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結婚式の延期をいち早く決断した東郷記念館が、「オンライン結婚式」に込めた思いとは?【 #ミライケッコンシキ Vol.4】

2020年の新型コロナウイルス感染拡大により、世の中が大きく変わろうとしています。個人の価値観が変化し、それに伴ってさまざまなサービスがアップデートされるなか、これからウエディング業界にも変化が生まれていくことは想像に難くありません。

では、未来の結婚式はどうなっていくのでしょうか。今回新たに始めたシリーズ「#ミライケッコンシキ」では、「ミライの結婚式のために、イマ私たちができること」をテーマに、ウエディング業界に携わる方々にオンラインで取材していきます。ミライの結婚式、一緒に考えてみませんか?

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今回取り上げるのは、原宿 東郷記念館(以下、東郷記念館)。政府が全国の学校に対して一斉に休校を要請した時点から、延期料の規定をいち早く変更しました。さらに5月6日には、ライブ配信で届ける結婚式「東郷 LIVE WEDDING 〜祝言〜」をリリースしています。

スピーディーな決断と「新しい形の結婚式」が注目されていますが、これらを可能にした背景にはどのような考え方があるのでしょうか。新型コロナウイルスの対策に配慮した結婚式を実現する東郷記念館の試みについて、婚礼事業部 部長代理の小川智明さんにお話いただきました。

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■ プロフィール
原宿 東郷記念館

株式会社東日が1977年に創業した結婚式場。隣接している東郷神社にて神前式を執り行い、日本庭園に浮かぶ橋の上を新郎新婦が一歩ずつ渡る「庭参進の儀」で知られている。
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安全を最優先し、2月から延期料の特例対応をスタート

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── 東郷記念館では、今回の新型コロナウイルス感染症にスピーディーに対応されていたように感じました。

私たちは2月から、世界の感染者数の変動を注視していました。海外では結婚式の参列を10名以下に制限する事例も見られていたので、日本でも同じ事態になる可能性が高いと考えたんです。

その上で何よりも最優先したのは、お客様と参列されるゲストの方々、パートナ企業の方々、そしてスタッフの安全を守ること。最高の晴れの場である結婚式を東郷記念館で挙げた結果、万が一感染が発生してしまったら、新郎新婦にとって一生の悔いが残る場になってしまいます。

ですから2月28日の段階で、「式の2週間前までに日付を変更される場合、日程変更料金をいただかない」とお客様にご案内しました。キャンセル料や延期料がネックで無理に結婚式を開催する事態にしないことが目的です。

その後3月には日程変更料金をいただかない期日を「式の2週間前」までに変更し、その後世の中の状況を見つつ、3月末には4月2日からの休館を決めさせていただきました。その為、緊急事態宣言が発表される前には、全てのお客様に対して延期のご提案が済んでいた状態です。

── 実際にお客様にご連絡してみて、どのような反応があったのでしょうか?

お客様からは「このような決断を早くしてくれてありがとうございます」とのお声をたくさんいただきました。結婚式をどうするか悩んでいる方が多いタイミングで、当館としての方向性を決断してお伝えできたことで、お客様に安心していただけたようです。

オンライン結婚式を二週間で実現した舞台裏

── 4月の休業期間を経て、5月6日に「東郷 LIVE WEDDING 〜祝言〜」(以下、ライブウエディング)を発表されましたね。延期をご提案しながら、結婚式のライブ配信にも踏み切った経緯を教えてください。

実は以前からライブウエディングの案があり、来年2021年にリリースしようと考えていました。というのも、ご親族の方が年齢や体調を理由に参列できないケースが年々増えていたので、新郎新婦のお姿をお見せできる方法を検討していたんです。その構想を急いで実現する形になりました。

背景としては、今回お客様に式の延期をご提案したところ、「今じゃないとダメなんです」「なんとか式をできませんか?」とのお声が多かったことです。入院する予定の親族に式を見せたい、といったご家族の事情やお二人の人生設計を踏まえると、延期したくないお気持ちもよく理解できます。

そこで休業期間中に、急ピッチでライブウエディングの準備を進めました。撮影などの工程以外は、プランの開発自体も全てオンラインで対応しています。2週間程度で準備を終え、緊急事態宣言が解除された5月6日から発売しました。

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(東郷記念館ホームページ 「東郷 LIVE WEDDING 〜祝言〜」より)

── オンライン化において重視したことは何でしたか?

私たちは結婚式を、新郎新婦がおもてなしを通じてゲストの皆さまに感謝を伝える場だと定義しています。新郎新婦がさまざまな衣装を着て楽しんでいる様子をライブ配信するだけでは、おもてなしではありません。

しかもこれまでの結婚式の進行をそのままライブ配信に当てはめると、ゲストの方々が飽きてしまうんですよね。ですから離れた状態でもいかに一体感を共有するかに主眼を置いて、検討を進めました。

東郷記念館が式の一体感を生み出す上で大切にしてきたものとして、料理が挙げられます。同じ料理を同じ瞬間に食べて感じられるつながりを、オンラインでもゲストの方々に感じていただきたい。そう考えて、ゲストの方にも婚礼料理を食べていただける仕組みを検討しました。

現在の方法としては、「東郷ハレの日御膳」をゲストのご自宅にお届けし、新郎新婦と同じタイミングで同じ御膳を食べていただいています。この料理開発と、ご自宅でも楽しんでいただける仕掛けづくりが一番難航した点ですね。

結婚式をあきらめないための「ライブウエディング」

── ライブウエディングは、具体的にどのようなプランなのでしょうか?

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私たちのライブウエディングは、三つの柱によって成り立っています。東郷神社と記念館での安全・安心な挙式、五感で届けるオンライン配信、アフターパーティーの開催です。

まず一つ目の、安全・安心な挙式について。この「安心・安全」は4段階のロードマップにおける「ステップ0」(他県への移動自粛状態)になる可能性を常に考えながら準備を進め、希望日に結婚式を挙げられることです。

「結婚式を挙げる頃には状況が良くなっているだろう」とお客様も私たちも願っています。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の第二波や第三波がいつ来るかは誰にも分かりません。
仮に、式の二週間前にステップ0になり、ゲスト様のご招待が心苦しい状態になったとしても、当社であれば、ご来館が難しいゲスト様に関しても、オンラインでご招待することが可能です。後述する、「東郷ハレの日御膳」を事前宅配すれば、婚礼料理もお届けすることができ、安全安心を担保した状態でハレの日の姿をお披露目できます。

── 二つ目と三つ目についてもうかがいたいです。

togo_4..jpg二つ目の五感で届けるオンライン配信については、プロカメラマンが撮影する高画質な映像で視覚・聴覚を使っていただきながら、「東郷ハレの日御膳」で味覚も楽しんでいただく工夫です。

御膳は三つのお重からできていて、お二人らしさを加えられるようにさまざまなこだわりを入れています。例えば、新郎新婦のご出身地における名産品の使用です。東京出身の新郎新婦の式では、アワビの横にアサリを加えました。

スイーツのお重については、東郷記念館でつくったはちみつを新郎新婦がウエディングケーキにかける演出が人気なので、ケーキにはちみつスティックを添えています。

三つ目のアフターパーティーについては、結婚式をオンラインで開催するものの、コロナウイルスが終息したら集まれる場をセッティングできるよう特別料金でご提供する予定です。

── 二つ目のオンライン配信だけでなく、三本の柱があって成り立つプランなのですね。

そのとおりです。「結婚式のオンライン化」とお伝えすると、形の目新しさにフォーカスされがちですが、一番の理想はお祝いのために同じ場に集まることだと思っています。ライブウエディングで今までの結婚式を否定したいわけではなく、オンラインはリアルの場を補うものでしかありません。

ですから結婚式を中止しなくて済むように尽力しながら、どのような状況でもお客様が結婚式をあきらめなくていいようにプランを設計し、これからもお客様に寄り添ったご提案を続けていきたいです。

── 実際にライブウエディングを施工してみて、どのような気づきがありましたか?

発売直後の5月9日に初めて施工しました。お客様からは「式をできて本当によかった」「オンラインでは難しいと思っていたお料理のおもてなしを実現できてうれしかった」といった声をいただいています。その後も何組ものお客様にご利用いただき、「ライブウエディングがあるなら」と新規のお問い合わせもいただきました。

通信環境への配慮や、受信機がない方にも配信をご覧いただけるサポートの必要性など、私たちも学びをいただいています。今後も一つひとつ課題を解決しながら、東郷記念館らしいウエディングをご提供したいですね。

お客様のことを考え続けたら、やるべきことが見えてくる

── ここまでスピーディーにお客様に寄り添った施策を、次々と実現できた理由が気になります。

私たちが大切にしている「東郷イズム」がいくつかあり、代表的なものが「損して『徳』を取れ」です。全ての答えはお客様がお持ちであり、式場の都合をお客様に押し付けるべきではありません。自分が苦労してでも、お客様に「東郷記念館でよかった」と思っていただきたい。そのような意味が込められています。

ですから今回も、大変なときほど常にお客様に想いを寄せてきました。そうすれば自ずとやるべきことが見えてきますから、その考え方が施策の実現につながったのだと思います。

── 今回の新型コロナウイルスの影響を受けて、今後どのような姿勢で結婚式を届けたいとお考えでしょうか。

人と人とのご縁を感じたり、感謝を伝えたりできる結婚式場の文化を残していこうと考えています。そのためには今後も変わらずに、私たちが「正しい」と思うことをお客様にお届けしていきたいです。

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(取材・文:菊池百合子 / 写真:土田凌 / 企画編集:ウエディングパーク

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