未来を見据えた経営で、幅広くファンを獲得 ラ・クラリエールの“寄り添い型”自社集客【Wedding-UP CASE #004】

未来を見据えた経営で、幅広くファンを獲得 ラ・クラリエールの“寄り添い型”自社集客【Wedding-UP CASE #004】

結婚するおふたりの式場検討時の情報収集源が多様化してきている今、ブライダル業界で注目されているキーワードのひとつが「自社集客」です。予約機能のある中間サービスを通さずに、式場各社の公式ホームページなどから直接予約してもらう集客方法を指します。

式場が伝えたいメッセージは公式ホームページにこそ込められていて、その思いに共感した顧客とのベストマッチを叶えられるのが「自社集客」。

新型コロナがウエディング業界に大きく影響をもたらし、広告費を削減する傾向が強まっている今、顧客と式場双方にとって幸せなマッチング手法として「自社集客」はますます重要になっていくのではないでしょうか。

そこで結婚あした研究所では、自社集客に注力し成功している企業の事例(CASE)を紹介する新企画「Wedding-UP CASE 〜自社集客力を鍛える〜」を立ち上げました。各社がどのように自社集客に取り組み、その先に何を目指しているのかを聞いていきます。

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今回取り上げるのは、株式会社C・B・Hが運営する「三橋の森 ラ・クラリエール(以下、ラ・クラリエール)」です。ラ・クラリエールでは、ウエディングの現場で働く成約トッププランナーを集客担当に抜擢し、従来の手法にとらわれない考え方で、独自の自社集客を展開しています。今回は、ラ・クラリエールの足立祥平さんと木村隆志さんに自社集客強化に至った背景や狙いなどをうかがいました。


■プロフィール
三橋の森 ラ・クラリエール
株式会社C・B・H が2011年埼玉県さいたま市にオープンした結婚式場。 三橋の森の敷地内には保育園・カフェ・レストラン・ワークショップも併設。「ふたりの未来も幸せにするウエディング」というコンセプトを掲げ、 地域に密着しお客様との一生のお付き合いを大切にしている 。樹齢100年以上の桜のシンボルツリーに見守られながら人と人が集う場所として、結婚式を挙げるお二人だけではなく地域の人々からも支持されている。公式サイト

顕在層集客から、潜在層へ寄り添う集客にシフトしたことで、新規のファンを獲得

ーーラ・クラリエールが、自社集客を強化し始めたきっかけをお聞かせください。

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足立:婚姻組数の減少やナシ婚層の増加などがあり、従来と同じような集客方法や挙式スタイルを続けていては集客が困難になると、以前から危機感は覚えていました。直接的なきっかけとしては、婚礼マーケットが毎年10%ずつ縮小される中、広告費は変わらず投資額と集客実態が見合わなかったことを機に、自社サイトの強化、予約媒体の開発をはじめとする「自社集客」に注力することを決定しました。翌年、2018年比で全体広告費を77%に抑えながら、105%の集客に成功したのです。

ーーさまざまな自社集客チャネルのなかでも、特にInstagramに力を入れているとうかがいました。その理由を教えてください。

木村:実はコロナ禍以前から、挙式に対する「不要不急論」が出ているのを認識していました。そこで、すでに挙式を検討している顕在層の集客(以下、直近集客)だけではなく、まだ結婚の予定はないけれど普段からナチュラルテイスト・やさしさ・シンプルな雰囲気が好きな方、近隣にお住まいの方など、もしかしたら今後結婚式を検討してくれるかもしれない潜在層の方々に寄り添う集客(以下、寄り添い型集客)へとシフトしたのです。寄り添い型集客に最も適しているのはSNSと考え、公式SNSの運用に力を入れ始めました。

足立:Instagramでは、ケーキ入刀やフラワーシャワーといった、結婚式の様子が連想されやすい写真をあえて外し、ラ・クラリエールの優しい空気感を生かしたイメージカットや、ふっと心癒されるようなテキストで、新しい見せ方を模索しています。

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ラ・クラリエール 公式Instagramより

足立:「もともとのフォロワーが離れてしまうのではないか」という不安は正直ありましたが、3ヶ月はグッと堪え、毎日投稿し続けましたね。そのうちに、すぐに挙式を検討している層とはまた違ったファンが増え、次第に「ラ・クラリエールってなんかいいところだよね」といった反応を頂くようになって。直近集客から寄り添い型集客へシフトしたことで、ごく自然にラ・クラリエールが、フォロワーの皆さんの生活に浸透していったように感じます。

地域とのコミュニケーション強化で、先を見据えた経営を行う

ーー直近集客から寄り添い型集客にシフトした意図をもう少し詳しくお伺いできますか。

足立:ラ・クラリエールがある「三橋の森」は、結婚式場という側面はもちろんのこと、他にもフレンチレストランやベーカリーカフェ、カルチャースクール、保育園が一体となった複合施設でもあります。「街に暮らす人々が集い語らう安らぎの森」をテーマに据えており、中央のツリーガーデンでは樹齢120年の桜の大樹が見守っている。これらの施設をご利用いただく地域の方たちと寄り添い、コミュニケーションを大切にすることで、目先の収益増を目指すのではなく、5年先、10年先、あるいは100年先を見据えるような長期的な経営方針を、改めて重要視するようにしたんです。

木村:たとえば、三橋の森保育園を卒園した子どもたち、小さい頃からここのベーカリーのパンを食べて育った人、カルチャースクールで当社の料理長に料理を教わったお母さん。そんな地域の人たちに、「将来ラ・クラリエールで式を挙げたい」「自分の大事な人にこの式場をすすめたい」そう感じていただくことこそが、長い目で見たときにこの式場が残り続けるために大事なことだろう、と。もちろん周辺地域外の人たちにも、三橋の森の温かさを伝えていけるようにさまざまな工夫をしています。挙式数・稼働数を増やす施策というより、よりここで式を挙げるということに価値を感じてもらえるような施策に、最近では思い切り舵を切っていますね。

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成約トッププランナーから集客専任へ 抜擢人事の背景にあったのはトライ&エラー精神

ーーそういった施策をメインに担当されているのが、ウエディングの現場で働かれている成約率トップの実績を挙げていたトッププランナー出身の集客担当者だとうかがいました。思い切った抜擢ですね。

足立:成約トッププランナーを接客担当から外して集客担当にするというのは、目先の成績を考えるとなかなかできない決断なので業界的には珍しいケースだと思います。この抜擢の背景には「従来型のプランナースキルだけでは競争力が低下してしまうのではないか」という支配人の考えがありました。インターネット上のクチコミが増え、AIによるレコメンド機能などが発達するなかで、プランナーの価値向上には何が必要だろうか。そこで考えたのが、「プランナー×○○」という異なるスキルとの掛け合わせです。たとえば動画編集スキルやコンテンツ制作スキルを兼ね備えたプランナーであれば、提案の幅が広がりオリジナリティを出すことできます。また、プランナーは日頃からお客様のお温度感やリアクションを意識して仕事をしているので、現場の経験を集客にも生かすことができるのではないかという考えもありました。

木村:そこで2019年の1月に、2名が抜擢されました。現場から離れることについては寂しさもあったようですが、自分のアイデアがラ・クラリエールの認知拡大に直結することに対し、次第にやりがいを覚えるようになっていきました。仕事内容は多岐に渡っており、Instagramの刷新に加え、noteやYouTubeチャンネルなどの充実と検証、新しい形のブライダルフェアの提案、ひいては挙式プラン自体をみずから企画するところまで網羅しています。大きく捉えれば、ラ・クラリエールのファンづくりに挑戦するという役割ですね。

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ーーお話を聞いていると、想像以上にクリエイティブな仕事のように感じられます。

足立:そもそも当社には、「自ら考えられる人材を育てる」「失敗を恐れずに新しいことに挑戦する」「変化することは当たり前」といった社風があります。ですから、トッププランナーを集客担当に抜擢するという試み自体もスッと受け入れられました。そして集客担当になったからといって突然クリエイティブな仕事をするようになったというより、どんな役割であっても、常に全員がクリエイティブなマインドを持って仕事をしていると思います。

木村:その前提にあるのが、本社の「画一化を嫌う」という考え方です。グループとして7つの式場がありますが、一つとして同じコンセプトの式場はありません。課されているのは利益目標のみで、各式場に裁量が与えられています。
ブライダル業界の現状を考えれば、グループ全体で同じようなプランを実施することはある意味危険です。共倒れしてしまうことへのリスクヘッジという観点でも、それぞれのフットワークが軽く、変化していける環境は必要ですし、集客担当をはじめとするメンバーたちも、トライ&エラーが許されるからこそクリエイティブなマインドを持続できると考えています。

足立:メンバー育成の観点からも、「説いてやらせる」というスタイルは特にいまの若い世代には通用しないですよね。先輩メンバーたちが生き生きと、いい意味で「好き勝手に」仕事をしていると感じ取ることで、みずからのモチベーションを上げていける。そういった自発性がおのずと養われることが大事だと思います。 

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接客時にお客様にお見せする絵本「森のものがたり」もスタッフの発案で制作されたそうです。

結婚式の価値を再考しながら、前例のない集客手法に挑戦し続ける

ーー今後ラ・クラリエールとして考えている、新しい集客への取り組みをお聞かせください。

足立:コロナ禍になり、「7割経済」と言われるようになりました。集客も7割になると、すべてを7割にしなければいけない。しかしそうではなく、「7割以外の集客をどうするか」という観点が大切だと思っています。その中で「完全予約制のブライダルフェア」「オーディエンス型挙式スタイル」といった従来のスタイルをどんどん打ち破っていこうと、さまざまな施策を練っています。いまは、クチコミサイトですべてが表面化する時代ですから、もっとオープンに、手の内をさらけ出すようなフェアを開催するほうが、お客様の心をつかめると思っています。

木村:そこで2019年から、大学のオープンキャンパスのように誰でもいつでも気楽に入退場できる「オープンウエディングハウス」を開催しています。試みとして、参加者全員が楽しめるような歌やダンス、手遊びをスタッフみんなで考案し演じて見せました。挙式当日、大切なゲストはオーディエンスになってしまいがちで、おふたりと言葉を交わす時間もほとんどありません。そんななかで、「こういったアイデアを、実際の式でも取り入れてみませんか?」とご提案したんです。イベントに来客した方たちにも喜んでいただけましたし、徐々にラ・クラリエールの認知が広まり、コロナ禍にも関わらずその後の集客も増え始めています。今後はフェアの有料化も検討しており、価値に見合ったさらに濃い内容を計画中です。

ーー新しい取り組みですね。それらもまたスタッフの皆さんが考え創り出したものなのでしょうか。

木村:その通りです。先ほども申し上げたように集客担当をはじめとするメンバーたちが自発的に意見を出し合い、みんなで創りあげます。最近では、2018年からスタッフが制作を始めていた「つむぎ」という新たな挙式スタイルの販売を開始しました。結婚されるおふたり+親きょうだいのみで行われる約40分間の式なのですが、通常の式では脇役になってしまいがちなご家族の皆さまに、日頃伝えることのできない気持ちを手紙にしたためていただき、互いに朗読し合うという内容です。すでに2割のカップルにこのプランで挙式いただいており、その内容の充実からみなさん熱くシェア・拡散してくださっています。

足立:こうしたコンテンツに挑戦するのは、おふたりにとってより価値のある1日を提供したいと考えているからです。人生のゴールは、当然結婚式当日ではありません。その後の人生では、さまざまな楽しいことや苦しいことに向き合うことになります。そんなとき、ここで結婚式を挙げたことを思い出し、その日の気持ちに立ち返って改めて歩き出してもらえること。さらに参列したゲストにとっても、自分の人生を振り返っていただく時間にしていただければ、それが本当の意味で「価値のある結婚式」であると我々は考えているんです。
繰り返しになりますが、目先の収益より、先を見据えた経営をする。それが、ラ・クラリエールが一番大切にしている経営方針ですね。

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