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2019年比135%の自社集客を達成、エスクリが実践した2つの施策【Wedding-UP CASE #006】

結婚するおふたりの式場検討時の情報収集源が多様化してきている今、ブライダル業界で注目されているキーワードのひとつが「自社集客」です。予約機能のある中間サービスを通さずに、式場各社の公式ホームページなどから直接予約してもらう集客方法を指します。

式場が伝えたいメッセージは公式ホームページにこそ込められていて、その思いに共感した顧客とのベストマッチを叶えられるのが「自社集客」。

新型コロナがウエディング業界に大きく影響をもたらし、広告費を削減する傾向が強まっている今、顧客と式場双方にとって幸せなマッチング手法として「自社集客」はますます重要になっていくのではないでしょうか。

そこで結婚あした研究所では、自社集客に注力し成功している企業の事例(CASE)を紹介する新企画「Wedding-UP CASE 〜自社集客力を鍛える〜」を立ち上げました。各社がどのように自社集客に取り組み、その先に何を目指しているのかを聞いていきます。
 
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今回取り上げるのは、ホテル・レストラン・ゲストハウス・専門式場など多様な施設スタイルで全国に出店する株式会社エスクリ。2020年3月には関西の有名結婚式場・ラヴィマーナ神戸を傘下に加えたことを機に、自社集客を強化。既存式場にもさまざまな施策を実施した結果、コロナ禍において2019年比135%の自社集客に成功しています。今回は、ブライダル事業本部マーケティング戦略部長の松田哲郎さんに集客率向上の秘訣などをうかがいました。


■プロフィール
株式会社エスクリ

2003年創業のブライダル企業。業界の常識を打ち破る「駅近・ビルインタイプ」の式場を多く展開し、ホテル・レストラン・ゲストハウス・専門式場など多様な施設スタイルで全国に出店、その数は33軒にのぼる。2020年3月からはラヴィマーナ神戸を傘下に加えた。公式サイト


自社集客強化に乗り出すきっかけとなったM&A

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── 自社集客を強めようと思った背景をお聞かせください。

現在、多くの企業にとって「自社集客」の強化が命題になっており、最も力を入れなければいけないものになってきています。市場の流れから、私たちもその方向に向かっていかなければと感じていました。ただ、保有する式場の特性によって、自社集客の向き不向きがあるのも事実です。

例えば、すでに多くの人に認知されているブランド力のある式場の場合は自社集客も強いのですが、そうじゃない場合は正直大変な部分も多いように感じます。

当社が運営している式場はビルイン形式の式場が多いため、「あそこに式場ある」と認知されにくいのが現状。そのため、自社集客を強化するなら、広告に頼らざるを得なかったのです。

── そんな中、2020年3月にM&Aによりラヴィマーナ神戸がエスクリ傘下に入りましたね。

エスクリのこれまでのタイプとは違う、ロケーションも良く知名度の高い式場でした。ラヴィマーナ神戸を運営していく中で、自社の既存式場との違いに気づいたのです。それは、「ホームページの作りが全く違う」ということ。

ホームページにおいて「自社に関する情報を補い、伝える役割」と「CV(コンバージョン)を取りにいく役割」の大きく2種類があるとすると、エスクリが運営してきた各式場のホームページの役割は、後者として捉えていました。そのため、最初にフェアの告知があり、プランの紹介があり、簡単な説明文があって、資料請求や問い合わせに導いていく…という作りでした。

一方ラヴィマーナ神戸のホームページは、トップページに「ラヴィマーナ神戸を勧める5つのポイント」がありました。そこでは、「どんなことが叶えられる式場なのか」ということが表現されており、式場を探している方の欲求を満たすような内容になっていました。つまり「自社に関する情報を補い、伝える役割」として作られていたのです。

例えば5つのポイントのひとつ、「ロケーション」のページでは、「時間帯によって式場の雰囲気が全く異なるイメージになること」「広大な敷地にさまざまな施設があること」が可視化されており、ひと目見ただけで情報が分かりやすく整理されていました。画像とテキストをうまく使い濃密な情報を可視化する作りは、InstagramなどのSNS が台頭している時代の流れにもちょうどフィットしているように感じました。
 
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そんな中、新型コロナの影響で、ウエディング業界の状況は大きく変わりました。面を抑えて数を取りに行く従来の方法が通用しなくなり、一層の効率を求められるようになったのです。そこで、2020年の夏から大きく舵を切り、自社集客により力を入れていくことになりました。

自社集客強化に向けて実施した、トライアル&大がかりな組織再編

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── どのように既存ホームページのテコ入れをスタートしていったのでしょうか。

正直このホームページの作りは、当社の既存の式場にはあまり向いてないんじゃないかと思っていて「ラヴィマーナ神戸がこのホームページの作りで成功しているのは、ブランド力があるからなのでは」という仮説がありました。その仮説を証明するために、まずは既存の式場でトライアルを実施することにしたのです。

選んだのは、尖ったコンセプトを持つ既存の2店舗。SEM※1を強化するトライアルの結果、流入はものすごく増えたのですが、コンバージョンが全く増えませんでした。仮説を実証した結果、「やっぱりブランディングが足りなかったね」という改善点を得られました。

ペイドメディアなどで種まきをし、タッチポイントを増やして認知を広げ、興味を持った方に検索していただき、流入してもらう。ブランド力がない式場の場合は、こういった流入以前の段階を踏まないと特に厳しいと感じたことも収穫でした。「認知を広げる行動」と「流入してくれた方の欲求を満たすホームページを作ること」、この2つは別軸で考えなければいけないのです。そのためにまず、当社では体制面から変えていくことにしました。

── 具体的に、どのような体制に変えられたのですか。

もともとエスクリでは、全ての式場を横軸で見る部署編成になっていました。例えば「Web 集客担当」はWeb集客を、「誌面担当」は誌面を担当し、保有する33の式場を横断して見ていたんです。

そのやり方は非常に効率が良く、それぞれの専門性も高められるのですが、決定的な問題点がありました。例えば、とある式場の来館数が下がったとき、「何の施策が悪かったのか」と振り返ろうとしても責任の所在が分からないのです。

「紙面が悪いから問い合わせが来ない」「プランが悪い」「この媒体のクチコミが悪い」などと想定はできても、「結局、何が悪いのか」となったときにきちんと答えられない。主体性や責任感が持てないというのが一番の課題でした。

コンバージョンは、ひとつの媒体の情報だけで決まるようなことなんてありません。さまざまな媒体やSNSを通じて式場を認知し、自社ホームページに流入した後、出たり入ったりを繰り返してして、ようやくコンバージョンに結びつく。そのため、式場ごとにユーザーの行動を把握しつつ戦略を練るべきです。自分の担当する式場の立ち位置を理解して、「このメデイアにはこのアプローチが効く」「自社ホームページはこのような表現が良い」と複合的に考えるのがあるべき姿。それを複数の人間でやると、複数の思考が出てきて、複数の責任が発生した結果、誰も責任を負わなくなってしまいます。そこで思い切り体制を変えてみることにしました。

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まずは4つのチームに分け、1チーム8屋号ずつの編成に。そのチームに各式場担当のリーダーを設置し、その下にスタッフを配置しました。

また、集客を司る責任者に全体コントロールができる権限移譲も行いました。私が管轄する部署ではありますが、私よりその責任者の方が権限を持つ範囲も広がりました。権限が上にばかりある状態だと、上の考えしか発生しなくなるんですよね。この体制変更で、その式場のことをよく知る、現場の意見を大切にできる体制になったと思います。

── かなり大きく変えられたようですが、社内での反発はなかったのでしょうか。

もちろんありました。スタッフからは「こんなに大きく変えるなんて」と反発されましたし、上層部からは「効率が悪くなるんじゃないか」と言われましたね。

しかし私は「責任の所在を明確にすることが自社集客成功への第一歩」という考えでした。今のままでは、うまくいかなかったときの「何が悪いのかわからない」という現状から脱せないと思っていたのです。

また、社員の教育に関しても機械的になってしまい、成長促進がされないという問題点もありました。旧体制は、個が強い体制です。しかし、それってチームではないですよね。一人が欠けるとやっていけない組織としての弱さがありました。全員の力が合わさることでより強力な組織にできると確信していたんです。

── 新体制になってよかったことはどんなことでしょうか。

第一に、各式場の施策に一貫性が出てきました。さまざまなことを複合的にチームで考えて、フレキシブルに動けるようになりましたね。結果的に、効率も上がりました。「一番いい集客方法は何なのか」をみんなで考えられるようになったからです。

PDCAのレポートが明確になり、精度が上がったことも実感します。旧体制では、1つの式場に関して各媒体担当4人から報告を受けていましたが、今は1人からすべての話を聞けるので議論しやすくなったのです。責任を持って1つの式場を見られる体制になった結果、問題点を把握しやすくなり、精度の高いレポート上がってくるように。どこに予算を使うかが明確になった分、PDCAを回すスピードも上がり、早めの施策を打てるようにもなりました。

部署の再編成により、各式場のコンセプトも明確になりました。「今の市場の状況は?」「競合環境は?」などを知った上で、じゃあ自社はこういう戦略でいくべきだ、と判断しやすくなりました。

その結果、数字に対する各々の意識にも変化が起きました。「今月はコンバージョンがあと何件足りない」といった目標も全員が把握でき、状況を見つつトリガー設定もできるように。「〇日時点で〇件足りていなかったら、このトリガーを引こう」と、式場単位で考えられるようになったのも大きかったです。分析は、正しい施策を導くための指標として欠かせないものだと実感しています。

2019年比で135%の自社集客を実現。要因は「権限を与えたこと」

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── その結果、2019年比で自社集客の成長率が135%に。コロナ禍でこれだけ集客を伸ばせた要因はどこにあったのでしょうか。

やはり「体制を変えたこと」と同時に、「権限を与えたこと」だと思います。権限を与えた結果、PDCAサイクルを回しやすくなり、改善スピードが上がったことが要因として考えられます。実は、集客全体で見ても、最も成長させられたのは「自社ホームページ」なんです。

── 自社ホームページからの集客を伸ばせた要因は何だと考えていますか。

礎になったのは、失敗に終わった2店舗のトライアルです。早めにトライアルして失敗しておいたことで、「認知を広げる行動」と「流入してくれた方の欲求を満たすホームページを作ること」を別軸で考え、的確な施策を打てたのだと思います。

── ホームページの改修においてはどのような施策を行ったのでしょうか。

1つは読み込みの「速度改善」。2つ目としては売り手目線ではなく「買い手目線」で、視覚的に分かりやすく変更しました。3つ目は「導線」の改善です。

「導線」に関しては特に気を付けました。ユーザーは、悩めば悩むほど離脱するもの。悩まないのが一番理想的です。情報があまりに多く自由に読ませる作りだと、迷いが生じて「選択のパラドックス」に陥り、離脱の可能性が上がってしまう。そのため、できる限り簡潔にさせることを念頭に置き、導線を明確にしています。

ラヴィマーナ神戸を傘下に加えたことももちろん要因としてありますが、既存の式場に対して正しい改善施策を打てたことが大きかったのではないでしょうか。

お客さまの「なぜ」に答える。忘れがちな自社ホームページの原点

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── これから先の展望についてお聞かせください

まずは、まだ着手できていない式場のホームページ改修を行っていく予定です。UIとUXを徹底的に改善し、式場の個性を持たせつつ、同時に他の式場へ横展開できるような汎用性も意識しています。

私は、お客さまの「なぜ」に答えられるかどうかが、ホームページにとって一番大事だと思っています。

例えば「夜景が見える式場であること」を打ち出す場合。ただ「夜景が見えます」と言うだけではダメで、「“なぜ”夜景が見える式場だといいのか」に答えるべきだと考えています。「夜景が見られることで、こんなポイントでスタイリッシュに演出できる」と答えた後は、お客さまが気になるのは「費用はどのくらいか」「どんなドレスが着られるのか」ということ。ユーザーが知りたいことを、順番に、丁寧に、ホームページが答えていけることが重要だと考えています。

── 日々の目標を追う中で忘れがちですが、大事な視点ですよね。

今のところ、リスティング広告をはじめとする「Web広告」と自社ホームページの効率が高まり、うまく噛み合っている状態です。まだ策を張り巡らせている箇所もあるので、今後も分析を続け、お客さまにとって良いホームページは何かを考えつつ、改善の余地を探っていきたいと考えています。

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※1:SEM…Search Engine Marketing(検索エンジンマーケティング)の略。検索エンジンに関するマーケティング施策全般のこと。

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(取材・文:大井あゆみ/ 写真:伊藤メイ子 / 企画編集:ウエディングパーク

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