認知経路比率66%を誇る鎌倉・萬屋本店のホームページが「リアル」を追求する理由【Wedding-UP CASE #005】

認知経路比率66%を誇る鎌倉・萬屋本店のホームページが「リアル」を追求する理由【Wedding-UP CASE #005】

結婚するおふたりの式場検討時の情報収集源が多様化してきている今、ブライダル業界で注目されているキーワードのひとつが「自社集客」です。予約機能のある中間サービスを通さずに、式場各社の公式ホームページなどから直接予約してもらう集客方法を指します。

式場が伝えたいメッセージは公式ホームページにこそ込められていて、その思いに共感した顧客とのベストマッチを叶えられるのが「自社集客」。

新型コロナがウエディング業界に大きく影響をもたらし、広告費を削減する傾向が強まっている今、顧客と式場双方にとって幸せなマッチング手法として「自社集客」はますます重要になってくるのではないでしょうか。

そこで結婚あした研究所では、自社集客に注力し成功している企業の事例(CASE)を紹介する新企画「Wedding-UP CASE 〜自社集客力を鍛える〜」を立ち上げました。各社がどのように自社集客に取り組み、その先に何を目指しているのかを聞いていきます。

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今回取り上げるのは、神奈川県鎌倉市にある式場「萬屋本店」です。萬屋本店は2016年にオープンした時から、情報量が充実したホームページが注目されてきました。さらに2020年にホームページをリニューアルした結果、認知経路全体の66%が自社ホームページになるという、驚異的な数字をみせています。

萬屋本店が自社ホームページ集客でそのような結果を得られるようになった理由について、取締役・事業責任者の鈴木樹陽太さんにお話をうかがいました。明日から自社集客に取り組むきっかけになれば幸いです。


■ プロフィール
萬屋本店
鎌倉・長谷にある創業200年の老舗酒問屋をリノベーションし、2016年にグランドオープン。「結婚式は人生の通過儀礼。結婚式という人生の節目を大切に迎えていただきたい」という考えを元に、お世話になったゲストの方々へのおもてなしに特化した結婚式を提供。大正ロマンの世界観と、日本元来の結婚式祝言を挙げられる場所としてお客様から支持されている。公式サイト


リニューアルしたホームページのセッション数が187%に

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── 萬屋本店は、2020年にホームページをリニューアルされたそうですね。リニューアルの効果はいかがでしたか。

はい、2020年10月にリニューアルをしました。数値でみると、問い合わせ件数はリニューアル前比209%、ホームページの月間セッション数は187%、ブログのPV数は222%という結果になりました。

お客様が何をきっかけに萬屋本店を知ってくださったのかを知るために認知経路比率をみてみると、ホームぺージはもともと全体の52%だったのが66%になり、リニューアル後14%アップしました。媒体広告が7割以上占めるケースも多いと聞くので、客観的にみても自社集客の比率がかなり高いと思います。

萬屋本店の自社集客の特徴は、ブログの集客力が強いことだと思います。ホームページ全体のセッション数のうち、3分の1がブログからの流入となっています。ブログを書いているのは現場スタッフなので、スタッフ向けにSEOの勉強会を開催したりホームページに関する情報を伝えたりしてきましたが、リニューアルによってブログの読みやすさを工夫したことで更にPVが上昇しました。また、公式InstagramとHPとの連動強化にも着手したため、その効果も出ていると思います。

── つまり、2020年のリニューアルで方針を切り替えたのではなく、その前から自社集客に力を入れてこられたのですね。どんな背景があって自社集客に注力されることにしたのでしょうか?

私たち萬屋本店は、2016年のグランドオープン時からホームページを重視してきました。当時から競合との競争は激しく、媒体での集客を図ろうとすると、他会場よりも高いお金をかけ、広告の枠を多く購入し、目立つ方法をとらないといけない。また、媒体では体裁が決まっているため、どうしても会場の華やかさや豪華さなどのスペックで勝負をしないといけません。その状況でどう集客するのかを考えたら、自分たちの力で運用できるもので勝負するしかない。それならホームページもブログもSNSも、自分たちが手を動かして集客力を伸ばしていこうと考えました。

この考え方は、集客方法が変化した今でも変わりません。「広告戦略によって成果が出ているか」よりも「お客様にお伝えしたい萬屋本店らしさを表現できているか」を重視しています。そして何より、「結婚式でお客様に素晴らしい体験をお届けできているか」、ここが重要です。発信によって打ち出しているブランディングと、実際にお届けする体験にズレがないように意識してきました。

さらにもうひとつ、「出発点が最も大切」ということも重視してきました。出発点に理念や哲学がない状態で自社集客に注力をしようとしても、他社の成功例をただ取り入れるだけで意味があまりありません。付焼刃的な対策ではなく、根本的に自社を見直して、自分たちの強みや今行われている結婚式のクオリティと向き合い、必要があれば、力強くテコ入れをしていくことが重要だと感じています。

── 式場の発信は華やかな分、少しでもイメージと違う現実がみえてしまうと、そのギャップの衝撃はお客様にとって大きく感じられそうですね。

リニューアルを決めた理由も、その「ズレ」への意識にあります。お客様にホームページ上で伝わっていることと現場でおきていることの乖離が出てきたように感じて、このままでは萬屋本店らしさを適切にお伝えできなくなっていってしまう、と感じてリニューアルを決めました。

もともと2020年春にリニューアルを予定していたのですが、「萬屋本店として何をどのように発信するのか」を社内で検討を重ねていたら想定よりも時間がかかりました。5年後、10年後にも通用するホームページを目指せたと思います。

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リアルを伝えること、細部まで言葉で表現すること

── リニューアルにあたって検討に時間がかかったとのことですが、どのような道筋で考えて現在のホームページに至ったのでしょうか?

以前はスペックやハード面などのビジュアル面に価値を見出し、発信しているところが人気会場でした。ここ10年で大きく変化したのはスペックやハード面ではなく、コンセプトやストーリーを重視している会場が人気を博しているということです。萬屋本店もこれまでは「それは美しいもてなしが許された場所」というコンセプトを全面に打ち出し、お客様にはここに価値を見出していただけていたと思います。
そして今、コンセプトやストーリーは多くの会場で素晴らしいメッセージを届けられており、このフィールドでは埋もれてしまい、萬屋本店の価値は伝えきれないという答えに行きつきました。

そこで、次の段階にいきたいと思ったんです。それが、会場でどんなことがおきているのかを誠実に伝える「リアリティ」と、「考えを細部まで言葉で表現すること」です。この2点に注力しました。ですから萬屋本店のホームページは文字数が相当多いと思います。自分たちの価値をしっかりお届けするには、情報量に制限がなく、体裁が固定化されていない自社集客が最もマッチし、萬屋本店の独自性をしっかり表現できたと思います。

── 文章量が多いことは、萬屋本店の特徴だと感じます。

たしかに文章量は多い方だと思います。でもあえて「言葉」に注力したのは、ホームページの役割を「架け橋」にしたいと考えたからなんです。

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「萬屋本店」公式Instagramより


萬屋本店の公式Instagramは、現在フォロワー27,000人(2021年3月時点)と多くの方にご覧いただいています。つまり、写真を見て萬屋本店に興味を持ってくださる方が多くいらっしゃる。そのため、写真を見た方がホームページを閲覧したときに、写真でお伝えしているスタイリングがどのように生まれるのか、なぜそうしているのか、背景がわかるようにお伝えする。萬屋本店におけるホームページの役割は、「Instagramの写真と実際の式場を繋ぐ架け橋」になることなんです。

── そのようなリニューアルを通じて、数値以外にも効果を感じられた部分はありますか?

ホームページを通じてお申し込みしてくださったほぼ全てのお客様と、どのような結果になろうとも最後まで連絡が取れることでしょうか。私たちがご見学の際にお伝えしている結婚式への考え方についても、お客様がホームページですでにご覧になっているので、お客様と私たちとのマッチングの度合いが高まっている、と言えるかもしれません。

この経験を通して思う事は、美しく加工された言葉や写真でいかにして集客するか、ヒットさせるかが本来のマーケティングではなく、必要だと感じている方へ適切に価値をお届けするのがマーケティングの本質だということです。何をお届けるするかは、ここで実際に行われる結婚式の価値そのものであるはず。お客様にお届けしている結婚式が本当に良い物だからこそ、支持していただけるものが提供できると思います。それがときおり逆転して、実際の結婚式がどうかよりも、どう宣伝するかの方が先行してしまうことがあります。だからこそ、婚礼価値の創出に力をかけ、リアリティを表現することで、お客様に評価していただくという考え方が大切です。

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自分たちで伝えることが、いちばんの近道

── リニューアル時のテキストは鈴木さんが書かれて、普段のブログはスタッフさんが書かれているとのことですが、言ってしまえばあえて「手がかかる」方法を選んでいる理由はどこにあるのでしょうか。

ここも「リアリティ」だと思っています。自分たちの言葉で、自分たちがいちばん伝えたいことを伝える。文章を読めば、それを書いた人の姿勢や思いもストレートに伝わります。ここなら安心・信頼して任せられると思っていただくには、自分たちの言葉で伝えることがいちばんだと考えています。

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感動レポートより


お客様の実際の結婚式についてお伝えする「感動レポート」も、多くの式場さんはお客様の感想をメインに掲載していらっしゃいますが、萬屋本店の感動レポートは「私たちがどんなプランニングをしたか」をお伝えする場だと考えています。どういうシーンをつくりたかったのか、どういう背景があってこのようなプランニングをしたのか、プランナーにレポートを書いてもらい、最後にお客様インタビューを掲載する形にしています。

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感動レポート「その後の歩み」より


感動レポートのなかで「その後の歩み」というコンテンツも掲載しているのですが、これも「リアリティ」を表現するひとつです。実際に萬屋本店では、今日も結婚式後のお客様が来てくださっていたり、七五三やお食い初めで使っていただいたりと、「家族と一緒に歩む場所」として結婚式後も自然と足を運んでくださっています。

ですから、萬屋本店が「お客様と心で繋がって、一緒に人生を歩んでいきたい」と考えていることをお伝えするために、「その後の歩み」では、日常にあるお客様と萬屋本店との関係のあり方を掲載しています。

── 普段からお忙しい現場チームに対して、どのようにブログやレポートを書く意味を共有されていますか?

ブログについては、「集客は自分たちの手で生み出していこう」と日常的に伝えています。感動レポートについては、掲載できるお客様の組数がどうしても限られるので、「感動レポートに掲載できる結婚式をつくりたい」というモチベーションにもなっている印象です。

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自社の強みは、お客様とのコミュニケーションから見つける

── さまざまな発信を自社で手がけられていますが、どこが発信の原点になっているのでしょうか。

全ての発信における出発点は、私たちがどこで評価していただいているのかをみつめることです。その出発点を明確にする上で、お客様の声からたくさん学ばせていただいてきました。そのなかには「ここをご評価いただけると思わなかった」と感じた部分もあります。

例えばInstagramの発信において重きを置いているのは、萬屋本店の「大正ロマン」らしい和装のスタイリングについて、全国の結婚式を控えた方に参考になる情報をお届けすること。会場の宣伝をするよりも、萬屋本店にいらっしゃるのが難しい遠方の方にも参考にしていただけるスタイリングの情報をお伝えする。この方針を決めたときから、フォロワー数が一気に伸びました。

というのも、スタイリングについて発信するようになったきっかけは、「萬屋本店のスタイリングがいい」「遠方のお客様が、萬屋本店のスタイリングを勉強してお近くの式場さんに提案されている」というお客様のお声をいただいたからなんです。

この例が教えてくれたように、お客様がどんな情報を求めていらして、私たちに何を見出してくださっているのかを見失わないことが重要だと思います。そのニーズに対して、私たちはどのような姿勢で何をお伝えできるのか。このコミュニケーションの原点を大切にしながら、これからも発信を強化していこうと考えています。

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