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予約数前年比120%、ベストレート保証を皮切りに仕掛けるT&Gの自社集客事例【Wedding-UP CASE #001】

結婚するおふたりの式場検討時の情報収集源が多様化してきている今、ブライダル業界で注目されているキーワードのひとつが「自社集客」です。予約機能のある中間サービスを通さずに、式場各社の公式ホームページなどから直接予約してもらう集客方法を指します。

式場が伝えたいメッセージは公式ホームページにこそ込められていて、その思いに共感した顧客とのベストマッチを叶えられるのが「自社集客」。

新型コロナがウエディング業界に大きく影響をもたらし、広告費を削減する傾向が強まっている今、顧客と式場双方にとって幸せなマッチング手法として「自社集客」はますます重要になっていくのではないでしょうか。

そこで結婚あした研究所では、自社集客に注力し成功している企業の事例(CASE)を紹介する新企画「Wedding-UP CASE 〜自社集客力を鍛える〜」を立ち上げました。各社がどのように自社集客に取り組み、その先に何を目指しているのかを聞いていきます。

今回取り上げるのは、先進的な自社集客の施策で知られる株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)です。現場スタッフを取りまとめる運営統括本部 東日本事業部 部長の金香憲吾さんと、自社集客の施策を担当している事業企画部 部長の浅野祐樹さんにお話をうかがいました。明日から自社集客に取り組むきっかけになれば幸いです。


■ プロフィール
株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)
1998年創業。企業理念は「人の心を、人生を豊かにする」。婚礼市場において「一顧客一担当制」「一軒家貸し切り」が魅力のハウスウエディングのパイオニアであり、婚礼で培ったホスピタリティを礎に、グループでホテル事業を展開開始。日本にブティックホテル市場を創るという戦略を国内ウエディング事業に続く柱とし、経営基盤の強化と資本効率改善による企業価値向上に取り組んでいる。 公式サイト

お客様との最も望ましいコミュニケーションを、自社ホームページで積み重ねる


── T&Gでは、どんなきっかけで自社集客に注力し始めたのでしょうか?

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金香:5〜6年ほど前から、売上高に対して広告宣伝費や販売促進費の比率が上昇していた課題がきっかけです。
近年、競合各社から結婚情報媒体(以下、媒体)への積極的なリソースの投入が続き、その費用が高騰していました。しかしこの先に着手すべき少子高齢化や採用難への対応、働き方改革の推進をはじめとする内部課題に鑑みると、営業関連費を下げる必要があります。そこで媒体ごとのCPAや契約率を見たところ、他の媒体と比べて投資対効果が良かったのが自社ホームページだったので、自社集客への注力を決めたのです。
さらに今年は新型コロナの影響で広告費の捻出が難しい状況に置かれ、媒体に頼った広告投資から脱却する必要性が一気に高まりました。ですから今こそ自社集客に注力するアクセルを踏むべきタイミングだと捉えています。

浅野:その一環として、2019年の8月頃から自社ホームページでベストレート保証の訴求を始めています。ウエディングパークさんが調べたデータにもありましたが、式場予約方法の選定理由を見てみると、「媒体の方が自社ホームページよりも金銭的メリットがある」とお客様が強く感じていることがわかりました。そこで、本来自社ホームページで最も大きなメリットとして訴求できる金銭的メリットを分かりやすく伝えられたらよいのではないか。そう考えてベストレート保証の訴求強化実施に踏み切りました。

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式場予約方法の選定理由(2020年9月 ウエディングパーク調べ)


媒体では特典が重視されているので、各社で特典を押し出してお客様に比較検討していただくという状況が続いています。この状況が続けば広告費が増え、さらに特典の費用も増えていってしまいます。しかし自社集客に注力すれば、広告出稿費が多くかからないので、その分お客様に還元できるというお客様にとっても式場にとってもよりよい状態をつくれます。メリットをお客様に分かりやすくお伝えし、お客様とシンプルなコミュニケーションを図りたいと考えています。

ベストレート保証により、予約件数が前年比100%超えをキープ


── 自社集客に力を入れて1年以上経ったとのことですが、効果はどのように出ていますか?

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浅野:まず定量的な効果ですと、予約件数はベストレート保証強化の実施前である前年比で120%に上昇しています。新型コロナの影響を受けた2020年4〜5月は落ち込みましたが、6月以降再び盛り返し、前年比100%を超えている状態です。
合わせて、契約率とNPS(ネットプロモータースコア)も上昇しています。これはもともと契約率が高かった自社ホームページに注力したことが要因の一つだと思っています。また、自社ホームページでのコミュニケーション改善をきっかけに、問い合せから施行まで一貫してお客様に喜んで頂くコミュニケーションをしようという意識が、お客様と直接対話する現場スタッフにも浸透してきたことが理由だと考えています。

金香:新型コロナの影響が出てから、お客様の式場選びのインサイトが変化したとも感じます。ハードの情報だけでなく、この式場がどの会社に運営されていて、その会社は信頼できるのかも重視されていくと予測しています。
ですから現場スタッフには、お客様にこれまで以上に信頼していただくコミュニケーションが重要だと伝えています。また、自社ホームページ比率の向上によりさらに契約率が上がれば、ウエディングプランナーの生産性が上がってこれまで手が回らなかった業務に着手できたり残業が短くなったりと効率化にもつながります。その意味でも現場スタッフは自分ごととして捉えてくれています。

── 逆に、自社集客によるベストレート保証を実現する上での難しさはありましたか?

浅野:ベストレート保証は論理的にはすぐに実現可能です。しかし実際に、お客様にベストレートをご案内するのは現場のスタッフなので、内部での意思統一が欠かせません。ここは式場としての信頼に大きく関わる部分なので、ホームページに掲載している情報とお客様が来館された際にアナウンスされる情報にズレを生じさせないよう、金香を中心に運営部門で統制をとってもらっています。

金香:自社ホームページ経由の接客は、媒体経由の接客よりも期待値が高い状態でご来館されることも強く認識するようにしています。
自社ホームページから予約される方は、さまざまな媒体やメディアでT&Gのことを知り、T&Gを好きになった段階で自社ホームページに訪問されていると仮説立てています。
そのようなお客様に、加えて金銭的なメリットをお約束することは、これまで以上に高い期待値を持ってご来館頂けるということ。その期待の大きさに応えられるように現場スタッフの意識向上を図っています。

部署間で連携し、一貫性のあるコミュニケーションを実現する


── お話をうかがっていると、業務を縦割りに考えるのではなく部署間で協力することで、お客様に提供する体験の満足度を全体的に上げられるのだなと感じます。

浅野:そうですね。広告、セールス、オペレーションと分割したくなりますが、私たちにとってお届けすべき商材はひとつです。その商品を適切にお伝えするためには、私たちのブランドとお客様がどのような会話をするのか、全てのコミュニケーションに一貫性があり、分断されずに繋がっていることが重要だと考えています。
ですからSNSやホームページを挟んでお客様と会話するときも、ご来館いただいて直接お話するときも、ブランドが持つひとつの人格として筋が通っている状態にしたいのです。結婚式だけが良ければそれでOKなのではなく、あらゆるコミュニケーションの積み重ねによってお客様によりよい体験をお届けし、準備の時間も含めて幸せを倍増させていきたいと思っています。

金香:推進のためにはインナーブランディングも重要だと考えています。現場のスタッフに同じ方向を向いてもらうために、自社集客の施策と経営課題をリンクさせ、その先の目標をセットで伝えています。
具体的に言えば、自社集客を強化する先にあるのはブランディングです。T&Gのなりたい姿があり、どのように発信していくのか、その過程に自社集客の強化がある。そんな風にプロセスを伝えています。

浅野:側から見ていると、実際に金香をはじめ運営部門がかなり部署内で啓蒙してくれているな、と思います。さらに社長や本部長からも全社員に直接メッセージを発信する機会を設けているので、現場のスタッフも受け取りやすくなったのではないでしょうか。

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信頼できる情報提供のために、どのようなコンテンツを用意するか


── 1年以上自社集客に注力するなかで、感じている課題はありますか?

金香:自社集客を強化する上で、ベストレート保証はひとつのきっかけに過ぎません。これだけ情報があふれ返っているなかでお客様にとって本当に有益な情報を届け、いかにお客様に信頼していただくかが課題です。
現在は事業会社だからこそ提供できる情報は何かを考えながら、カスタマーセンターに集積された年間1万組のお客様のお声や、利用規約など、顧客視点に立ったときにどれだけ有益な情報を出せるか、試行錯誤しています。

浅野:考えてみれば、ポータルサイトのほうが自社ホームページより情報が充実している状況自体が不思議ですよね。お客様を取り巻く環境は大きく変化している中で、今のホームページのコンテンツもメッセージも全然足りていません。今後も金香が言うようにお客様にとって有益な情報を提供できるように、連携しながらコンテンツを考えていきたいです。

金香:このようなホームページの強化は、明日の集客にすぐに貢献できるものではありません。中長期的に取り組むことだという認識を経営、現場双方で共通認識を持つ必要があります。
特に新型コロナの影響で、これまで重要だと分かっていたけれど緊急ではなかったことに、今だからこそ取り組むべきと考えるようになりました。広告費以外の改善も含めて、引き続き部署横断的に「収益改革」の観点でプロジェクトを進めていこうと考えています。

浅野:金香とよく「お客様にもっとT&Gを好きになってもらいたいよね」と純粋に話しています。そのためにお客様へよりオープンに情報をお伝えし、ホームページでも現場でもお客様とのコミュニケーションをどうすべきかを模索しながら、多くのお客様に好きだと言ってもらえるブランドになっていきたいと思っています。

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(取材・文:菊池百合子 / 写真:伊藤メイ子  / 企画編集:ウエディングパーク

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