【後編】デジタルの可能性を探る Wedding-UP DX|DX推進において人材及び組織のあり方とは

【後編】デジタルの可能性を探る Wedding-UP DX|DX推進において人材及び組織のあり方とは

新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに社会全体のDXが急速に進む中、結婚式を取り巻く環境やニーズの変化に応えるために、ウエディング業界も変革を迫られるようになりました。

ウエディングパークでは、2016年より業界のDXにいち早く取り組み、サービスやセミナーを通し、業界のDXをサポートしております。

オンラインセミナー「デジタルの可能性を探る Wedding-UP DX」では、ウエディング業界内でも早い段階からDX領域を積極的に推進している株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)の金香氏と、株式会社CRAZY(以下、CRAZY)の吉田氏をお招きし、ウエディングパークの小笠が司会を務め、各社のDXにおける最新事例、取り組みや課題、今後の展望について伺いました。前編では、両社のDX推進における具体的事例を紹介しました。後編では、DX推進においての人材及び組織のあり方について、レポートをお届けします。


DXを推進するために欠かせない「人材」。T&GCRAZYが取り組む組織づくりとは

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小笠:「トークテーマ DX推進において人材および組織のあり方とは」に移りたいと思います。

各社様にDX推進のお話を伺う中で「人材の育成」や「組織への浸透」が難しいというご相談をいただいています。どのように社員を巻き込み、かつお客様に還元する価値としてつなげていくのかが、DX推進のポイントだと感じ、今回このテーマを設けさせていただいています。先ほどの吉田様のお話でスプレットシート導入の背景をお話しいただきましたが、どうでしょうか。

吉田氏:現場感でいうと「DX推進」は、壮大な感じがして手が止まるんですよね。いきなりDX推進をしようと大きく進めるのではなく、まずは現場の中にある小さな課題をデジタルを活用して解消してみる。その成功体験が積み重なっていくと、徐々にDXに対してトライしてみようという風土は広がっていくのではないでしょうか。CRAZYとしても、自発的に課題発見をして、自ら小さくトライするという風土づくりを心がけています。

小笠:課題や問いに対して、現場やウエディングプランナーの皆さんにも解を求める機会が多いのでしょうか。 

吉田氏:前提、課題をそのままにしておきたくないという組織のカルチャーが根付いていると思います。また、課題と解決案を各自がどうしていきたいのか、ポジションや役割を超えてよりよくしていく、というリーダー陣の意志も大事だと考えています。また、今後ITの力は必須なので、社内体験を通じて良かったものはお客様にも展開していきます。経営のコミットに関しては、弊社代表の森山も「スマートフォンが当たり前になったように、10年後20年後、結婚式が今と同じであるはずがない」と言っており、リーダー陣がどれだけ未来を読めるか、未来に想いを馳せて想像できるかが大事だと考えています。

小笠:T&Gさんはどうでしょうか。

金香氏:大きく分けて2つありまして、ひとつは「全社で同じ絵を描く」、もうひとつは「実装するフェーズをリードできる人材をつくる」。一つ目は「DXを何のために?」という答えが、各セクション各レイヤーでバラバラだと推進浸透が難しいのではと思っています。DXがゴールではなく、DXを活用した後にどんな世界にしたいのかを全社共通で描けるかが一番大事ですね。そして絵を描いただけでは、DXに精通した社員がインハウスでいないと実現が難しい。人材不足においては弊社も課題認識しておりますが、実装フェーズを担える人材をつくるために、弊社が取り組んでいる制度を少しご紹介させてください。2年前から「社外留職制度」を人事制度として導入していて、T&Gに籍を置いたまま外部の企業様に数年間社員として入ってもらい、新しいインプットを経て、新たな価値を社内で発揮してもらうという制度です。実は、ウエディングパーク様にも、弊社の現場で勤務していた2010年新卒の社員1名を留職させていただいています。まさに小笠さんの「DX本部」のひとりとしてお仕事をさせていただいています。DX本部のひとりとして、プロダクトマネジメントする機会はT&Gにいてもなかなか得られない経験だと思っているので、経験を経て、弊社のDX推進の旗振りをしてほしいと思っています。

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小笠:我々も大変お世話になっているのですが、DXは現場のリアルとデジタルをつなぐことになるので、リアルを把握していないとツールが役割を発揮できないんですよね。まさに今、その部分で力を発揮いただいています。T&Gさんが本気でキャリアに投資をしている取り組みの一つだと感じています。

金香氏:過去に外部からデジタルに精通したプロフェッショナル人材を中途採用したこともあるのですが、なかなか上手くいかず。結婚式の現場で何が起きているかをユーザー目線で、解像度高く語れる、理解がある、そんな人材が率いることに価値があるのでは、ということから中の人材を育てていく方針にしています。

吉田氏:我々もアプリ開発の段階でエンジニアを採用したのですが、文化やサービスの考えが全然違っていたので、なかなか難しく。DX人材は既にいるメンバーがそのスキルを育てていくというのが大事なのかなと思います。また、これから入社する新卒の世代は、ITやアプリに対して新しい感覚を持っているので、5年後10年後に違ったサービスがつくれるのではと期待していますし、そういった人材が入社してきてくれることも大事ですよね。

小笠:社内で育成していく上で、どんな経験を積むのが理想でしょうか。

金香氏:プロジェクトをマネジメントする、プロマネ人材はキーワードになりますね。求めたい能力としては「課題発見力」と「問題提起力」で、日々の仕事のやり方はこのままでいいのだろうか?と問いを立てる力(課題発見力)と、課題を発見して、会社に対して問題提起ができ(問題提起力)、企画として通し、かつ運営まで導ける力をつける経験ですかね。人が成長する上で「機会を開発する」というのは大事ですね。

吉田氏:課題発見ですね。経営陣やリーダーの中でも、どの課題を本質的に事業として解決していくのかを決めるのが大事ですね。引き続き色んな未来を想像しながらチャレンジするのが大切なんだと感じました。

金香氏:ウエディングはどうしても、デジタルに苦手意識を持っている方が多いのでは、と思います。デジタルリテラシーを持ち、SNSやツールを使いこなしている人材がこれから中心になっていくことを考えると、機会さえ与えれば中から育っていくと思っています。

DX推進の始め方は?社内理解はどのように進めれば?

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小笠:それでは、質疑応答に移りたいと思います。DX推進を進める場合、何から始めればいいでしょうか」という質問がきております。

金香氏:たくさん着手できる領域はあると思います。でもまずは現場の業務を可視化すること、何がどういう状況になっているのかを見た上で、改善点を探すことからだと。問いを立て、課題を発見していくことなのではないでしょうか。

吉田氏:無料で、明日から、リスクなく、できるものからやっていくのがいいかと。30分、社内で課題点についてディスカッションしてみるとか、試していくのがいいかなと思いました。課題を持っている人、想いを持っている人が仲間と話してみてやってみることからはじまるのではと思います。

小笠:ありがとうございます。次の質問は「業務効率化や生産性の向上に対して社内に理解してもらいにくいのですが、どう提案したらいいでしょうか」という質問がきています。

金香氏:どうしてもやらなくてはいけないことでなければ、投資のアクセルを踏みづらいことがあります。でも、3年、5年、10年後を考えると、長い期間で見ての投資は結果として資産になる、長きに渡り影響する、貢献できるという視点を持って企画側も経営側も向き合うことが重要です。また「やらなかった場合どうなるのか」のペイン(痛み)をしっかり議論していくことも大切ですね。

吉田氏:ポジティブにストーリーを描いていきたいのですが、取り組まないことによるネガティブストーリーもある。最終的には数値だと思っていて、数百万円のラインで何ができるのかを数値で考えていくのが大事かなと。また、お金という意味では助成金も含めて、資金を集めてやるかは考えていかなければいけないですよね。そうすれば、業界の中でもITやDXのチャレンジもしやすいのではと思います。

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小笠:ありがとうございます。そろそろ終了のお時間になりました。今回のテーマとしておいていた「ウエディング×DXの可能性」について、改めてお二人からお話しいただければと思います。

金香氏:本日はありがとうございました。DX推進は、先行者メリットが時間差で感じられる領域だと思っていて、できる限り早くスタートするのが大事かなと。また、本日皆さんにお伝えしたかったひとつとしては、DXに取り組む理由は、顧客体験価値を上げることで、あくまでそのための推進だということです。ここでいう顧客とは、お客様だけではなくデジタル化で恩恵を受けるウエディングプランナーを含めた従業員も顧客であるという認識を持てるといいなと思っています。

やはりウエディング業界の現場のイメージは、自己犠牲が伴うとか、労を惜しまない貢献など、負の側面があります。しかし、ウエディングプランナーの仕事はクリエイティブで知的生産性の高い仕事だというイメージづくりができたときに、ウエディングプランナーに憧れる人が増えたり、他の業界ではなくウエディング業界にいきたいという人が増えたり、優秀な人材が集まる、定着する業界になると思っています。「お客様に」というところを対カップルだけではなく、従業員にとっても魅力的な職業にしていくために、各社がDXを少しずつでも推進していくことで業界の価値が上がるといいなと思っています。今日はありがとうございました。

吉田氏:改めまして今日はありがとうございました。DX推進は、3年後の未来に向けて今やるべきなのではと確信しています。世界が動いているチャンスの中で、変わっている業界は変わってきている。そこで取り残される会社や業界になってしまうと、次に変化の波にいつ乗るの?となってしまう。目の前の受注や施工をしっかりやっていきながら、私たちとしてもチャレンジしていきたいですし、業界内でも色んなチャレンジをしていきたいと思いました。また、働くメンバーや集まる人たちの数や質を増やしていく中で、客観的に業界を見たときに、レガシー産業という雰囲気がある。そうではなく、コロナをきっかけにかっこよくて先進的、そしてハートフルな業界になっていきたいと考えています。いち企業としてチャレンジしていくには、時間もお金も限界がありますので、様々な会社さんと共創をして、アップデートし、なし婚の方にも振り向いてもらって産業を盛り上げていきたいと思っています。今日はありがとうございました。

小笠:今日は長い時間、ありがとうございました。我々としてもDX本部という広告以外のところでウエディング企業の皆様のお手伝いするという初めてのチャレンジでして、当然私たちだけで解決できるとは思っておらず、皆さんとともにつくる共創をさせていただきながら、業界に対してお手伝いできることがないのかを手探りで模索している段階です。

ぜひ本日の課題や、もっとこうなればいいのにという欲求をぶつけていただき、私たちが形にし、お手伝いをしていきたいと考えております。ポイントとしては、DXを通して、ソフトの体験や、顧客体験を最大化していくことにつなげることが、私たちDX本部がある意味だと思っておりますので、ぜひ皆様とこれから共創していけると嬉しいです。今日はありがとうございました。


>>【前編】デジタルの可能性を探る Wedding-UP DX|テイクアンドギヴ・ニーズ、CRAZYのDX戦略に迫る

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