ミライケッコンシキ
2020.10.15
箱根・小田原エリアが、結婚式場どうしで連携できる理由。かながわ西結婚推進協議会の闘い方 【#ミライケッコンシキ Vol.11】
新型コロナウイルス感染拡大により、世の中が大きく変わりつつあります。個人の価値観が変化し、それに伴ってさまざまなサービスがアップデートされるなか、これからウエディング業界にも変化が生まれていくことは想像に難くありません。
では、未来の結婚式はどうなっていくのでしょうか。シリーズ「#ミライケッコンシキ」では、「ミライの結婚式のために、イマ私たちができること」をテーマに、ウエディング業界に携わる方々にオンラインで取材しています。ミライの結婚式、一緒に考えてみませんか?
今回取り上げるのは、箱根・小田原エリアの結婚式場が加盟している、一般社団法人かながわ西結婚推進協議会です。新型コロナウイルス対策のために式場どうしの連携が注目される今、以前から式場ごとの「点」ではなく「面」として発信していた神奈川県西部では、どのような取り組みが生まれているのでしょうか。
かながわ西結婚推進協議会に加盟しているヒルトン小田原リゾート&スパのウエディングプランナーであり、協議会のメンバーとしても活動されている浜田友里菜さんに、協議会の活動についてお話をうかがいました。
(※ このインタビューは、2020年7月27日にオンラインにて実施しています)
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■ プロフィール
一般社団法人かながわ西結婚推進協議会
「結婚」を通じて神奈川県西部の箱根・小田原エリアに寄与することを目的に、結婚式場を持つ企業が2018年に設立した。任意団体として2005年に発足された「箱根・小田原ブライダル協議会」が前身。現在は結婚式場とホテル、レストランを含めた10の企業が加盟し、合同フェアの企画やPRなどをしている。
かながわ西結婚推進協議会に加盟している、神奈川県小田原市のホテル。宿泊の他に宴会とウエディング、温泉・スパ、レジャー施設でのアクティビティを提供している。
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地理的なハンデを乗り越えるために発足した協議会
── かながわ西結婚推進協議会(以下、協議会)では、どのような活動をされていますか?
(かながわ西結婚推進協議会 公式サイトより)
この協議会は、箱根・小田原で結婚式場を持つホテルやレストラン、ゲストハウスなど、10の企業が集まって立ち上げたものです。各社の支配人が月に一度集まって結婚式に関する情報を共有し、合同でこのエリアを知っていただくための活動をしています。
たとえば遠方からいらっしゃるご家族向けのプランを考えたり、バイクを愛するカップル向けの結婚式をプレゼントする企画を実施したり。箱根・小田原は東京都心や横浜から1時間程で来られて、宿泊観光を含めた1泊2日のウエディングにお使いいただいているので、エリアの特性を活かした企画と発信に注力しています。
── 協議会が会社の枠組みを超える形で積極的に活動できるのは、どのような理由があるのでしょうか。
一つの理由は、地理的な条件です。箱根山は今も活動を続けている火山で、2015年には大涌谷で水蒸気噴火が発生しました。台風によって、箱根登山鉄道の線路が壊れたときもあったんです。
災害に負けずにこのエリアで頑張っていく意識を、支配人どうしで共有できていることが大きいと思います。加えて、箱根・小田原はウエディングの候補地として第一希望に挙がりにくい場所なんです。たとえば神奈川県内にお住まいの方なら、横浜や湘南が第一希望になるんですよね。
そのようなプラスとは言えない特性を持つエリアにおいて、点で動くよりも面で一緒に動いたほうが、各社にとっていい結果になる。その意識を共有できているから、会社どうしが手を取り合えているんだと思います。全国的に見ても、式場どうしの結束がかなり強いようです。
挙式できないカップルのために、箱根・小田原だけのフォトウエディング
── 新型コロナウイルスの感染拡大に際しても、早くから協議会のみなさんで連携されていたのでしょうか。
そうですね。まず3月から、協議会における毎月の定例会議を徐々にオンライン化していきました。今ではほぼ全員がZoomで参加しています。会議をオンライン化して、「今夜、こういうテーマで情報共有しない?」と頻繁に集まるようになりましたね。結婚式の実施が難しくなるなか、これまで以上に「エリアをどう盛り上げていくか」を頻繁に議論しています。
── お客様の対応にも、オンラインツールを導入されていますか。
協議会に所属している過半数の式場が、ご見学やお打ち合わせにオンラインツールを取り入れています。私たちヒルトン小田原でも、4月からZoomを使って本格的にオンライン相談会をスタートしました。当初はZoomに慣れていないスタッフが多かったので、プライベートでもヒルトンのメンバーでZoom飲み会を実施して、使用回数を重ねていきました。
最近では、会場のご見学からお打ち合わせまですべてオンラインでご案内できる程度には、オンラインツールに慣れてきています。試行錯誤しながら地道に練習しつつ、協議会で「実際に使ってみてこういうことがあった」と教えてもらえてありがたかったですね。
── 新型コロナウイルスの影響を受け、協議会全体で始めた取り組みはありますか。
「箱根&小田原のハッピーウエディングフォトプラン」を2020年5月からスタートしました。このエリアで思い出を残していただくために、協議会で考えた施策です。
特に4〜6月、やむを得ず結婚式をキャンセル・延期される新郎新婦が増え、私たちプランナーはお客様が悲しんでいらっしゃる場面に何度も向き合ってきました。そのようななか、お客様にどんな思い出をご提供できるかを協議会で考えたんです。
もともとフォトウエディング自体は施設ごとに用意していましたが、このコロナ禍において、協議会で新たなフォトスポットとして「箱根のぶらんこ」を用意しました。地元の木材を使用し、地元で植林されている方々が選んだ場所に設置しています。フォトスポットとして、エリアの知名度向上にもつながったら嬉しいです。
── 富士山と芦ノ湖を前にしたブランコの写真は、ここならではの魅力ですね。
おかげさまでキャンペーンはご好評いただいていて、首都圏だけでなく愛知県や福島県のお客様も含め、50組以上にお申し込みいただきました。
お申し込みの際に理由を書いていただいたら、結婚式を予定していたものの、コロナで延期した方がほとんど。特に多く見られた理由が、延期できたとしても遠方の家族が出席できるか分からないので、せめて写真を見せてあげたい、というものです。結婚式で悲しまれているお客様のお役に立てていたらいいなと思っています。
── 今後しばらくコロナが落ち着かない可能性があるなかで、フォトウエディングの需要がますます増えていきそうですね。
そう思います。フォトウエディングを打ち出した背景として、新型コロナウイルス感染症の影響に加えて、結婚式の多様化も大きな要因です。披露宴をしなくても挙式だけしてみよう、写真だけは残しておこう、というお客様に合わせ、箱根・小田原全体でさまざまな選択肢を発信していきたいと考えています。
式場どうしの連携が、エリアの知名度向上につながる
── 箱根・小田原は以前から式場どうしの連携を重視してきたからこそ、新型コロナウイルスの感染拡大に際してこれまで以上に結束を強められたのだな、と感じました。
そうですね、これまで横のつながりを重視してきたから今があると実感しています。協議会に所属しているどの企業も、エリアのために頑張りたい意識が強いですし、アイデアを思いついたら「やってみよう」と背中を押していただける環境なので、心強いですね。
もちろん式場どうし、ライバルであることは確かです。それでも、他のエリアではなく同じ箱根・小田原を選んでいただいて、エリアの認知度を向上させることが重要だと考えています。お客様が式場選びで悩んでいらしたら、箱根・小田原の他の式場をご提案するときもありますよ。
お客様が他社を選ばれたらもちろん悔しいですが、このエリアを選んでいただけて嬉しい気持ちのほうが大きいです。「もともと第一候補じゃなかったけれど、来てみたらすごくよかった」とエリアのファンになっていただけるように、これからも協議会で連携して動いていきたいですね。
── 今後に向けて、協議会で計画されていることはありますか?
これまでと同じような旅行や海外での挙式が難しくなるであろう今後、首都圏からマイクロツーリズムを楽しめる箱根・小田原エリアの価値を感じていただける機会になると考えています。
自然が豊かで開放感があるリゾート地として、ますます多くの方の目に留まるように発信していきたいですね。協議会としてリリースを計画している案が複数あるので、感染状況を見ながら、お客様に楽しんでいただけるように準備を進めたいと思います。
(取材・文:菊池百合子 / 写真:土田凌 / 企画編集:ウエディングパーク)