はしゃさんにとって一番「表現の力」を信じられるのがイラストなのかなと思ったのですが、はしゃさんはどんな気持ちでイラストと向き合っているのでしょうか。
イラストを仕事にする前は、絵を描くことそのものが楽しみ。ストレスや欲求不満が溜まったときに、絵を描いて発散することもありました。そういう昔のトゲトゲしている絵は恥ずかしいので非公開ですが(笑)、自分の楽しみのためか、感情を発散する手段でした。
今は「線を引きたい」か「表現したい」か。ボールペンで線を引く行為自体が好きで、「これをこの線で描きたいな」って。あとは、イラストを見てくださるみなさんのリクエストに応えたいなと思っています。イラストを見ていただけること、私の絵を好きだと言っていただけること自体が、表現する上ですごく救いになっているんです。
(文:菊池百合子/企画:ウエディングパーク)
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はしゃさんがイラストを手掛けるウエディングパークWEB限定CM。今回の作品は、プロポーズ中のカップルの前に妖精「ウエパ※」が現れ、二人をスマートフォンでの結婚式場探しの旅に連れ出すというストーリー。アニメーションは人気イラストレーターのはしゃさん、カップル男性役を声優の江口拓也さん、女性役を加藤英美里さん、ウエパを田中あいみさんが担当し、結婚準備中の幸せな世界観を表現してくれました。
詳しくはプレスリリースをご覧ください。
※ウエディングパークの公式キャラクター。名称は、当社の社名及びサービス名である「ウエディングパーク」の略称である「ウエパ」から名づけられたもの。結婚が気になり始めた人の前にパっと現れる妖精です。