【連載 vol.2】 妊活スタート前に知っておきたい!妊娠しやすい体づくり~男性編~ Dr.齊藤と妊活たまごクラブ編集長に聞く!結婚準備中にできる「プレ妊活」のススメ

【連載 vol.2】 妊活スタート前に知っておきたい!妊娠しやすい体づくり~男性編~ Dr.齊藤と妊活たまごクラブ編集長に聞く!結婚準備中にできる「プレ妊活」のススメ

結婚したら、パートナーと子育てをしたい、いつか赤ちゃんが欲しいと思っている方向けの連載がスタート!

【Dr.齊藤と妊活たまごクラブ編集長に聞く!結婚準備中にできる「プレ妊活」のススメ」】は、産婦人科医で不妊治療専門医の齊藤英和先生と『妊活たまごクラブ』編集長の米谷明子さんが、結婚準備中からできる「プレ妊活」についてお話するスペシャル対談です。

<過去記事>
第1回:【連載 vol.1】 妊活スタート前に知っておきたい!妊娠しやすい体づくり~女性編~ Dr.齊藤と妊活たまごクラブ編集長に聞く!結婚準備中にできる「プレ妊活」のススメ

第2回は、男性のための「妊娠しやすい体づくり」。4回にわたる対談記事、ぜひパートナーと一緒に読んでみてくださいね。

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■ プロフィール
和(さいとう・ひでかず)
元国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 副センター長。現在梅が丘産婦人科ARTセンター長。

米谷明子(よねや・あきこ)
ベネッセコーポレーション『妊活たまごクラブ』編集長。『妊活たまごクラブ』誌面で藤先生に妊活特集の監修をいただく。https://st.benesse.ne.jp/ninkatsu/
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「婦人科」に対して「男性科」がないのはどうして?

米】前回は妊娠するための女性の体のことを伺いました。卵子の老化の事実から考える「妊娠適齢期」のお話。そして、結婚準備期にできる体づくりのことでした。私は、「挙式と生理が重なったら?」というお話がとても面白かったです。そういうことを挙式前に誰に相談したらいいかわからない、知っておけばよかった、という女性も多いのではないでしょうか?
齊】そうなんですよね。みなさん結婚準備で忙しいでしょうから、そこまで手が回らないかもしれないけれど、生理で体調が悪くなる人は、婦人科に相談しておいたほうがよいですね。なにせ結婚式は、晴れの舞台ですから。
米】そうすると挙式を控えた男性は誰に相談をするのでしょうか。今回は男性の体について教えてください。そもそも、結婚準備期の男性は、自分が妊娠可能な体かどうか、意識はしているものでしょうか?女性だけじゃなく男性のブライダルチェックもあってもいいのでは?と思うのですが。
齊】結婚するときに、男性がそこまで考えているかはどうでしょう。今でこそ、不妊の原因は男女半々といわれますが、それは最近の話です。僕が学生のころは、女性のほうが10対1くらいの割合で原因がある、と言われたものでした。
米】10対1…。子どもができない原因は、ほとんど女性と言っていたということですよね。
齊】昔の話ですけどね。だけどよく調べてみると、不妊症の原因は男女半々くらいということが最近になってようやくわかってきたんです。そんなバックグラウンドもあるから、男性のブライダルチェックはあまり広がっていない。結婚前に生殖能力を調べる男性向けのブライダルチェックをしているクリニックもあるにはありますが。
米】女性は、生理のトラブルなどがあれば婦人科に行くこともありますが、男性は、「男性科」なんてありませんね。受けるとすると「泌尿器科」ということになるのでしょうが、「僕、今度結婚するので」と受診するのはハードルが高いですよね。
齊】男性で妊娠できるかどうかを調べるとしたら精液検査ですからね。でも、結婚前からそこまでする人は少ないですよ。
米】結婚準備中の男性でも、自分の精子がどういう状態かなんて、思い描かないわけですね。
齊】「勃起障害(ED)」があったりすれば、「もしかして子どもができにくいんじゃないか」と思うかもしれないけど、でも通常は、射精できたら精液の中に精子が入っていると思うでしょう。でも中には、もともと精液の中に精子がいなかったり、数が極端に少なかったり、運動率が低かったりする場合もある。
米】ふつうにセックスさえできていれば、自分には何も問題はない!と思いますよね。ところで、妊活してなかなか赤ちゃんができなくて、不妊治療クリニックに男性だけが検査に来るというケースはありますか?
齊】少ないけど、ありますよ。もしかしたら、パートナーに「私はちゃんと生理があるんだから、あなたのせいじゃないの?」とか言われてのことかもしれないけどね。でもまあ、男性のほうから積極的に不妊治療クリニックを受診するケースは多くはないですよ。

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射精するまでの間に、「精子の質」に影響するのはどんなこと?

米】ところで、意外と知られていない「精子」について、教えてください。精子は作られ始めてから、射精されるまではどのくらい時間がかかるものですか。女性の場合は、そもそもお母さんのおなかの中にいるとき、胎児のときに卵子は作られていますよね。
齊】女性の卵子と大きく異なるのは、精子は2つある精巣(睾丸)の中で毎日新しく作られていること。それが射精によって体外に排出されるまで、だいたい3カ月くらいかかります。
米】3か月!その間に精子は体内で何をしているのでしょうか。
齊】体内でじっと成長しながら射精を待っています。その間にも、精子はいろいろな影響は受けることになります。放射線や薬、あと発熱の影響も。
米】その3カ月の間に起こることが、精子の動きが良くないなど、精子の質に影響するんですね。よく、精子には高熱がよくないということは知られていますね。
齊】熱の影響は本当です。だから、そもそも男性の体の構造は、精巣(睾丸)が体の外に出ているんですよ、温まりすぎないように。だいたい体幹の温度より2~3度低くなっています。だから、あんまりピッタリしたきついパンツを長時間履いたりすると、温度が高くなってよくないということはあります。
米】猛暑は影響するでしょうか…。熱いお風呂は?
齊】たとえば仕事で高温の中で仕事をするような場合は、影響するんじゃないかといわれています。長風呂はよくないっていう人もいますね。どの程度影響するのかまではわからないけど、ものすごく高温で長期間でなければそんなには問題ないと思います。
米】そうなんですね。あと気になるのは放射線です。
齊】放射線はふだんの生活の中、自然界の中にもありますね。例えば、高度が高い飛行
機なんかは、地上よりもはるかに多い放射線を浴びることになるんです。
米】じゃあ飛行機にしょっちゅう乗っていると…?
齊】そこまでのデータはないからわからないけれど、物理的にはかなり浴びて入るはずです。でも、高度が高いところで飛行機から外にはでないでしょう?何事も過度と長期間には気を付けるべきですね。
米】ほかに、たとえば飲み物や食べ物などの影響はあるのでしょうか。お酒がダメな理由はなんですか?
齊】アルコールが代謝する時に酸化物質が出るので多量の飲酒は精子には影響しますよ。酸化物質って細胞にダメージを与えるものだから、それが強く出れば精子の質も悪くなるということになる。酸化された古い油を使った揚げ物なども、そればっかり食べたらよくないですね。
米】ほかにもだめなことで、自転車とかも聞きますが。
齊】それはきついウェアを着ているせいかもしれないですね。摩擦で熱も上がるだろうし。
米】精子もけっこう繊細ということですね。

「精子はためないほうがいい」説は本当だった!

米】先生、男性の精子はためないほうがいいと聞きますが。
齊】ためておくってことは古い精子が残っているということだから、マスターベーションでも何でも、定期的に出してあげたほうがいいですよ。
米】出さなくても、古くなったものは体内に吸収されると聞いたことがありますが…
齊】そうだけど、出てくる時には残っている古いのから押し出されて先に出てくるんですよ。だったら、できて数日くらいのほうがいいですよね?
米】なるほど。妊活には、古いのより新しいほうがいいんですね。
齊】新しいほうが質もよいということになります。妊活を始めたら、排卵日だけセックスして、それまでは禁欲という人もいますが、あまり我慢しすぎてもたまっていた古い精子が先に出てくることになる。でも毎日だと多少精子の数が減るから、1日おきに射精するくらいがいいというデータもあります。
米】なるほど。でも最近、若い人でもセックスレスの人が増えているといいますが。
齊】多いでしょうね。セックスはできないけれど、マスターベーションなら射精できる人もいるようです。
米】そうなんですね!
齊】女性の中では射精できない、勃起できないっていう人。たくさんいますよ。
米】お互いのことが大好きで愛し合って結婚してもですか?
齊】そう、仲良しの友だちのようなカップルもいますよ。でも結婚の目的は人それぞれでいいと思います。
米】でも、そういう二人が赤ちゃんが欲しくなった場合、セックスで妊娠はなかなか難しいですね。そうなると、人工授精※という選択肢も?
齊】はい。考え方ですが、それも自分たちの選択肢だと思っていいですね。
※人工授精:採精した精液を専用の注射器などで排卵期の女性の子宮に注入して授精する方法。

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妊活するならリラックスが大切

米】もし、なかなかセックスができない場合で、妊活を考えたときは、はじめから人工授精や体外受精など、不妊治療という選択肢も考えたほうがよいのでしょうか
齊】もちろんありです。女性とセックスで射精するってやっぱりストレスいっぱい受けているとできない、という問題があります。
米】仕事のし過ぎとか、そういうストレスですか?
齊】ただでさえ疲れているのに、さらに疲れることをするのはイヤだっていうこともあるようです。そんなつもりはなくても、男性は女性からのプレッシャーを感じていることも多い。
米】副交感神経が優位な時じゃないと勃起できない、というのも聞いたことがあります。
齊】そうですね、リラックスしていないと。
米】あまりにストレスが強かったら、そもそも射精そのものもむずかしくなる?
齊】そんな気分にならない、ということになりますね。
米】お酒を飲まないとセックスできない、という人もいるといいますが、お酒を飲んでいたら、精子の質は悪くなりますか?
齊】いや、そんな1回や2回お酒飲んだからといって、影響はそこまでないですよ。アルコール中毒で常時ずっと酔っ払っているとなると影響するだろうけれど、そのときだけ頑張るために飲んだくらいだったら、それはいいんと思います?
米】リラックスにつながればそれでいい?
齊】勃起補助のための多少のアルコールなら、リラックスする程度の飲酒なら、いいと思いますよ。
米】そういう意味では女性もあんまりプレッシャーかけないようにしないとですね。
齊】そうですね。女性の言葉に男性は傷つくこともありますから。「なぜ立たないの?」とかいわれちゃうと余計につらいでしょうね。
米】男性のこと、女性はもっと理解しなくちゃいけませんね。
齊】それはお互いにね。
米】男性も大変ですね。
齊】ですから、若いうちの性欲旺盛なうちに子づくりはがんばったほうがいいんです、男も年とるほどしなくなっちゃう。年齢が上がると、精子の質にも関係するけど、セックスの回数も劇的に減るわけですから。日本人は特にね。

年齢は、女性の卵だけでなく、男性の精子にも影響する

米】女性の卵は、年齢+0.5才ということですが、男性も精子の質や数に年齢は影響しますか?
齊】女性ほど顕著でないけれど、影響します。精巣の中には、精子のもととなる幹細胞があって、胎児の間に20回くらいまで分裂するけど、生まれたころに一度止まります。そして思春期から分裂が再び始まって、幹細胞が増え始め、精子の幹細胞は分裂を繰り返していきます。だから精子は、年齢が高くなれば分裂回数の多い細胞となります。
米】分裂回数が多いとどういう問題が?
齊】まれにエラーが起こるんですよ。エラーというのはDNAの設計図がちょっと変化するということ。たしかに卵の方が、年齢の影響は大きいけれど、精子だって年齢で劣化するんだよね。出てくる精子はたしかにできたてのフレッシュなものではあるけれど。
米】そうなんですか。
齊】大きく染色体異常が起こるほどではないので、妊娠もするし、赤ちゃんも生まれてくる。ただ、男性の年齢が高い場合、生まれてきて、ある程度大きくなったときに子どもに先天異常のリスクという形であらわれることが最近わかってきました。もちろん、すべてが高齢の父親に原因するものではないですよ。でも影響は多少ある、ということ。

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齊】妊娠だけを考えると、圧倒的に女性の卵の方が年齢による影響が大きいけれど、そこに隠された精子の影響もある、ということです。
米】そういうことも考えると、やっぱり妊娠適齢期って、女性だけでなく男性にもある、ということなんですね。
齊】覚えておいてほしいのは、将来もし赤ちゃんがなかなかできない不妊となった場合、その原因は男女どちらにも可能性があるということ。そしてセックスがうまくできなくても、妊娠する方法はある。でも、二人のこれからの人生ですから、お互いの体のことを理解し、受け止める思いやりは必要ですね。
米】結婚準備中の今、体のことで男性ができることはありますか?
齊】大事なのは妊娠がゴールではなく、妊娠した先は長い子育てが待っている。だから、男性も健康でいることは大事。それと、風疹抗体をもっているか、などの検査は、女性と一緒に受けてもいいですね。免疫のない女性が妊娠初期に風疹にかかると赤ちゃんが先天性風疹症候群という病気をもって生まれる可能性が高い。予防接種制度の変遷により、完了していない世代があります。男性がかかって女性にうつしてしまったら大変です。
米】未来の自分、未来の子どものためにできること、という考えを結婚準備中の今こそ、頭の隅にちょっと入れておくとよいですね。

(撮影/古谷利幸 文/関川香織 企画編集/たまひよ、ウエディングパーク)

※本記事は、たまひよウエディングパークの共同企画です。

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