カルチャーはどう浸透させるのか? 事例と解説で考える、新時代の組織づくり|「Wedding-UP DAY 2022」session2

カルチャーはどう浸透させるのか? 事例と解説で考える、新時代の組織づくり|「Wedding-UP DAY 2022」session2

2022年12月1日、ハイブリッド型のオンラインカンファレンス「Wedding-UP DAY 2022」を開催しました。テーマごと7つのセッションに分けられ、業界の枠を超えた計23名の登壇者がこれからのウエディングビジネスについて考え、ともに語り合いました。

session2では、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズと株式会社ウエディングパークが行った組織づくりの事例をもとに、“企業カルチャー”に着目し、『カルチャーで叶える新時代の「働き方改革」』について語りました。

意図的な働きかけが、カルチャーの浸透につながる

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>写真左から、梅原氏、笹原、金香氏、戸田

今回のセッションは、株式会社ウエディングパークと株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの事例を紹介しながら、株式会社リンクアンドモチベーション・梅原 英哉氏の解説を通して、他社にも応用可能な組織づくりを考える形式で行われました。

■ウエディングパークが考える「企業カルチャー」の重要性

ウエディングパークは「結婚を、もっと幸せにしよう。」という経営理念のもと、「21世紀を代表するブライダル会社を創る」という高いビジョンを掲げていますが、「社会を代表する会社を作りたいからこそ、長く、持続可能な組織づくりをする必要性を感じていました」と戸田は言います。

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また、ウエディングパークでは、経営理念やビジョンのほかに行動規範として「幸せのための9つのピース=TRUTH」を掲げています。

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「この一つ目にある『幸せの追求』のなかには、社員はもちろん、活用してくれているユーザー、ウエディング業界で働く方、私たちを
取り巻いている社会全体が含まれていて、それらの幸せを追求していきたいと思っています。ウエディング業界で長く働きたいと思ってもらえるために、当社では“カルチャー”が大事だと考えています」(戸田)

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ウエディングパークのカルチャーを浸透させるための取り組み例として、社員総会や社内SNSを挙げた戸田。「オフィスでの勤務だけでなくテレワークもあり、働き方がハイブリッドだからこそ、社員同士の切磋琢磨、支え合う文化をつくるために日頃から喜びをシェアしやすい空間を作っています」と語りました。

そして、カルチャーを浸透させるための取り組みを推進する部門として、カルチャー推進室について紹介。カルチャー推進室では、カルチャーの社内浸透はもちろんのこと、社会への発信を行っていると語りました。

■リンクアンドモチベーションが提唱する「組織成立3要素」の考え方

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梅原氏は「どんなに素晴らしい商品やサービスがあったとしても働く人のモチベーションがついてこなければ持続可能性はないと考えています」と語ります。モチベーション向上のためにもカルチャーの浸透が必要だと述べたあと、カルチャーが浸透している組織が持っているポイントとして「組織成立の三要素」を紹介しました。

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カルチャーがしっかり浸透している組織は、「共通の目的」「協働意思」「コミュニケーション」の3つの要素がうまくかけ算されていると言われています。これらが掛け算されることで一体感が生まれ、カルチャーが浸透していくのです。

わかりやすくイメージできるように、電車の例を挙げた梅原氏。

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「たとえば、同じ電車に人が乗っているのも集団と呼びますが、まだ組織化はされていないですよね。いろんな人がいて、『○○駅に行く』『友達と一緒に過ごす』などいろんな目的があるので、一体感がありません」(梅原氏)

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ただこういった集団でも、あることが起きれば組織に変わるそうです。

「たとえば、電車のなかで誰かが倒れたとしましょう。そうすると『この人を助けなければ』という共通目的が生まれて、協働意思が芽生えます。ただそれだけでは達成できないので、今度はコミュニケーションの量と質が大事になりますし、やり取りを重ねた上で『この人を助ける』という共通目的が達成され、一体感が強まるのです。これで、ただの集団が『組織』に変わります。

今回は一時的なアクシデントを例に出しましたが、意図的な働きかけを行うことで組織成立3要素を芽生えさせることができるし、それがカルチャーの浸透につなげられるということがわかったと思います」(梅原氏)

カルチャーの浸透に欠かせない「顧客や従業員の満足度」を向上させるための取り組みとは

梅原氏の話を受けて、金香氏は「カルチャーは“自社らしさ”であって、当社にとっての組織強化やカルチャー浸透に大事なのはお客様の満足度向上だと捉えています」と述べた上で、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)の取り組んでいるウエディング事業について話しました。

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「これまでCX(顧客体験価値)を上げるための取り組みとして、結婚式のあとに第三者機関からお電話をして、結婚式の満足度を聞いてきました。紙のアンケートだと答えないような嬉しかったことやちょっとした不満など、電話だからこそ聞ける話もあったのですが、当時はCS(顧客満足度)のみを計測していたので、高止まりが課題となってしまって……。次に何を指標にすべきかを考えたとき、NPS(顧客推奨度)を設けて、より質の高いお声をいただくことを目指しました」(金香氏)

現在は、式場のNPSランキングだけでなく、ウエディングプランナー個人のNPSランキングをとった上で、上位のウエディングプランナーがどのような取り組みをしているかをヒアリングしているそうです。

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また、そのプランナーがオンラインでレクチャーする機会を持つことで、全社員のスコア向上を目指していると言います。

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店舗数も多く、かつウエディングプランナーが400名以上いるからこそ、個人がどれだけ良い取り組みをしていようと全国に横展開されないという課題を抱えていたT&G。金香氏は「プランナーの良い取り組みをどのようにシェアしていくかを考えている」と話しました。

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T&Gの事例を聞いた梅原氏は「コミュニケーションの質が高いなと思いました」と絶賛。その上で「コミュニケーションを取るとき目標の魅力・達成可能性・危機感の3つの視点を大事にすると、さらに行動の質が上がるのではないか」と解説しました。

解説を踏まえて金香氏は「これは持論ですが、CSやNPSを上げていくことが結果として従業員の満足度向上につながると思うんです。最前線で仕事をしてくれているメンバーにとってのやりがいや目的意識を大切に続けてほしいと考えているので、コミュニケーションの方向性が間違っていないと分かり嬉しいです」と返しました。

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社内公募制度にも力を入れているT&G。「現場仕事の次のステップとして専門部署を目指したいと考えた従業員が、直属の上長の許可をとらずに立候補できる仕組みも整えました。制度を継続することで異動後の社員の活躍事例も伝えられるので、チャレンジした先に輝いている社員を見せる場を作ることも大切にしています」と話しました。

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「学校でいう留学のような“留職制度”を設け、自分の市場価値を社外で試し、留職先で得た知見を還元する取り組みもはじめています。実績はまだ多くはないですが、今後はいろんな職種の社員に挑戦してもらいたいと考えています」(金香氏)

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また、それ以外にもT&Gでは、社員の取り組みをシェアする機会を増やしたそうです。「社員数が多く、かつ、全国展開していることから、これまでは全社員で価値観を共有する機会が年1回の社員総会くらいでした。現在は、全国の拠点で実践された素敵なチャレンジを全国の社員にできるだけタイムリーにシェアする仕組みを整えて、バリューの醸成につなげていこうとしています」(金香氏)

“社員同士の想いがつながる場”を。ウエディングパークの組織づくり

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続いて、ウエディングパークの事例として、「締め会」「せどつく」が挙げられました。

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「10年以上続けている毎月末の『締め会』は、コロナ禍以前は業績報告がメインでした。それが、ハイブリッドな働き方に変化したことで目的から変えることになり、“社員同士の想いがつながる場”にコンセプトを変えて内容も刷新することに。70分かけてじっくりと行っています」(笹原)

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「『せどつく』は、その年に入社した新卒1年目の社員が、会社の課題や“こうありたい”を役員陣に提案し、必ずひとつ以上制度化されるという社内コンテストです。自分たちで会社を創っていくという当事者意識が高まる取り組みになっています。実際にせどつくでは、社内コミュニケーションをコーヒーブレイクで活性化する新制度『コーシー』が誕生し、好評です。ハイブリッドな働き方の中で、出社することの価値はラフに話せる機会だと体感しました。そういった機会にこそカルチャーを感じることができるのではないかと思っています」(笹原)

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ほかにも、全社員で会社の未来を共創する新制度「ウエパ総選挙」についても紹介しました。「ウエパ総選挙では、経営陣と社員がフラットに議論できる場を設けることを重視している」と笹原。

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ウエディングパークの取り組みに対して、梅原氏は、コロナ禍でコミュニケーションが希薄化しているからこそ、マズローの欲求5段階説でいう「社会的欲求」「承認欲求」を満たせなくなっているという現状を述べた上で「しっかり施策を打つことで存在承認をはじめとした欲求を満たすことができ、共同意識も醸成されているいい取り組みだと思います。勉強になりました」とコメントしました。

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株式会社テイクアンドギヴ・ニーズと株式会社ウエディングパークの事例を通して、さまざまな企業にも応用可能な組織づくりについて話した、session2。最後に、金香氏、梅原氏からの振り返りを受けて、幕を閉じました。

「withコロナのなかで少しずつ結婚式が戻ってきたものの、ブライダル業界が抱えている課題のひとつに人員不足が挙げられます…残念ながら当社にも退職者はいますが、私が一番悲しいと考えているのが、従業員がこの業界を離れてしまうこと。ウエディング業界の素晴らしさを理解して、そこを担っていく人材を育てていくことを業界全体の課題と認識してみんなで盛り上げていきたいなと思います。」(金香氏)

「ウエディング業界に限らず、共通目的やビジョン、ミッションを自分自身に問い続けていただきたいなと思いますし、今、それが一番大事だと思います。世の中の変化があったときや、今まで応援してくれている人が去ったときこそ存在意義を問いかけるのが大切です。一緒に世の中を盛り上げていきましょう!」(梅原氏)

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