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結婚式の真髄は「誓い」にあり。安部トシ子さんに聞く、結婚式の形式を変える今こそ目を向けるべきこと 【#ミライケッコンシキ Vol.6】

新型コロナウイルス感染拡大により、世の中が大きく変わりつつあります。個人の価値観が変化し、それに伴ってさまざまなサービスがアップデートされるなか、これからウエディング業界にも変化が生まれていくことは想像に難くありません。

では、未来の結婚式はどうなっていくのでしょうか。シリーズ「#ミライケッコンシキ」では、「ミライの結婚式のために、イマ私たちができること」をテーマに、ウエディング業界に携わる方々にオンラインで取材しています。ミライの結婚式、一緒に考えてみませんか?

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今回お話をうかがったのは、ウエディングプロデュース事業を手がける株式会社オフィース・マリアージュの代表取締役・安部トシ子さんです。安部さんは、結婚式をフォローするアテンダーを育てるために1983年に会社を創業し、自ら式場との間に立って新郎新婦のサポートを続けてきました。

オフィース・マリアージュは、2020年で創業37周年を迎えています。創業以前からウエディング業界で仕事を続けてきた安部さんに、コロナ禍だからこそ見つめたい結婚式の本質についてうかがいました。

(※ このインタビューは、2020年6月17日にオンラインにて実施しています)


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■ プロフィール
株式会社オフィース・マリアージュ

1983年に安部トシ子さんが創業した、ウエディングの総合プロデュース会社。1989年にはクイーンエリザベスII号での結婚式の総監修を担当。現在は年間で約5,000組の挙式を担当する。結婚式を挙げるための情報を掲載しているWebメディア「25ans Wedding」にて、「安部トシ子さんの花嫁相談室」を連載中。
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直接会えない今、自分ができることを考えた

office-mariage_1.jpgオフィース・マリアージュ 公式サイト

── 最近のオフィース・マリアージュでは、どのようにお仕事されていますか?

緊急事態宣言の期間中は自宅待機にし、現在はオフィスに出社する人数を全社員の30%に抑えています。在宅ワークを始めてから、社員の全体ミーティングをオンラインで開催するようにしました。

私はオンラインツールに慣れていなかったので、緊急事態宣言が発令される前からオンラインツールについて勉強したんです。オンラインで開催されているセミナーに何度か参加して、ようやく慣れてきたように思います。

── 在宅ワークに切り替えて、意識されたことはありますか?

直接会えなくても会社のメンバーとつながっているんだ、と社員が思えるように、オンラインでの会話の機会を増やしました。特別なインフォメーションがなくても話す機会を設けて、「元気?」「ご家族も元気にしていらっしゃる?」と声をかけるようにしています。

── とはいえ多くの結婚式が延期になっている今、お仕事に影響が出ていますか?

そうなんです。緊急事態宣言の前後でほとんどの結婚式が延期になり、結婚式を担当している部門のお仕事が一気になくなってしまいました。仕方ないとはいえ、以前のようにエネルギッシュに仕事したいな、ともどかしく感じますね。

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幸せは結婚式の「形式」がくれるものではない

── 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、挙式を悩んでいる新郎新婦が多そうですね。

オフィース・マリアージュでは「花嫁相談室」を開設していて、さまざまな相談が寄せられるんです。すでに挙式が決まっている方から、延期の日程を決められない、参列される方にどうお知らせしたらいいか、といった相談が増えています。

特に2019年秋に台風の影響を受け、今年の春に挙式を延期した方々にとっては、二度目の延期。そうなると「本当に結婚式をやれるの?」と心が折れてしまいますよね。「25ans Wedding」の連載「安部トシ子の花嫁相談室」では、三密にならないウエディングや延期の注意点についてお答えしていますが、胸が痛みます。

一方で私がウエディングの仕事を始めた40年前を思い出すと、ご家族だけで集まったり地域の方と一緒に公民館のような場所でお祝いしたりする形式が多かったんです。ブーケトスなんて、ごくわずか。考え方が多様になる過程で、いつの間にか「三密」(密閉・密集・密接)になりやすい挙式になっていきました。

そう思うと、形式を変えざるを得ない今も、嘆くことばかりではないかなと思うんです。

── 形式を変えるときこそ、新郎新婦も式場も「結婚式とは何なのか」を考える機会になりそうです。

そう思います。だって、結婚式の形式が幸せをくれるわけではないでしょう?「ブーケトスができないから楽しくないわ」「結婚式の形式が変わってしまって、私たちは不幸だわ」と、形式に頼って自分たちの幸せを得ようとしている人は、所詮楽しくないんです。結婚式の本質は、形式ではありませんから。

むしろ形式を変えざるを得ないとき、その本質が浮き彫りになると思うんです。どんな形式であろうと、よい結婚式にするために努力できる自分たちであれたら、その努力が必ず結婚式を意義深いものにします。この時代に勝つような心持ちでいられたら、この先の大変なことも二人で乗り越えていけると思うんです。

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── 安部さんは、「形式」ではない結婚式の本質とは何だと考えていらっしゃいますか?

まずは結婚とは何なのか、ここからお話ししますね。「なぜ結婚するのか?」を突き詰めた答えは、自分がめぐりあった「一生をともに歩んでいきたい」と思う人との関係に「けじめ」をつけてくれるからです。

けじめをつけるために新郎新婦が誓いを立て、その誓いをみなさんに見ていただき、覚悟と責任が発生する場。これが儀式です。ですから私は、結婚式の真髄とは「誓い」だと考えています。誓いがなければ式の役割はありません。

誓いをすれば、新郎新婦には覚悟と責任が発生します。それらを引き受けて、この式から二人の人生が始まったと思えることが、儀式をする意味です。そして「個人的な儀式を見ていただきありがとうございました、今後もよろしくお願いします」とお伝えするのが披露宴だと考えています。

── 披露宴が目立ちがちですが、結婚式の真髄が「誓い」なら、儀式にもっと目を向けたくなりますね。

むしろ形式だけ華やかでも、自分たちのなかに残るものが何もなければ、二人のスタートラインがないのと同じ。それって、さみしくありませんか? たとえば儀式で相手に伝えたい誓いの言葉を自分で作ることをおすすめします。そうすれば、その言葉を忘れることは一生ないでしょう。

ですからコロナ禍で挙式が延期になった新郎新婦は、二人でどんな誓いを立てたいのか、自分が相手に伝えたい誓いとは何なのかを考える宿題を、自分たちに出してみるのもいいと思います。形式的な誓いではなく結婚式のなかで一つでも心に残る言葉があれば、あなたにとってこの上なく価値のある式になりますから。

新郎新婦の儀式を引き受けるのは、式場の責任

── 安部さんが、結婚式の真髄は儀式にあると確信されたのは、どんなきっかけがあったのでしょうか。

これまで37年間プロデュースを続けるなかで、胸がぎゅっと締めつけられる結婚式がいくつかありました。その一つ、余命が限られた新婦の結婚式を担当したときのことです。

新婦の親御さんがお相手に式後にさみしい思いをさせてしまう心配をしても、新郎は「僕は彼女と結婚式を挙げると、何年も前から約束していたんです」とおっしゃっていました。すでに彼女の身体は思うように動かせず、どの式場からも断られたそうで、私たちが式場をご提案したんです。

彼女はドクターだったので、自分の余命を知った上で挙式のタイミングを決断されて。指が動かなくて誓いの指輪をつけられない新婦に、新郎はブレスレットを送りました。「二人で幸せになろう」と彼が誓ってくれた瞬間が、彼女にとってどんな言葉よりも救いになったことでしょう。この誓いを私も忘れられませんし、結婚式とは「誓い」の儀式なのだとあらためて教えてもらいました。

ですから私は、儀式を大切に考えない方の結婚式をお引き受けしたくないのです。数多くの結婚式を担当するよりも、担当した私たちまで誇りに思えるような、記憶に残る結婚式をご一緒させていただきたいのです。


── 新郎新婦にとって価値のある儀式にするために、式場はどんな姿勢で式をつくっていくべきだと思われますか?

儀式に対して責任を持ち、新郎新婦が自分の家族だとしたら何ができるのか、真摯に考える姿勢を持つことです。

披露宴は新郎新婦が主体となってつくるもの、儀式は式場が責任を負うものだと思っています。披露宴に参列されるお客様のイメージは、新郎新婦にしか分かりません。でもどんな儀式で新郎新婦の人生のスタートを飾るのかは、式場の情熱ありきだと思うんです。

コロナ禍によって式の形式を変えていかざるを得ない今、式場によってどんな点を工夫するのか、考え方は異なります。オンラインを活用している式場もありますね。どんな形式であっても、新郎新婦も参列される方も感動できる式をつくることは式場の責任です。

特に「このタイミングでも挙式したい」とおっしゃる方は、それぞれの事情があって式への思いを強く持っていらっしゃるはず。その熱意に答えられる式をご提供する方法を考えて、どう実行に移していけるのか。私たち業界の人間が、心あるプロフェッショナルでありうるか。今こそ私たちの仕事が問われていると思います。

ウエディング業界が、お客様の変化に寄り添えるように

── 業界が変化を迫られるなか、安部さんは今後どのようにお仕事していきたいですか?

業界よりも前に、日々お客様が変化しています。業界主導でお客様にアプローチするのではなく、お客様の変化に対して業界が寄り添える方法を考える。今回はこの順番が求められていると思うんです。

一番辛いのは、新郎新婦です。私たちも仕事ができなくて辛いですし、業界のみなさんも大変だと思うのですが、どんな対応があったら新郎新婦は安心できるのか考えることを、私はあきらめたくない。「私たちはこういうことをできますよ」とどんどんお伝えしたいですし、式場のみなさんにもぜひ発信してほしいです。

それに、コロナ禍を経て結婚を検討する方もたくさんいます。これからも結婚式はなくなるわけではありませんから、結婚式の真髄を新郎新婦に感じていただくために自分は何ができるのか、常に考えていきたいです。


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(取材・文:菊池百合子 / 写真:伊藤メイ子 / 企画編集:ウエディングパーク

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