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早くお客様に会えるように。ひらまつが休業期間中に注力した「安全・安心の可視化」の舞台裏 【 #ミライケッコンシキ Vol.3】

新型コロナウイルス感染拡大により、世の中が大きく変わろうとしています。個人の価値観が変化し、それに伴ってさまざまなサービスがアップデートされるなか、これからウエディング業界にも変化が生まれていくことは想像に難くありません。

では、未来の結婚式はどうなっていくのでしょうか。今回新たに始めたシリーズ「#ミライケッコンシキ」では、「ミライの結婚式のために、イマ私たちができること」をテーマに、ウエディング業界に携わる方々にオンラインで取材していきます。ミライの結婚式、一緒に考えてみませんか?

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今回取り上げるのは、一軒のレストランから出発し、現在はウエディング事業も手がける株式会社ひらまつです。新型コロナウイルス感染症の影響に対していち早く動き始め、休業期間に安全対策の徹底と可視化に注力した上で、2020年5月22日にレストランの営業再開を実現しました。

ひらまつウエディングのホームページには、衛生管理と安全対策の基準「Hiramatsuスタンダード」や「結婚式応援プロジェクト」など、新郎新婦に安心と笑顔を届けるお知らせが並んでいます。お客様に寄り添った施策をスピーディーに実現している舞台裏を、ブライダル統括の吉野里絵さんにうかがいました。

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■ プロフィール
株式会社ひらまつ

1982年にフランス料理店「ひらまつ亭」からスタート。1991年には初めてのレストランウエディングを実施し、今では年間1,000組を越えるウエディング事業へと発展。現在はウエディングが出来るレストランを全国に展開するだけでなく、ホテルの運営も手がけている。 
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「どうしたらお客様に会えるのか」を必死に考えた

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レストランひらまつレゼルヴ

── ひらまつでは3月下旬にテイクアウトサービス「Hiramatsu To Go」を発表され、4月中にオンラインでの式場見学をスタートされるなど、新型コロナウイルス感染症に対して素早く対応されていた印象です。

3月初めからレストランのキャンセルが続き、今後お客様にすぐにご来店いただける状態にならない可能性が高いと判断しました。お客様にお会いできなくなっていく危機感を現場のメンバーが強く感じていたことが、スピーディーに対応できた一番の理由だと思います。

私たちのレストランは記念日などのお祝いごとに活用される方が多いので、お客様がキャンセルされるときに「本当に楽しみにしていたのですが、諦めます」とおっしゃっていたんです。そのようなお声を聞いて、どうしたらお客様に早くお会いできるのか、現場のメンバーが必死になって考えてくれました。

── オンラインツールの導入についても、難航しなかったのでしょうか?

案外スムーズに導入できました。私たちはこれまで、ほとんどオンラインツールを使っていませんでした。ですから「他の式場さんはもうツールを導入しているんだから、早く進めなくては」と、急いでオンライン化を進めたんです。デジタルへのコンプレックスが強かった分、一気に導入を進められたのかもしれません。

── オンラインでの見学について、お客様からの反応はいかがですか?

「とりあえず話を聞いてみよう」と気軽にご活用いただいています。オンラインならご自宅からご見学いただけるので、見学へのハードルが下がったようです。お客様がリラックスされているからか、プランナーからも「オンラインのほうが、お客様との関係が近づきやすい」との声が上がっています。

とはいえ、オンラインで全てをお伝えできるわけではないことも実感しますね。お客様もオンラインの見学だけで式場を決めずに、「レストランが再開したら食事をしに行って決めます」とおっしゃる方が多い印象です。


休業期間中に最優先したのは「安全の可視化」

── 緊急事態宣言の期間中に予定されていた結婚式については、どのように対応されましたか?

ひらまつがウエディングをスタートして以来初めて、式の延期をお客様にお願いしました。私たちは一軒のレストランからスタートした会社なので、台風や地震があってもお客様がいらっしゃる限りはできる限りお店を開けていたのですが、この決断に際して最優先にしたのが「安全」です

今回はこれまでの事態と異なり、たとえ目の前のお客様に式をご提供できたとしても、その後も式を控えているお客様がいらっしゃいますから、式場として「続く安全」に責任を持つ必要があります。休業が明けて再開したときに「ひらまつなら安心できるね」と思っていただけるお店であるために、休業の選択に至りました。

── 休業期間中は、具体的に何に注力されていたのでしょうか。

安心・安全の可視化です。私たちはレストランですから、いらしたお客様が安心してお食事を召し上がれるように、創業以来ずっと安全を最優先しています。その上で、休業期間が明けてお店を再開したときに、お客様に「私たちのお店にどうぞ安心していらしてください」と言えるようにすることが重要だと考えたんです。

ですから本社のメンバーが文献を探したり、現場のプランナーが日本ブライダル文化振興協会(BIA)のガイドラインを参照したりして、私たちの基準をお客様にお見せできるように準備を進めました。レストランも披露宴もお客様が安心して「行こう」と思えるように発表したのが、私たちの安全基準「Hiramatsuスタンダード」です。

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(Hiramatsuスタンダードはホームページで公開されている)

── 誰が見ても分かりやすいピクトグラムが印象的です。

弊社のスタッフがデザインしてくれました。ピクトグラムにした理由は、私たちがお客様に笑顔で「大丈夫ですよ」とお伝えしたいからです。他の式場や飲食店の方々にも、この素材を無償で提供しています。

キャンセル料や延期の問題など、非常事態を想定していなかった婚礼業界の脆弱な部分が、報道で大きく取り上げられましたよね。でもどの式場さんも、お客様のためを思っている点は共通していると思うんです。ですから共有できるものは積極的に公開しながら、業界全体でお客様を再び笑顔でお迎えしていきたいですね。

結婚式を控えた新郎新婦に届いた、「先輩」からの800通のメッセージ

── 他にも、これまでひらまつで結婚披露宴を実施してきた「先輩」夫婦から結婚式に関するメッセージを集めた「#結婚式をあきらめない」プロジェクトは、新鮮な取り組みだと感じました。

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(ひらまつホームページ #結婚式をあきらめない より)

ありがとうございます。このプロジェクトは、これまでひらまつで結婚式をしてくださったお客様から集まった800以上のメッセージを選考させていただき、6月1日に発表したものです。

ひらまつがウエディングの事業を始めて、来年2021年で30周年を迎えます。これまでの一番の財産を考えたときに真っ先に浮かんだ回答が、「これまで結婚式をしてくださったお客様」なんです。

今回のコロナ禍においても、この募集をする前からご自分の結婚式を担当したプランナーに対して「大変ですよね、何かお手伝いできることはないですか?」とご連絡くださったお客様がたくさんいて。そのお声に私たちが勇気をいただいたのと同時に、この気持ちを未来の新郎新婦に届けられたらいいな、と思ったんです。

── 結婚式を控えている新郎新婦にメッセージを届けようと思ったのは、どんな理由があったんでしょうか?

一番の理由は、お客様とプランナーの心の間に少しすきまができてしまったことです。

結婚式をつくる仕事をしてきたプランナーの役割は、2月後半を境に一変しました。結婚式を予定していたお客様から、延期料やキャンセル料のお問い合わせをいただいたり、秋なら開催できるのかご相談があったり。そのすべてがすごく必死で、涙や困惑、心配でいっぱいのお電話やメールを受け取る日々が続いたんです。

お問い合わせに応えてさしあげたいのですが、お客様からしたら「式場に延期料やキャンセル料を払わなくてはいけないかも」と思っている状態ではプランナーに全てを打ち明けられないし、プランナーの言葉がすんなり入らない。お客様とプランナーの間に一枚の壁ができてしまったような感覚でした。

先の見えないうちは、結婚式に関する悩みも不安もたくさんあると思います。それでも結婚式に希望を感じていただくにはどうしたらいいだろう、と考えて、先輩たちの言葉なら心に届くのではないか、と今回の企画に至りました。

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(ひらまつホームページ #結婚式をあきらめない より)

── 過去のお客様から集まったメッセージは、現場のプランナーさんの支えになりそうですね。

そうなんです。お客様からの不安に対して全てお応えするにはプランナーも辛くなってしまい、現場がすっかり疲弊していました。

そんなときに、電話にもメールにも怖くて出られなくなりそうだった現場のプランナーに、次々と応援メッセージが舞い込んだんです。しかもどの方も「結婚式をやってよかった」「とても素敵な思い出になった」と書いてくださって。

「ありがとう」「笑顔」「家族」「幸せ」といった言葉が溢れる800通を読んでいると、感謝や幸せをライブで感じる場は今後も決してなくならないと確信しましたし、「結婚式って素晴らしいものだよね」「やっぱり新郎新婦に届けるべきだよね」と自分たちの仕事を肯定する勇気をもらいました。

今だから実現できる、個人に合わせた新スタイルの結婚式を

── 緊急事態宣言が明けて、ひらまつでは「Hiramatsuスタンダード」を踏まえて新スタイルの提案をスタートされましたね。

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(ひらまつホームページ 新スタイル提案 より)

私たちの準備が整って、「#結婚式をあきらめない」プロジェクトで結婚式の価値を再確認できたので、この数ヶ月考えてきた新しいスタイルをご提案しました。

「笑顔」や「ありがとう」をベースにしながら、それぞれのお客様に合わせた結婚式を実現する方法を考えています。今こそプランナーの力を発揮できるときですね。

── お話をうかがっていて、スタイルは変われど、結婚式はこれからも続いていくように感じられました。

歴史を振り返ってみれば、過去にさまざまな感染症があっても結婚式という文化は続いてきました。これからも、集うことを人はやめないと思います。

むしろ大変な出来事があった後の結婚式は、もっと優しく広がりのあるものになると思うんです。例えば今回注目されたオンラインツールを活用すれば、これまでより遠く、広くつながれると教えてもらいました。

このような広がりがあるとわくわくしますし、オンラインでもつながれるからこそ、お店に来ていただいたときにお届けできるリアルの価値も高まると思っています。誰かに会える嬉しさ、画面だけでは分からない価値をお伝えしながら、現場のみんなで一組ずつ大切に結婚式をつくりあげていきたいですね。

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(取材・文:菊池百合子 / 写真:土田凌 / 企画編集:ウエディングパーク

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