ホーム > ビジネス > Wedding-UP CASE > 「線」でお客様の人生に関わる。ホテル雅叙園東京が取り組む、総合力を活かした自社集客【Wedding-UP CASE #003】

「線」でお客様の人生に関わる。ホテル雅叙園東京が取り組む、総合力を活かした自社集客【Wedding-UP CASE #003】

結婚するおふたりの式場検討時の情報収集源が多様化してきている今、ブライダル業界で注目されているキーワードのひとつが「自社集客」です。予約機能のある中間サービスを通さずに、式場各社の公式ホームページなどから直接予約してもらう集客方法を指します。

式場が伝えたいメッセージは公式ホームページにこそ込められていて、その思いに共感した顧客とのベストマッチを叶えられるのが「自社集客」。

新型コロナがウエディング業界に大きく影響をもたらし、広告費を削減する傾向が強まっている今、顧客と式場双方にとって幸せなマッチング手法として「自社集客」はますます重要になっていくのではないでしょうか。

そこで結婚あした研究所では、自社集客に注力し成功している企業の事例(CASE)を紹介する新企画「Wedding-UP CASE ~自社集客力を鍛える~」を立ち上げました。各社がどのように自社集客に取り組み、その先に何を目指しているのかを聞いていきます。

今回取り上げるのは、「日本で初めての総合結婚式場」と言われるホテル雅叙園東京(以下、雅叙園)です。雅叙園では専門式場からホテルへリブランディングをした2017年から、自社ホームページでの発信に力を入れてきました。その発信および、2021年から本格化していくという新しい取り組み「ウエディングのタイムライン戦略」を主導している、副総支配人・ブライダル営業部長の森木岳明さんにお話をうかがいます。
明日から自社集客に取り組むきっかけになれば幸いです。


■ プロフィール
ホテル雅叙園東京
1928年創業。総勢22万組を超えるカップルの始まりを見守ってきた「日本で初めての総合結婚式場」。2017年、「目黒雅叙園」から「ホテル雅叙園東京」へと施設名称を変更し、「日本美のミュージアムホテル」として再スタート。東京都の指定有形文化財になった「百段階段」でも知られている。 公式サイト



リブランディングを機に、自社ホームページでの発信を強化


── 雅叙園で自社ホームページによる発信に注力し始めたきっかけは、何でしたか?

1_写真039.jpg

2017年4月に行ったリブランディングです。業態を専門式場からホテルに、施設名称を「目黒雅叙園」から「ホテル雅叙園東京」に変更しました。このタイミングで、ホテルも結婚式もコンセプトを新たに作っています。

これまでの雅叙園におけるウエディングは専門情報誌からの集客が多かったのですが、リブランディングのタイミングでホテルファンを増やしたいと考え、自社ホームページを改修しました。特にスマートフォンから見やすくなるよう調整しました。

── どんな背景でリブランディングされたのでしょうか。

今日本で起こっている少子高齢化や晩婚化によって、結婚式のマーケットは大きな影響を受けます。そのような状況でも雅叙園というホテルとしてのファンを増やせたら、結婚式のお客様も増やせる可能性がある。そう考えてリブランディング、自社ホームページの改修に踏み切りました。

同じタイミングで、ニーズの多様化に合わせたコンテンツづくりにも注力し、レストランウエディングとフォトウエディングにも専門のプランナーを設置しています。私たちは「日本で初めての総合結婚式場」と言われていますから、その文脈を受け継いで結婚式を大切するホテルでありたい。そのために、ニーズの多様化が進むお客様にご提供できる結婚式のバリエーションを増やしたいと考えました。

── リブランディングの際に大切にされたことはありますか?

外部のブレーンの方にもご協力いただきましたが、これまでに結婚式を実施いただいたお客様の声を参考にウエディングコンセプトの作りこみを進めていきました。

たとえば居住地や、ご家族構成などの傾向のほか、ご両親に「雅叙園で挙式してよかったね」と言われたら嬉しい、両親のような夫婦になりたいと思っている、だとか。このようにお客様の声を参照することで、雅叙園を好きになってくださる方の“らしさ”が見えてきます。

その上で細かくペルソナを設定し、お客様に合うキーワードやビジュアルを用意していきました。これまでのお客様に気に入っていただける写真や言葉について細かく議論したので、アウトプットに反映しやすかったですね。まだまだ「ホテル雅叙園東京」をお伝えしきれていない部分もありますが、社内では理解が着実に醸成されてきたと感じます。

部署を横断し、「縦から横」にビジネスモデルを変更


── 2020年は新型コロナによる影響がありましたが、雅叙園ではホテルの総合力を活かした取り組みをされていたとうかがっています。

2_写真003.jpg
宿泊や飲食があるホテルの強みを活かして、入籍や結納の際にお食事会を楽しんでいただけるプランをはじめ、式の1日にとどまらないプランをご用意しています。「点」ではなく「線」でお客様とお付き合いしていけるよう、工夫している部分です。

── ウエディングだけでなく、さまざまな部署が関わる必要がありますね。

そうですね。雅叙園では新型コロナをきっかけに、「ウエディングのタイムライン戦略」と名付けたプロジェクトを立ち上げました。

コロナ禍でウエディングの小規模化が進んだ結果、組単価が下がってウエディングとしての売上全体が減少しています。ですから結婚式だけではなく、フォト撮影や結納、お食事などもお客様にご活用いただき、「縦から横へ」を合言葉にビジネスモデルを変革しようとする取り組みです。

まずは、新規のお客様を担当するチームやフォトチームなど、ウエディングの各チームからプロジェクトメンバーを集めました。その上で、お客様に部署を超えたご提案ができるように互いの部署に働きかけたり、月次で進捗会議をしたりしています。

── 具体的にどのような取り組みをされているんですか?

新規のご見学だけでも年間で約3,000組いらっしゃるので、たとえば雅叙園で挙式をしなくても結納や前撮りをしていただいたり、顔合わせ用のお食事プランを用意したり、お客様の人生におけるさまざまなシーンで使っていただけるようにご提案しています。

また、顔合わせ用のお食事プランでいえば、これまではレストランの部署が自分たちで内容を考えていたんです。そのやり方を変更して、ウエディングのチームから「このようなお客様がいらっしゃるので、こういうお食事内容にしてほしい」「宿泊もセットにしたプランを考えたほうがいいのではないか」と提案しています。

あとは結婚式の1年後にお客様にDMをお送りし、結婚式当日と同じメニューをご提供するプランを作りましたが、実際、お料理を用意するのはレストランです。個別のメニューで対応していくことはレストランからするともの凄く大変なことなのですが、ウエディングチームがなぜこれをやりたいのかを伝えていくことで、実現できました。コロナ禍におけるホテル運営は、これまでの常識を変え、部署を超えて連携することができるかどうか、本気で問われているような気がしています。

── プロジェクトに参加しているのはウエディングのメンバーですが、ホテルやレストランなどの他の部署も一緒に動く取り組みということですね。

そのとおりです。このような部署を越えての取り組みは、当社では初めてかもしれません。これまでは正直、部署を超えたサービス展開はできていませんでした。売上が出るのは部署ごとですから、ウエディングからレストランに送客してもレストランの売上になり、ウエディングの売上にはならないからです。

しかし、このままでは新型コロナの影響を乗り越えられないと感じています。いいホテルでありたければ、いい会社でなければならないと思うんですよね。他の部署のおかげで成功したらその部署に報告したり、自分の部署の売上にならなくてもやりがいを感じられる仕組みを整えたり。ですから目の前のお客様に対して「ホテル全体で何ができるか?」を考え、同じ価値観で取り組めるように、更なる意識改革を図っていきたいです。

このプロジェクトはまだ始まって間もなくて、2021年度が本番だと考えています。少しずつ数字に表れてきているので、来年度にさらに成果を出せるよう全社で注力していきたいです。

3_写真098.jpg

コロナによる式場の変化を自社ホームページでいち早く反映


── このプロジェクトを踏まえると、フォトウエディングや前撮り、結納といったジャンルで分けられる広告媒体よりも、「ホテル雅叙園東京」としてアプローチする上で自社ホームページは効果的かもしれませんね。

そうですね。先に話したペルソナ分析の結果を考慮しながら各コンテンツづくりをすることで、あらゆるきっかけで自社ホームページに訪れてくれた方に対してアプローチできるよう心がけています。

自社ホームページでベストレート保証の実施もしているのですが、ベストレートがあるからサイトから予約するのではなく、サイトにたどりついた後にベストレートの存在に気づいてご予約の後押しになっているケースが多いようです。

── 自社ホームページにおいて、雅叙園として重視されているコンテンツはありますか?

サイトにおいて「自社らしさ」を表現できていることが重要だと考えているので、最も注力している部分はコンセプトです。コンセプトをそのままお伝えするのではなく、デザインや写真も通じて雅叙園が大切にしていることを理解していただきやすいように意識しています。

gajoen_concept_-_02.png

「ホテル雅叙園東京」ウエディング公式サイト コンセプトページ



── お客様に人気のあるコンテンツは何でしょうか。

お客様にご支持をいただいているのは、ウエディングレポートです。当社で挙式された方がどのようなスタイルの結婚式にされたのか、お客様目線でレポートしてくださっています。

これまで当社ではあまり出せていなかったのですが、新型コロナの影響が広がった後は、どのような結婚式なら可能なのか、本当に結婚式をしているのかを知りたいというご要望が増えています。需要が高まっているので、実際に行われた先輩カップルの声をもって「結婚式をできるんだよ」とお伝えしていきたいですね。

カップルが欲しいのは「今」の情報ですから、挙式の写真や動画も新型コロナの影響が出た後に撮影したものに随時切り替えています。どのような感染対策をしているのかは、カップルのおふたりのみならず親御さんや列席される方もご覧になるでしょう。写真と実際が違ってしまってはお客様を不安にさせてしまいますから、自由が利くという自社ホームページの強みを活かしてスピーディーに対応していきたいです。

ホテルの総合力を活かし、お客様の多様なニーズに応える


── 新型コロナの影響は、結婚式以外の部分にも出ていますか?

フォトウエディングの比率が変化しました。結婚写真においては、当社で結婚式を挙げられる方の前撮りとフォトウエディングのみの2種類のお客様がおり、これまでは半々だったのですが、フォトウエディングのみのほうが多くなりました。

もともとここ数年はトレンドとしてフォトウエディングが伸びていたので、件数としてはコロナを理由に多少伸びた程度です。現在の実績件数としては年間1,000件程度ですが、新規や問い合わせはどんどん伸びており、他のチームのプランナーにもフォトウエディングのプランニングをレクチャーし、チームの仕事をシェアしながら対応しています。

フォトウエディングに関しては今後も伸びていくでしょうから、大きな可能性を感じています。

── これから自社ホームページを通じてチャレンジしたいことはありますか。

「縦から横へ」を合言葉に、結婚式の当日に限らず、顔合わせや結納、プロポーズ、記念日利用などのさまざまなシーンで、雅叙園をご利用いただきたいと思っていますので、そうしたチャネルは幅広く持っていたいと考えています。今後も宿泊やレストランなどと連携しながら、ホテルの総合力を活かし、本当の意味での生涯顧客化を目指していきたいと思っています。

4_写真109.jpg


<<CASE #002「ディアーズ・ブレイン」の事例を見る


(取材・文:菊池百合子 / 写真:伊藤メイ子  / 企画編集:ウエディングパーク

関連記事