「業務のデジタル化」から「新しい結婚式のかたちを提案するためのDX」へ|HATSUNEYA GARDEN(ハツネヤガーデン)~since 1868 KAWAGOE~

「業務のデジタル化」から「新しい結婚式のかたちを提案するためのDX」へ|HATSUNEYA GARDEN(ハツネヤガーデン)~since 1868 KAWAGOE~

社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進む昨今、ウエディング業界も結婚式におけるニーズの変化に応えるため、変革を迫られています。しかし、結婚式という「リアルであること」を前提とするサービスを提供してきたウエディング業界では、DXに踏み出せていない企業も数多くあるのが現状です。

そこでウエディングパークでは、ウエディング企業をもっと成長(Growth)させるための教育プログラム「Dクリ for Growth」を開始しました。プログラムの修了後に現場で実践できるスキルの習得を重視した全8回、3か月間の集中型カリキュラムで、これからのウエディング企業に欠かせない、デジタル・DXの知識からブランディングなどのビジネススキル、最終的にはビジネスアイデアの企画立案、DX推進のノウハウまで身につけることを目指します。

今回は実際に「Dクリ for Growth」を受講された、フランス料理レストラン「HATSUNEYA GARDEN(ハツネヤガーデン) ~since 1868 KAWAGOE~」の支配人である鐵山亮介さんに、DXに対しての意識や取り組みの変化についてお聞きしました。


■プロフィール
HATSUNEYA GARDEN(ハツネヤガーデン) ~since 1868 KAWAGOE~
小江戸・川越のレストラン・カフェ・ウェディングをそなえた複合施設。明治元年に創業した「料亭 初音屋」をリニューアルして誕生し、そのおもかげを宿したまま特別な時間と体験を訪れる方々に提供している。 公式サイト


業務のデジタル化から一歩先に進むために、導入を決意

――「Dクリ for Growth」を導入する以前は、御社ではDXに対してどのように取り組まれていましたか。

私が支配人を勤める「HATSUNEYA GARDEN」では、業務のデジタル化は進めていました。新型コロナウイルスが流行し、お客様と対面でお会いすることが難しくなった頃から、社内でいっそうデジタル化への意識が高まったように思います。

具体的には、紙面だった結婚式の規約や契約書を電子契約に切り替えたり、結婚式で提供するお料理のアレルギー確認をGoogleフォームで行ったりと、さまざまな場面でデジタルツールを取り入れながら、業務の効率化を進めていました。

画像提供:HATSUNEYA GARDEN

――業務のデジタル化やDXを進める中で、課題に感じていたことはありますか。

本来、DXとは、デジタルを取り入れて業務を効率化した上で、さらに新しい事業を創造することだという認識はありました。しかし、弊社では、デジタル化で対面の機会を減らしたり、スタッフの労働時間を抑えたりといった現場課題の解決にとどまっていたんです。現状からさらに発展させなくてはいけないという思いはずっとありました。

――「Dクリ for Growth」を導入する決め手は何だったのでしょうか。

本社の担当者から、幹部候補育成の一環として、DX人材を育てるためだと聞いています。

私自身も、お客様がデジタルツールやSNSなどを手軽に利用する時代になり、「必ずウエディング業界でもDXがキーワードになってくるだろう」と常々考えていました。集客も、メディアやSNS、デジタル広告など複数チャネルを活用した複雑なものになっていて、情報の移り替わりも早くなっています。

それに対して、現場は社会の動きに追いついていないとも感じていたんです。

私自身も結婚式を考えるカップルと年齢差が出てきはじめ、トレンドを把握する情報感度が悪くなっていると感じることも増えました。もし自分が集客の実業務をやらないとしても、指示を出せるような状況でなくてはなりません。

それに、改めて「DXとは何か」と問われると、自分の中ではある程度理解していてもうまく説明できないところも課題に感じていたんです。自分自身のインプットという意味合いと、DXを理解するスタッフの育成を目的に受講しました。

デザイン思考を身につけて、プランナー目線から経営目線に

――「Dクリ for Growth」を受講されて、最も学びになったのは何ですか。

特に、マインドテック株式会社(DX専門の研修会社)さんと一緒に3日間にわたって行った「デザイン思考開発プログラム」というワークショップは、気づきや学びがたくさんありました。

支配人という立場の私にとって、課題を創出し、新しい事業を生み出すための具体的な手法や進め方を学べたことは大きかったです。

細かいところだと、ペルソナの設定やユーザーインタビューの組み立て方なども学びになりました。

Dクリ for Growth受講時の様子

――プログラムの中で最も難しいと感じたことは何でしたか。

後半のビジネスモデルを設計する講義では特に苦戦した記憶があります。いつもは現場にある目先の課題を解決するために、つい小さな目標を立ててしまう思考のクセがありました。そのため、ビジョンから考える大きな目標を立てて、それを実現するためにどんなサービスを活用するのか、どんな企業と協業するのか、最後にはどう収益化につなげるのかといった段階まで考えるのは難しかったですね。この講義を通して「自分はまだまだプランナー目線なんだ」ということを強く実感しました。

――課題に感じた部分をどのように解決したのでしょうか。

ひとりだと自分の考えの枠に当てはめて考えてしまいがちですが、社内のメンバーと意見を出し合って、それぞれ式場や立場が違うメンバーと議論を交わすことができたので、個人では考えが及ばない意見を出すことができました。「こういう企業に依頼したらいいんじゃないか」「うちの店舗でこういうサービスがあった」など、あらゆる意見が出て気づきや発見は多かったですね。

――「Dクリ for Growth」を受講したあと、社内での変化はありましたか。

講義の中で学んだリーダーシップやファシリテーションの内容は、講義を受講してから真っ先にチームメンバーのミーティングや研修で実践しました。まずはビジョンやありたい姿を設計してもらい、そのうえで現状を把握し、ギャップを埋めていくという作業です。時には厳しい現状や問題に目を向けなければいけないので、講義で学んだ「フレームワークに当てはめて現状を冷静に見つめ直す」という考え方はとても役に立ちました。

あとは、プランナーのミーティングにおける目的やルールを改めて設定し直しました。具体的には、課題ごとに議論する時間の長さを設定する、参加者は1人1回以上は発言するというルールを設けました。これらを実践したことで、ミーティング中に意見が活発に出やすくなったり、事前にメンバーから相談ごとや課題を共有してミーティングの場でほかのメンバーから提案してくれたりするようになりましたね。

ほかにも、プログラム前半で学んだ「Notion」の活用方法は、店舗のサービス部門を管理するメンバーに役立っているようです。これまで大量にあった紙のマニュアルをNotionで作ったり、紙のノートに書き込んでいた共有事項をNotion上でいろんなメンバーが追記できるようにしたりと、いろいろ活用しているようです。

Dクリ for Growth受講時の様子

――「Dクリ for Growth」をきっかけに社内に変化が出てきているんですね。

はい、少しずつですが。本来はデザイン思考を展開して事業を進めていくことが理想だと思うので、これからも学んだことを社内で継続して実践し、DXを進めていきたいです。

DXを推進して、お客様に新しい結婚式のかたちを提案したい

――「Dクリ for Growth」を受講された立場から、ウエディング業界におけるDXの課題をどう解決していくべきだとお考えですか。

常々感じるのは、ウエディングの世界にはまだまだアナログな慣習がたくさん残っているということです。未だにFAXで受発注が成り立つような会社が多い一方で、すごくDXが進んでいる会社もあり、会社ごとの差が大きくなっていると感じます。

そのような差が生まれないために、ウエディング業界全体でDXを推進することが、今まで結婚式に後ろ向きだった方や海外在住の方など、新しいお客様の創造につながるのではないでしょうか。

――従来通りのやり方だけでは対応しきれないことや、新しい顧客の獲得につながりづらいことを実感されているんですね。

そうですね。ここ数年でSNSからの集客が増えるなど、お客様の式場選びの行動がすごく変わってきていると感じます。お客様にデジタルネイティブの世代が増えるなか、最新のツールやトレンドに乗れていないだけで検討から外れることも珍しくありません。そのため、お客様からあらゆるご相談があったときに、“対応できない”ではなく“一緒にプランを組み立てていく”に変換できるように、現場の考え方や仕組みを変えていかなければいけないと考えます。

――今後「Dクリ for Growth」で学んだことを、どのように生かしていきたいですか。

やはり一番は、新しい顧客づくりに生かしたいです。今では結婚式を挙げない「ナシ婚」も一般的になっていますが、その一方で、両家の顔合わせやフォトウエディングなどの結婚に関わるイベントを行った方は多いというデータもあります。「ナシ婚」を選ぶ方たちは、結婚を祝うことに全く興味がないというわけではないんです。「HATSUNEYA GARDEN」に来られるお客様も、以前より会社で役職を持って活躍されている女性が増えて、タイパを気にする方も増えていますし、LGBTQのお客様も増え、結婚式に対するニーズの多様化を感じています。

HATSUNEYA GARDENでのフォトウエディング

「ナシ婚」のように、私たちが今までサービスをご提供できていなかったお客様に対しても、新しい結婚式のかたちをご提案するときに「Dクリ for Growth」で学んだことを大いに生かせるのではないかと考えています。

そして弊社の「結婚式から始まる一生のお付き合い」という経営理念と掛け合わせ、結婚式をきっかけにお客様に弊社のファンになっていただき、さらに次のカップルにまでつながるようなビジネスモデルを描いていきたいです。

取材:大井あゆみ、文:稲垣恵美
企画・編集:ウエディングパーク

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