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写真で「夫婦」になっていく。ウエディングカメラマン・小島さんの考える写真のチカラ

スマートフォンの登場で、すっかり身近になった「写真」。

日常的に写真を撮る枚数が増えた一方で、一枚の写真に思いを込めること、とっておきの写真を何度も見返すことが減ったと実感しています。

ピュアアーティス小島さん_1.jpg(photo by 小島靖雄)

そんな日常とは対極的に、「とっておきの写真を残したい」と考える人が多い大イベント、「結婚」。

それでも友人に話を聞いていると、最近では「結婚」においても日常と同じように手軽な写真で十分、と考える人も少なくないようです。

ピュアアーティス小島さん_2.JPG 

(photo by 小島靖雄)

「手軽さ」を求める人がいる一方で、挙式しなくても結婚を記念した写真を撮りたい、とフォトウエディングを選ぶ人も増えている今、あらためて考えたい一つの疑問。

人生をともに歩んでいきたい人との「とっておきの一枚」を残すことに、どんな意味があるんですか?

これまでに1000組以上のカップルを撮影してきたウエディングカメラマン・小島靖雄さんに、この問いと向き合うヒントをいただきました。

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▼プロフィール
小島靖雄(こじま・やすお)

1973年愛知県生まれ。自身の結婚式で個人のカメラマンに撮影を依頼したことをきっかけに、ウエディングカメラマンに転身。地元・名古屋で撮影スタジオ「ピュアアーティス」を立ち上げ後、東海地区を中心に多くのカップルと家族を撮影してきた。ロケーション撮影に力を入れている。ジャパンウエディングフォトグランプリなど受賞多数。Instagram @pureartis
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写真の持つ力に触れた瞬間

── カメラマンになる前は、デザイナーをされていたとうかがっています。

小さい頃から、よく似顔絵を描いていたんです。絵を人に見せて喜んでもらえることが嬉しかった。そのまま美術系に興味を持っていたら、高校生のときにデザイナーの仕事を知って。やってみたいと思い、大学卒業後デザイナーとして就職しました。

── デザイナーをされていた頃、カメラには興味をお持ちでしたか?

いえ、そもそも自分のカメラを持っていませんでした。カメラマンになりたい気持ちも全くなくて。そもそも自分の結婚式を挙げるまで、ウエディングカメラマンの存在自体を知らなかったくらいです。

ピュアアーティス小島さん_3.jpg

── そんな小島さんが写真と出会われたのは、どんな瞬間だったのでしょうか。

あるカメラマンとの出会いですね。自分たちの結婚式での撮影をお願いしました。情報誌を見ながらカメラマンを探していたら、一枚だけ強く惹かれる写真があって。

白無垢姿の花嫁が、手を引かれながら結婚式場に向かう後ろ姿。控えめな大きさで掲載されていたセピアの一枚を見てすぐに、その方にお願いしようと決めましたね。

── どうして一枚の写真に惹かれたのか、気になります。

なによりも雰囲気です。僕は写真に写っていた方と面識がないですし、もちろんその場に居合わせたわけでもない。それでも涙がこぼれそうになるくらい、心にジーンと響いてきて。

それまでは、写真と真剣に向き合ったことがありませんでした。その一枚のおかげで初めて、写真って撮った瞬間の空気を伝える力を持っているんだ、って気づいたんです。

一枚の写真が、人生の転機になった

ピュアアーティス小島さん_4.jpg

(photo by 小島靖雄)

── その一枚に導かれるようにして、「ウエディングカメラマン」の仕事を知ったのですね。

はい。カメラマンに連絡して、打ち合わせのために事務所にお邪魔しました。入った瞬間、ずらっと飾ってある写真が目に飛び込んできて。どれもすごく幸せそうで、その光景を忘れられなかったんですよね。

一瞬の連続をとらえる写真だからこそ、撮影する人次第で撮れるものが大きく変わる。そう気づいたことで、自分でもやってみたい気持ちがどんどん大きくなって。結婚式が終わってすぐに、そのカメラマンに「教えてください」とお願いしたんです。

── 当時27歳で結婚直後だった小島さんにとって、大きな決断でしたか?

そうですね、すごく大きかった。でも気づいたら行動していましたね。どうやったら僕が惹かれた一枚のような写真を撮れるのか知りたくて、いてもたってもいられずに。この選択が人生の転機になりました。それだけ一枚の写真から受けた影響が大きかったんです。

── その後どのように写真を勉強されたのでしょうか。

カメラを買ったものの、使い方さえわからないところからのスタート。師事したカメラマンに付き添いながら、ひたすら現場で見て覚えていきました。弟子入りしてから一年間はデザイナーを続けていたので、平日はデザイナー、土日はカメラマンの仕事をする毎日でしたね。

ピュアアーティス小島さん_5.jpg

── そんなハードな毎日でも写真を続けられた理由は、どこにあったのでしょう。

被写体がなんでもよかったわけではなく、僕の場合は結婚式にこだわりたかった。だからウエディングの写真を撮れる嬉しさが、大変さよりもずっとずっと大きかったんです。たしかに激動の毎日でしたが、どんどん写真にのめり込んでいきましたね。

デザイナーの仕事も好きだったのですが、お客さまと接する機会がなかなかない。でもウエディングのカメラマンなら、お客さまと関われる。直接喜びを受け取れることに、やりがいを感じたんです。

結局、カメラマンの仕事を毎日やりたい気持ちがどんどん大きくなって。葛藤した先に、写真の仕事を始めて一年で独立を選びました。

なによりも、お客さまの幸せにこだわりたい

── 独立してからのターニングポイントはありますか?

屋外で前撮りする「ロケーション撮影」を始めたことですね。今では珍しくありませんが、以前は結婚式場での前撮りが一般的。フォーマルな雰囲気で撮影するものでした。

でも僕は、お堅い写真を撮ることが苦手で。腕を組んでカメラ目線をおさめるタイプのロケーション撮影は当時から見かけていたのですが、より自然な表情をしている瞬間の二人を撮りたかった。

じゃあもっと自由に動いてもらおうと思って、僕なりのロケーション撮影をスタートしてみました。海で走ったり地面に寝っ転がったりと存分に動きまわれるように、自社でドレスを用意して。

そうやって撮った写真をホームページでご紹介していくうちに、ロケーション希望のお客さまがすごく増えていったんです。

ピュアアーティス小島さん_6.jpgピュアアーティス小島さん_7.jpg

(photo by 小島靖雄)

── お写真を拝見していると、カップルのみなさんが本当にいきいきとしている様子が伝わってきます。

実はこれらの写真を撮るとき、僕はお二人からすごく離れた場所でカメラを持っているんです。時には声も聞こえないほどの距離感。だっていきなり近くでカメラを構えられると、緊張しちゃいますよね。

構図も大切ですが、それよりもお二人の自然な表情を優先したい。だからできるだけ僕の存在を消して、お二人だけになれる状態をつくっています。

ポーズも無理に決めてもらおうとせず、のびのび遊んでもらって。お二人でいればどこにいても楽しくなるし、気づいたら表情もやわらかくなる。そうやって引き出されていく一瞬を狙うんです。

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(photo by 小島靖雄)

── そのようなご自分のスタイルや世界観は、どうやってつくりあげられましたか?

僕が撮影を始めた頃は今ほど撮影用の小物が流行っていなかったのですが、個人的にかわいらしい小物が好きなので、試しに撮影で使ってみたんです。そしたら、セットを見たお客さまが喜んでくださって。それからはますますかわいいアイテムを買い集めて、ふんだんに撮影に使うようになりましたね。

あとは、デザイナーの経験も活きています。構図から撮影方法の選び方、色のバランスまで、デザインの視点も入れながら世界観をつくりあげていく。パソコンでの仕上げも、僕にとって重要な工程です。完成形まで自分の手で調整できることが、デジタル写真のおもしろさの一つだなと。

これまでに撮影してきた写真をホームページやSNSに載せているので、かわいらしい写真を希望されるお客さまがほとんど。ふわっとした印象に仕上がるよう試行錯誤してきたことで、自分なりの世界観につながったんだと思います。

── SNSが広まったことでお客さまとのミスマッチはおこりにくくなっていそうですが、小島さんが表現したい世界観とお客さまのご要望が合わないこともありますか?

どんなポーズがいいか、どんな世界観にしたいか、そういった詳細をあらかじめ固めた上でカメラマンと打ち合わせされる方が増えています。参考になる情報を集めやすくなりましたからね。

でも他社さんの写真をずらっと並べて「こういう写真にしてください」と言われると、自分の世界観とどうしても合わない部分もある。そこに葛藤する瞬間もありますし、自分のこだわりを貫くカメラマンもいます。

それでも僕は、なるべくお客さまのご希望を全て叶えるようにしていて。もちろん僕にも自分なりのこだわりはあるのですが、それ以上にお客さまの幸せにこだわりたい。だから僕の中で葛藤があったとしても、お客さまが喜んでくださる選択をしようと考えています。

写真が幸せへの一歩を後押ししてくれる

── 小島さんにとって、写真がお客さまに届けてくれるものは何ですか?

前撮りを終えたお客さまから「撮影をとおして、私たちはより一層夫婦としてあたたかい一歩を踏み出すことができます」とメールをいただいたんです。その言葉で、僕が思っていたよりもはるかに「写真を撮ること」「前撮りをすること」に意味がある、と気づいて。

撮影の時間をお二人で共有して、これから何度も一緒に同じ写真を見ていく。僕が撮影したことで写真を残せるだけでなく、お二人がより“夫婦”に近づいたんだな、って腑に落ちました。

だからこれからも写真をとおして、お二人がより幸せになっていく一歩を後押ししていきたいと思っています。


(取材・文:菊池百合子 / 写真:土田凌/企画編集:ウエディングパーク

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