自社集客率60%超。バリューマネジメントが取り組んだ「カルチャーにフィットする集客方法」の見つけ方【Wedding-UP CASE #007】

自社集客率60%超。バリューマネジメントが取り組んだ「カルチャーにフィットする集客方法」の見つけ方【Wedding-UP CASE #007】

結婚するおふたりの式場検討時の情報収集源が多様化してきている今、ブライダル業界で注目されているキーワードのひとつが「自社集客」です。予約機能のある中間サービスを通さずに、式場各社の公式ホームページなどから直接予約してもらう集客方法を指します。

式場が伝えたいメッセージは公式ホームページにこそ込められていて、その思いに共感した顧客とのベストマッチを叶えられるのが「自社集客」。

新型コロナがウエディング業界に大きく影響をもたらし、広告費を削減する傾向が強まっている今、顧客と式場双方にとって幸せなマッチング手法として「自社集客」はますます重要になっていくのではないでしょうか。

そこで結婚あした研究所では、自社集客に注力し成功している企業の事例(CASE)を紹介する新企画「Wedding-UP CASE 〜自社集客力を鍛える〜」を立ち上げました。各社がどのように自社集客に取り組み、その先に何を目指しているのかを聞いていきます。

今回取り上げるのは、関西を中心に神社や迎賓館といった歴史的建造物でのウエディング事業を展開するバリューマネジメント株式会社。会場ごと(屋号)の集客だけでなく、“企画(屋号以外)”という新たな視点から自社集客を強化した同社。2021年時点で集客全体の60%以上が自社ホームページや主催イベント経由と、独自の自社集客モデルを確立させつつあります。

同社マーケティング部ゼネラルマネージャーの笠正太郎さんは「自社集客は会社のカルチャーにフィットした方法でこそ成功する」と語ります。その具体的な手法や“企画(屋号以外)”の集客を支えた考え方など、自社集客を成功に導くために何をすべきかうかがいました。


■プロフィール
バリューマネジメント株式会社
2005年創業。国内の歴史的資源を日本の財産であるととらえ、それらを活用した「観光まちづくり」をミッションに掲げ、歴史的建造物の再生事業とともに神社仏閣やレトロ建築を活用したブライダル事業を展開。さらに地元での結婚式を叶える「ジモコン」や、グループ内の屋号が一堂に会しての「フェス」事業など、新たな集客ルートを確立している。公式サイト


「会場ごと」の集客から「企画」軸にシフトして自社集客に取り組む

――自社集客を強化するに至ったきっかけをお聞かせください。

自社集客に注力するようになったきっかけは、バリューマネジメントグループ(以下、VMG)の代表である他力野がかねてから「ネットの発展によって、従来の集客スタイルには頭打ちがくるのではないか」と予測していたことに端を発します。当時紙媒体への広告出稿の割合が多い中、この状況はネットの発展により変わっていくと踏んでおり、だからこそ、できるだけ早くに自社集客にシフトする必要がありました。インターネットはフラットな市場環境なので、小規模事業でも参入が容易な点もチャレンジしやすかったポイントです。

――具体的には、どのようなプロセスをたどったのでしょうか。

突然「自社集客だ!」といっても難しいので、まずは各ウエディングメディアが展開しているサイトに参画し、媒体集客の最大化に取り組みました。ある程度まで最大化が実現したところで、自社集客に乗り出しました。2016年頃からでしょうか。

当社の特徴としては、一般的に取り組まれることが多い「会場ごと(屋号)」の集客ではなく、「企画(屋号以外)」での集客に取り組み始めたことです。

――屋号以外の企画、というのは?

屋号とは、各会場のことを指します。複数会場を運営している企業では「会場ごと」にそれぞれ集客をするのが一般的な考え方です。それももちろん不可欠ではあるのですが、もう一つの軸として「企画」という考え方を取り入れたんです。

「企画」軸の自社集客の例として、「レトロ婚フェス」をはじめとしたイベントがあげられます。VMGは歴史的建造物を活用した会場が魅力です。そのため、「レトロな式場で挙式したい」という方に向けて、就職活動の合同説明会のように1つの場所で複数会場の魅力を知ることができるイベントを発足しました。短時間で複数の会場を知られて効率が良いうえに、料理の試食やドレス試着もできたらカップルにとって「結婚式」のイメージがしやすくなりますよね。

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レトロ婚フェス(提供:バリューマネジメント株式会社)

このように、会場ごとではなく「企画」軸での自社集客を強化していきました。「企画」軸での集客によって、会場ごとの集客では出会えなかったお客様にも出会うことができ、よりお客様の理想やニーズに沿ったご提案ができるようになったと思っています。もちろん失敗した施策もたくさんありますよ(笑)。それでも「とりあえずやってみよう」の精神で、5年間続けてきました。レトロ婚フェスは成功した企画だといえますね。今でもコロナ禍ですが人数を減らしながらも継続的に開催しています。

――実際に参加されたお客様からの反応はいかがですか。

元々お客様から「結婚式場への問い合わせはハードルが高く感じる」という声があって。そこでVMGのフェス事業(イベント)では「もっとカジュアルにしよう」と決めて、友達同士や親と一緒に来てもいい、結婚の予定がなくてもいい、見積もりも出さないし空き状況も基本お伝えしない…と、一般的な式場見学の“逆張り”をしています。営業をまったくしないんです。そうすることで、「フェスなら楽しい」と何度も来てくださったり、他のお友達と遊びに来てくださったりするお客様もいますし、クチコミで興味をもって訪れる方も増えています。

マーケティング部が企画をすることでセールスよりもリサーチに重きを置いた運営ができているのは大きいです。来場者のリアルな声は、僕たちのサービスを考えるうえで欠かせないものですから。

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フェスで体験できるコンテンツイメージ(提供:バリューマネジメント株式会社)

――とても画期的な企画に感じますが、会場間で競合してしまうことはないのでしょうか。

仰るとおり複数会場が近隣にある企業だと「自社会場間での競合」が起こりがちかもしれませんが、VMGの場合は起きていません。「手を取り合ってチームで取り組む」カルチャーがあるためと言えるでしょう。

VMGは複数会場を運営していて、特に関西圏に多くの会場があります。それを活かして勝負できれば優位性が高まるのではという共通認識を全社で持てていることが理由のひとつでしょうか。

それからVMGの会場はその土地土地に元々あった建物をリノベーションしたものなので、「似た会場」というものがありません。自社内にバリエーションがあり、幅があるというのも強みになってくれていますね。逆に言うと、僕が他社の集客担当者だったとしたらVMGでやっている「企画」軸の自社集客と同じ手法はとらないだろうなということです。

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「企画」軸での自社集客イメージ

自社集客のカギは、カルチャーにフィットした施策を打つこと

――先ほどお話に出た、企業カルチャーについても教えていただきたいです。カルチャーにフィットした自社集客というのは、どのようなものでしょうか。

どの企業にもビジョンやミッションというものがあると思います。僕はそれを「VMGっぽい」と表現していて、この「らしさ」ってどこの企業にもあるものだと思うんです。僕が思うVMGっぽさというのは一体感やチーム精神なのですが、これが「企画」軸での自社集客にすごくフィットしているんだと思います。

例えば「個性を活かそう」というカルチャーなら、“カリスマプランナー”のようなスタッフにフォーカスした打ち出し方をしてもいいし、社内でウエディング以外に強みとなる事業があればそこからアプローチしてもいい。それぞれの会社に合ったマーケティングがあって、それができていれば、いろいろな企画も無理なく続けられます。いろいろなアプローチがあるなかで、VMGはイベントなどを通してグループ全体で集客に取り組む「企画」軸での集客法が合っていたということです。

――Webマーケティングを進めるうえで、人材開発はどのようにされているのでしょうか。

VMGではデジタル人材を外部に求めず、社内で育成しています。自社集客を考えたとき、デジタルリテラシーの高い人材をいかに社内に抱えられるかは非常に重要です。さらに自社に合った価値観をもっている必要があると思います。

ウエディング業界では、デジタルの知識だけでなくウエディングの知見も求められます。どちらかに優れた人はたくさんいますが、両方を兼ね備えている人って実は少ない。デジタルの知識がある人を採用してウエディング業界に最適化するという方法もありますが、VMGは接客経験もあってウエディングの知識も豊かなプランナー出身者に、デジタルの知識を身につけてもらうことを大事にしているんです。

――あくまでウエディングの現場経験を大切にしていくということですね。

そうですね。僕自身も、打ち合わせの現場にも積極的に行き、お客様の生の声を聞ける機会を大切にしています。打ち合わせ中にドリンク交換をするついでに、カップルと少し話してみたり。僕のマーケティングは数字やスケジュール以上に、お客様が何を思って、どんなものを求めているかを重視するので、そのリサーチに時間をかけています。

VMGに入社するまで、僕は営業職を主に経験してきました。また、VMGに入って最初の1年間は、ウエディング業界について理解を深めるためにプランナーとして働いていたんです。現場主義の考えはそこから生まれたのかもしれません。

例えば確固たるブランドがあり、そのブランド力を活かして複数の会場を運営しているような企業なら、ウエディングの知見よりも効率のよいマーケティング手法をどんどん展開してデジタル方面に振り切った自社集客をしてもいいかもしれません。これも企業によると思います。そのため、自社のカルチャーを的確につかむことも、自社集客マーケティングには欠かせない要素です。

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ウエディング・デジタルの知識の習得について

――組織づくりの面についてもお聞きしたいです。貴社のカルチャーである「一体感」を醸成する取り組みも、社内で行われているのでしょうか。

そうですね。毎年「働きがいのある会社ランキング」にエントリーして、自社を見つめ直す強化月間を設けるなど、社内での心理的安全性を高めるための施策を考え続ける取り組みも行われています。

そのような組織施策を通じて、先ほどの「VMGらしさ」というものが見えてくる。自社集客においてもそこを起点にすることで、自社にフィットした施策に育っていくと思います。

何のために働くのか、ウエディング業界の継続発展に寄与したい

――今後、取り組んでいきたいことをお聞かせください。

冒頭申し上げたように、当社は「企画」軸での集客から強化し始めましたが、現在は会場ごとの集客にも力を入れています。その中で、まずは自社ホームページの改修に取り組んでいます。会場ごとのホームページをより使いやすくするための機能改善に加え、各SNSページを一覧で見られるようにするつもりです。InstagramやTwitter、YouTubeにnoteなど、各会場でいろいろなSNSを運用していますが、その中心的な存在であるホームページに情報が集まっている状態にする考えです。

それから、資料請求ページももっとお客様に親切な設計にしようと考えています。現状は「資料請求」のリンクから飛ぶといきなり住所や名前などの入力フォームがあり、どのような資料が届くのかがわかりにくい状態。お届けする資料のセットが見られたり、オプション的に必要な資料も選んで取り寄せられたりしたら便利ではないかと思うんです。

――ウエディング業界に対しての思いや考えもぜひお聞かせください。

ウエディング業界全体があるべき方向に寄与できるか、が大切だと考えています。今、業界各社はコロナの影響もあり厳しい状況に置かれています。このままでは危ないと感じていながら動けないという企業も多い。でも、中長期で考えたときに我々ウエディング業界の人間は、結婚されるおふたりや、結婚式に関わった人の幸せのために働いているんですよね。そこに向き合って、きちんと業界としての方向性を作りたいですし、VMGとして貢献したい。そのための方法を、これからも探っていきたいです。

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