ホーム > ビジネス > Wedding-UP CASE > 結婚されるおふたりとスタッフの幸せを守るために。トライ&エラーでたどり着いた「ダブルスタンダード」式集客方法とは【Wedding-UP CASE #008】

結婚されるおふたりとスタッフの幸せを守るために。トライ&エラーでたどり着いた「ダブルスタンダード」式集客方法とは【Wedding-UP CASE #008】

結婚するおふたりの式場検討時の情報収集源が多様化してきている今、ブライダル業界で注目されているキーワードのひとつが「自社集客」です。予約機能のある中間サービスを通さずに、式場各社の公式ホームページなどから直接予約してもらう集客方法を指します。

式場が伝えたいメッセージは公式ホームページにこそ込められていて、その思いに共感した顧客とのベストマッチを叶えられるのが「自社集客」。

新型コロナがウエディング業界に大きく影響をもたらし、広告費を削減する傾向が強まっている今、顧客と式場双方にとって幸せなマッチング手法として「自社集客」はますます重要になっていくのではないでしょうか。

そこで結婚あした研究所では、自社集客に注力し成功している企業の事例(CASE)を紹介する新企画「Wedding-UP CASE 〜自社集客力を鍛える〜」を立ち上げました。各社がどのように自社集客に取り組み、その先に何を目指しているのかを聞いていきます。

今回取り上げるのは、愛知県や岐阜県を中心にウエディング事業を展開する株式会社創寫舘(そうしゃかん)。媒体出稿と自社集客の両方を大切にする「ダブルスタンダード」の考え方で、来客数の底上げと成約率アップを果たしています。

同社ブライダル部門営業担当執行役員の中津卓也さんに、自社集客を成功に導くための「ダブルスタンダード」の考え方や具体的な手法についてうかがいました。


■プロフィール
株式会社創寫舘(そうしゃかん)
1964年、愛知県知多市寺本で写真館モリタカメラとして創業。愛知県を中心に複数の写真館を経営した後、2005年よりウエディング業界に参入。「何十年経っても振り返りたくなる一日」を経営コンセプトに、愛知県と岐阜県で8会場と複数の写真館を経営する。
公式サイト


自社集客にシフト、背景にあったのは「成約率への課題」

――自社集客を強化するに至ったきっかけをお聞かせください。

きっかけは当社が所有している愛知県豊田市の結婚式場でした。このエリアは大きな工場がたくさんあり、遠方から仕事のために転居してくる方が多いのが特徴。そのため、いざ結婚式を挙げるとなると「結婚式は地元に帰って…」という方や「アクセスを重視して名古屋駅や三河安城駅付近の式場で…」という方が多く、会場自体の魅力が伝わる前にそもそも選択肢に入らない状況が続いていました。そんな背景から、お客様に「豊田市にも魅力的な式場があることに気づいてもらう必要がある」と考え、試しに媒体へ大々的な広告出稿をしてみました。結果、出稿量に比例して来館数を伸ばすことに成功、しかし、来館数は伸びたものの成約率が下降の一途をたどる結果になってしまったのです。

当社では、初回打ち合わせ時の担当プランナーが挙式当日まで一貫してサポートする「担当一貫制」のスタイルを採用しています。そのため、来館数が増加する中、成約率が低下していくのはスタッフの負担を増やしてしまう一方でした。また、継続的な広告投資の見込みが立たなかったこともあり、このままこのやり方を継続していくのは難しいと判断。それを機に「自社集客」に切り替えていきました。

――具体的にどのように自社集客を進めていきましたか?

先のやり方で成約率は振るわなかったものの、来館が増えたことでお客様から嬉しいお声をいただく機会が増えていきました。そこで「自分たちの会場には魅力がある」と自信を得ることができたのです。具体的には、お客様一組ずつの要望に寄り添ってつくりあげる「完全オーダーメイド」のサービスや、写真館を所有している当社だからこそできる「貸切フォトウエディング」など、お客様を通じて自社の強みを可視化することができました。

画像1.png

おふたりらしい結婚式を挙げられたカップルの声(提供:株式会社創寫舘)

可視化できた強みをお客様に発信していくために、まずは会場やサービスの情報をまとめ自社ホームページを作り込みました。さらに魅力が伝わるように動画の制作も。完成したホームページや動画をYouTubeやInstagramなどで配信しながら認知を広げ、リスティング広告も積極的に出稿することで、認知から来館予約まで自社ホームページを経由しながら成立するように整えたのです。

YouTubeで配信している動画(提供:株式会社創寫舘)

その結果、おもしろい変化が起きました。今までいらっしゃることがなかった、「結婚式に対してそこまで検討を進めていないカップル」も来館されるようになったのです。これまで来館してくださっていたお客様は、媒体経由で当社の会場を知ってくださった方。つまり、もともと結婚式に対して前向きで、具体的なイメージを持たれてる方が多い印象でした。この変化を通じて初めて、「これまで私たちは一定のお客様にしかアプローチできていなかった」と気づいたのです。

自社集客と媒体集客の両輪、失敗から学んだ「ダブルスタンダード」の考え方

――自社集客で今までリーチできていなかった層にアプローチできたのですね。そこから、自社集客の割合を一気に増やしたのですか?

いえ、限られたお客様にしかアプローチできていなかったことに気づいたように、極端にアプローチ先を限定してはまた同じことになってしまいます。前回の失敗を活かし、「結婚式に対するモチベーションやニーズはお客様ごとに異なり、結婚式を検討する際様々な認知経路を辿ってくる」という考えを大切に、自社集客と媒体集客どちらも大切にしていく「ダブルスタンダード」の考え方を取り入れることにしました。

――自社集客と媒体集客、それぞれに違った価値がある、ということですね。

繰り返しになりますが、当社の場合「自社集客と媒体集客ではアプローチできるお客様の層が違う」という考えをもっています。さらに当社は地方エリアを中心に結婚式を展開している小さな会社で、所有している会場も決して大きなものではありません。だからこそターゲットを狭めず、どのようなお客様も大切にしていきたいと考えています。さらに「完全オーダーメイド」という自社の強みは、多様なお客様のニーズに応えることで還元できるもの。それを叶えるために、まずはお客様を限定せず幅広い層へ認知を広げていくことが大切だと感じたのです。

――ダブルスタンダード、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?

具体的には、媒体によって訴求する内容を変えていきました。例えば、当社が媒体集客のターゲットとしている「結婚式に対して前向きで、具体的なイメージを持たれてる方」は、比較的チャペル・披露宴会場などの設備や雰囲気を大切にされる傾向があると仮定します。そのような方たちにはどんな式場であるのかを伝える必要があるため、媒体内で会場の魅力が伝わるような写真を多く掲載するようにしていました。

一方、自社集客のターゲットとしている「結婚式に対してそこまで検討を進めていない方」は、Web上で検索をしたりSNS経由で接触するため、モチベーションもニーズも様々。最終的にたどり着く自社ホームページでは、“この式場で叶えられること”を存分に表現する必要があるため、「料理でゲストをもてなしましょう」「1日貸し切りでフォトウエディングをしましょう」「自分らしい演出を取り入れてみましょう」など、“どんな結婚式ができるのか”がしっかり伝わるように意識し、お客様の選択肢をより広げられるような訴求を意識して更新していきました。

画像2.jpg

創寫舘が運営する結婚式場「NEST by THE SEA」の公式ホームページ(提供:株式会社創寫舘)

来館シェアは50:50となり成約率も上昇、より本質的な接客ができるように

――ダブルスタンダードの推進によって、数字的にはどのような変化がありましたか?

自社集客経由の来館が順調に増加し、全体の来館数に対して自社集客経由を5割まで伸ばすことができました。さらに成約率は、自社集客経由だと60%となり、年間の広告費も自社集客強化前と比較して53% 削減できたのです。

自社集客経由の成約率が高くなっているのは、当社の式場や提供するサービスに共感した上でお客様が来てくださるようになった結果だと思います。自社ホームページや動画などで会場を知り、理解を深め、好きになった上で来館してくださっていることが大きいですね。

――御社の式場やサービスを好きになった上で来館いただけるのは、自社集客ならではのメリットですね。他にはどのようなメリットがありましたか?

現場で働くスタッフにもいい影響が出ていると思います。自社集客経由で来館された方の中には、「ここで挙げようと思って来ました」という方も多く、来館いただいた際にイメージとのギャップが少ないという特徴があります。式場見学の雰囲気が非常に良いのも、自社集客ならではですね。

以前までは、どうしても「来館後にギャップを感じる…」など他社と見比べをされるケースも多く、スタッフも他社会場を意識せざるを得ないシーンもありましたが、その機会も減り、よりお客様に寄り添った接客がしやすい環境になったと思います。

また、冒頭にもお話したとおり、当社は打ち合わせ時の担当プランナーが挙式当日まで一貫してサポートする「担当一貫制」のスタイルです。そのためスタッフには、来館いただいた際の接客は「会場を気に入っていただくと同時に、自分のことを気に入っていただけるよう、ありのままでやってほしい」と伝えており、即決することなどは求めていません。事前に会場のことを理解した状態で来館してくださるお客様が増えたことで、以前よりもありのままの自分で真にお客様に向き合えるなど、建設的な接客ができるようになったことも大きな変化だったと感じます。

画像4.jpg

接客の様子(提供:株式会社創寫舘)

自社集客で最終的に叶えたいことは、お客様と式場で働くスタッフの「幸せ」

――担当一貫制を採用されてきたことにはどのような理由があるのでしょうか。

当社には経営理念として「何十年経っても振り返りたくなる一日を提供する」という考えがあります。その実現のためにはお客様もスタッフもどちらも「幸せ」であることが大切です。

プランナーにとって、はじめから担当していたお客様の「最高の1日」を見届けることができるのは幸せなことですし、お客様にとっても同じ人に担当してもらえる安心感が幸せに繋がっていくと感じています。この「担当一貫制」は、当社としてずっと守っていきたいと強く願っていました。

しかし、それを叶えることは決して効率が良いものではないため、他にかかるオペレーションをできるだけ最小限にする必要があります。それが「自社集客」によって後押しされたことは非常に意義ある成果だと思っています。接客時にコンセプトを1からご説明する必要もなく、お客様とより深く会話することができれば自ずとオペレーションは最適化されていきます。それでも最高の結婚式を創り上げることができるというのが、当社が目指す世界観です。自社集客を強化したことで明るい未来が見えた気がしています。

――自社集客を強化することは、スタッフだけではなくお客様にとっての幸せにもつながっていたのですね。

それが一番のメリットかもしれません。これからも、できるだけ広告費を節約しながら自社集客にも力を入れ、少ない人数ながらもきちんとお客様と向き合う時間を大切にする会社でありたいです。

画像3.jpg

<<CASE #007「バリューマネジメント」の事例を見る

関連記事