大切なのはコミュニケーション設計。2社の事例から学ぶ「自社集客」の取り組み方|「Wedding-UP DAY 2022」session3

大切なのはコミュニケーション設計。2社の事例から学ぶ「自社集客」の取り組み方|「Wedding-UP DAY 2022」session3

2022年12月1日、ハイブリッド型のオンラインカンファレンス「Wedding-UP DAY 2022」を開催しました。テーマごと7つのセッションに分けられ、業界の枠を超えた計23名の登壇者がこれからのウエディングビジネスについて考え、ともに語り合いました。

近年、オウンドコンテンツを用いたマーケティング手法「自社集客」が注目を集めています。その波はウエディング業界にも広まっており、自社集客の顧客とのコミュニケーション設計を考える企業が増えています。

ウエディング企業のマーケティングに着目したsession3では、「自社集客」を強化するにはどうしたらいいか、自社集客を実践する2社に取り組み方や抑えるべきポイントについて語っていただきました。

2社が自社集客に踏み切ったきっかけ

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>写真左から大竹、松田氏、河野氏、金

まずはウエディングパークの金 小熙が自社集客の考え方について解説しました。

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ユーザーを自社サイトに導き、商品の魅力を知ってもらうための自社集客では「どの接点でどのような強みを見せるのかを意識してコミュニケーション設計を行うこと」が大切だと言われています。金が調査結果をもとに、その理由を解説しました。

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「ウエディングパークの調査によると、ユーザーが結婚式場探しをするときには、情報サイトやInstagramに次いで、公式サイトを見て情報収集していることがわかりました。ユーザーは意思決定をするときに、何かひとつの媒体を見るよりも、さまざまなメディアを回遊していると考えることができます。だからこそ、どの接点でどういう強みを見せるのかといったコミュニケーション設計が大事になりますし、そのひとつに自社のコンテンツも含まれると考えています」(金)

■エスクリ「自社集客は一番効率がいい方法だった」

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全国各地で婚礼施設を運営するエスクリも、自社集客に踏み切った1社です。媒体出稿量を増やし、広く面を広げて集客する流れが主流だったなかでコロナ禍に突入し、広告費を削減する企業が増えました。「広告費の面においても、自社集客が一番効率のいい方法だった」と松田 哲郎氏は話しました。

では、エスクリは自社集客を進めるにあたり、まずは何を始めたのでしょうか。

「エスクリではまず自社分析を徹底しました。当社は“ビルイン※1や駅チカなどの利便性”を強みとする会場を多く運営しており、且つ会場の形態も多種多様なので“オンリーワンのコンセプト”などのソフト面を打ち出すことが難しかった。そのような状況の中で、他社と同じ戦略ではいけないと思い、自社らしいコミュニケーション設計を追求することからスタートしていきました」(松田氏)

※1:商業ビルや複合ビルの一区画に入居する店舗のこと

■東京會舘「自社を徹底的に分析して自社集客に挑んだ」

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ウエディングやレストランなど、さまざまな事業を手がける株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ。今回お話いただく河野 卓哉 氏は、「東京會舘」のリニューアルオープンから媒体やWeb広告による集客全般を担っています。自社集客をはじめた当初について振り返りました。

「私たちが自社集客をはじめたころ、東京會舘は本舘の全面建て替えで4年半クローズしていました。そのため、当時、結婚式を検討しているお客様には“結婚式場”としての浸透が薄れてしまっていたので、まずはしっかり認知してもらわなければならないという課題がありました。幅広い層のお客様にお越しいただくために、どうやってリーチしていくか、私たちも自社を徹底的に分析して挑みました」(河野氏)

■自社集客のポイントは「共通したKPIを持つこと」「時間軸を大事にすること」

自社集客において松田氏が心がけていたのは、最低でも3ヶ月から半年ほどは効果測定のために時間を設けること。「特に新しいことをはじめたときはせめて2ヶ月は何も動かさないくらいの気概で取り組み、改善点が見えてからはスピーディーな対応を心がけた」と話します。

そしてもうひとつが、共通したKPIを持つこと。「離脱率やコンバージョン率だけでなく、何を指標にするかを明確にして取り組まないとずれが生じてしまいますし、主観での議論はあまりいいものが生まれないので、定量的な指標が大切だと思います」と語りました。

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金の「自社集客の際に大切にしている考え方はありますか?」という問いに、河野氏は「時間軸」と回答しました。

「広告は魔法ではないので、すぐ結果が出るわけでもないですし、どこまで我慢できるかが重要になると思います。松田さんのお話でもありましたが、『ここまでは我慢をしよう』『ここまではこれをしよう』という線引きが大切かなと。オープン前から計画を立てて、メディアプランナーと相談することも大切だと思います。後追いになってしまうと、想定外の出来事が起こったときにあわててしまいますし、ブレることなく、淡々とこなしていくことが重要なのではないでしょうか」(河野氏)

媒体によってユーザーへのアプローチは変化する

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続いての話題は「自社集客と向き合った上で、広告と自社サイトに対してどのような考え方を持っているか」。松田氏は、「媒体によってアプローチの仕方は変わる」と語ります。

「広告といっても、自社集客でコンバージョン率を増やすための媒体もあれば、顧客とのタッチポイントを増やすための媒体もあり、戦略にあった投資をしていくことが大事だと思っています。あとは、僕らの会社はブランド力がそこまで強くないと認識しているので、そもそもどういう会場なのか、来ていただいた方に伝えないといけないと思っていて。だからこそ、トップページを見ただけでどういう会場なのかをある程度正しく伝えるための設計を意識しています」(松田氏)

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河野氏は「全ての媒体に同じKPIを求めるのではなく、媒体ごとに明確な役割分担が必要だと考えている」と言います。

「自社サイトはリニューアルのブランディングに徹するのが大事だと思って取り組みを続けてきました。『東京會舘はこういう会場』と自己紹介になるサイト、というのでしょうか。コンセプトをしっかりと伝えられるようなサイトにするために、ペルソナを明確にして、訴求したいコンテンツを作りました」(河野氏)

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「自社集客がうまくいっているのかの指標は、ターゲットに当たっているかどうかで判断していたのですか?」という大竹 淳介からの質問に対して、河野氏は「お越しいただくお客様、ペルソナ、時間軸というものによって変わりますが……」と前置きした上で「ターゲット層の比率を見ました」と回答。「訴求したい層に届いているか、そして、実際にお客様が狙い通りに来ているかどうかを重視した」と話しました。

2社が語る「自社集客」の具体的な取り組み方

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自社集客のなかには共通点もありながら、ターゲットや媒体によってアプローチが変わってくることがわかりました。

では、実際にどのような取り組みを行っているのかについて、2社がそれぞれの視点で語りました。

松田氏は「広告運用の責任者に全権限を委ねています」と説明し、その理由を語りました。

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「エリアごとに責任者を置く体制にすることで、各社のバランス調整がしやすいなどのメリットがあると考えています。もちろん、失敗しても誰かを責めることはしないですが、責任の所在が明確になることで各自がしっかり取り組んでいく体制づくりができたのかなと思います」(松田氏)

河野氏は「集客最大化に向けて、やはりお客様がサイトを検索されたとき訪れ先との整合性が必要。そこが整っていくことで離脱を防いだり、CVR※2を高められていくからです。内製でWebデザイナーがいればすぐにクリエイティブを変えられますが、そういう環境がない会社も少なくないと思います。それでも、公式サイトとLPとの親和性は大事なので、迅速な更新作業が行える環境を整えることも欠かせません」と語ります。

※2:Webサイト訪問者のうち、購入や問い合わせなどそのWebサイトの最終成果に至った件数の割合のこと

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>東京會舘の実際のHP。ウエディングパークが提供している公式サイト・LP作成ツール「Webつく」で随時情報を更新している

今後の自社集客の展望について

自社サイトに誘導するためには、マーケティングの知識はもちろんのこと、ターゲットに合わせたサイトづくりが欠かせません。自社集客をはじめる企業も増えているからこそ、差別化も必要です。

最後に、松田氏と河野氏が、自社集客の今後の展望について語り、幕を閉じました。

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「自社集客のいいところは、費用対効果が抜群なところです。情報収集をしていくなかで自社サイトにたどり着いた方にしっかりとイメージを伝えた上で、実際に会場に来てくれた方々がそのイメージとの答え合わせをできるような設計をしていきたいです」(松田氏)

松田氏のコメントを受けて、「顕在層と潜在層の垣根が曖昧になってきましたよね。より接触ポイントをおさえ、確度を担保しないといけないときに自社集客が重要になってくると思います」と河野氏。「自社集客のときに気をつけなければならないのは、目的と手段を履き違えないこと。目的はあくまで集客の最大化であって、その手段のひとつとして自社集客があります。自社集客が目的になるとおかしなことになりかねないですし、集客の最大化を求めていく必要があると思います」と語りました。

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