一生ものだからこそ、日常に馴染むことを大切に。大阪にあるブライダルリング店が11年間選ばれてきた理由

一生ものだからこそ、日常に馴染むことを大切に。大阪にあるブライダルリング店が11年間選ばれてきた理由

「ニーズに合わせる」のか、はたまた「ブランドらしさを貫く」のか──。

結婚を選ぶ人口が年々減少し、岐路に立たされているブライダル業界。結婚式を挙げる人の数も減っていく中で、ゲストと一緒に過ごす時間を大切にする挙式スタイルが増えるなど、多様なニーズに合わせた選択肢が今求められています。

一方で、日々変わりゆくトレンドを追うことが、ブランドの良さや原点を見失ってしまう原因になることも。

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オーダーメイドのブライダルリングブランド「mina.jewelry(ミナジュエリー)」は、現在創業11年目。最近ではInstagramをきっかけに来店するお客様が増えるなど、時代の変化に合った提案を続けているように見えます。

お客様と年齢が近いほうが感覚的に分かり合えるのではないか、との考えから、スタッフのほとんどが20代。幅広い世代に支持されるシンプルさと遊び心のバランスが特徴です。

ニーズに合わせた選択肢を多数用意しながらも、「ブランドらしさ」を守り育てられる理由。そこには流行を追うことよりも大切にしてきた、mina.jewelryの原点がありました。

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▼mina.jewelry(ミナジュエリー)

2008年に指輪作家である矢野賢二さんがスタートしたブライダルリング専門店。2014年に法人化し、株式会社encochi(エンコチ)の一ブランドとして展開。大阪市西区に本店がある。Instagram

▼プロフィール
矢野賢二(やの・けんじ)
大阪府出身。株式会社encochi代表取締役社長。指輪作家。mina.jewelryの他、3店舗でマリッジリングを手作りできる「uchimari」、オーダーメイドのベビーリングを注文できる「nenenowa」を展開している。

岩﨑野花(いわさき・のか)
愛知県出身。mina.jewelry大阪本店店長・リングプランナー。2014年、法人化とタイミングを同じくして株式会社encochiに入社。現在はInstagramの撮影・運用も担当している。
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mina.jewelryのリングができるまで

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── mina.jewelryではどのように指輪を作っていくのでしょうか?

岩﨑:ヒアリングからお渡しまで、専任のスタッフが担当します。流れとしては、最初のヒアリングでカタチや断面、色といった要素ごとにお好みのデザインを決定。その後シルバー製の「仮リング」をお渡しし、日常生活の中で指輪のつけ心地を試していただきます。気になる点があれば何度でも仮リングを作り直し、納得いただいてから本番のリング制作に入るので、通して4ヶ月から6ヶ月ほどお時間をいただくことが多いですね。

── 選べる幅が広い分、デザイン決めが難しそうですね。

岩﨑:そうですね。完全に一から作るオーダーメイドではないのですが、組み合わせ次第で数えきれないほどのバリエーションがあります。その中から初回のヒアリングでデザインを決めるので、私たちスタッフの引き出しが勝負。お客様のペースで選んでいただけるように、完全予約制にしています。「これがお好きなら、あのデザインもいいかも」と考えながらご提案していくのですが、指輪を作る過程をお客様とご一緒できて楽しいです。

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もっと向き合いたくて、ブライダルリングに絞った

── 矢野さんはなぜmina.jewelryを立ち上げようと思われたんですか?

矢野:もともとは、個人で作った指輪をお店に置いてもらって販売する作家活動をしていたんです。このスタイルの場合、一定期間中はずっと同じ商品を作り続けるので流れ作業になってしまいがち。新しい商品を販売したくても、制作に追われているとアイデアが思い浮かびにくくて本末転倒なんですよね。しかも自分が店舗にいないので、お客様の顔が見えない。どうしても消耗している感覚がありました。

そういう毎日の中で、一人のお客様にもっと向き合いたいと思うようになって。ブライダルリングなら、時間をかけて一つ一つの指輪の制作に向き合える。お客様と直接お話して毎回違う指輪を作るから、いつも試行錯誤できる。おもしろそうだなと思って、オーダーメイドのブライダルリング専門店を一人で始めました。

── 仮リングの仕組みも、立ち上げ当初から続けていらっしゃるのでしょうか。

矢野:そうですね。一般的にオーダーメイドの指輪ってデザイン画をお客様にお見せして、そのままリング制作に入ることがほとんど。でも僕自身あまり指輪をつけないですし、結婚指輪が人生で初めてつける指輪だという方もいます。それなのに絵を見て「つけ心地を想像してください」って言われても、わからないですよね。

お店ではぴったり合っていても、購入して家に帰った後に違和感に気づいたらショックじゃないですか。お客様の人生と一緒に歩んでいく指輪だからこそ、日常に馴染むことを大切にしたい。あとは僕がデザイン画を描くのが苦手だから、実物を作ってお見せしたほうが早いんですよね(笑)。

変化させることが、ブランドらしさにつながった


── 2008年にお店をオープンされてから11年が経とうとしていますが、どのような方が多くいらっしゃるのでしょうか。

矢野:大阪本店は雑居ビルの3階にあって、通りから見ても指輪屋だとわからないんです。むしろ王道のブライダルショップとは正反対のような店構え。そんな店舗だからか、特にオープンした頃はキラキラしたブランドショップに敷居の高さを感じている方が多かったですね。個人に指輪作りを依頼するケースが今より少なかったので、手作りのものが好きな方もいらしていました。

この11年でお客様がガラリと変わったというよりは、かなり広がった印象です。開店当初からずっと、シンプルさの中に少し遊び心やおもしろさを求めている方が多くいらしていると思います。

岩﨑:例えば刻印もお客様の手描きをデータにして指輪に入れられるので、見た目はシンプルでもこだわれる点がお客様のご要望に合うみたいです。あとは好きなブランドが思い浮かばないとか、仮リングを試せる時間があるのでゆっくり考えたいとか、いらっしゃる理由はさまざまですね。

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── 丸と真四角の間の形「マルシカク」やスマイルの刻印はなかなか見かけなくて、mina.jewelryらしさを感じます。

矢野:実はどちらもお客様のリクエストから誕生したんですよ。丸と真四角の2種類しか用意していなかった頃に「中間の形ってできないの?」って聞かれて。職人として「できない」とは言えないですから(笑)。実際に作ってみたら指の形に合っているし、デザインのパターンも増やせる。何より独特の形だからか需要があって、選ぶ方が増えていきました。今では人気なデザインの一つです。

岩﨑:スマイルの刻印も、お客様からのリクエストでお入れしたのが始まりです。私にとっても斬新だったのでInstagramに載せてみたら、「同じものが欲しいです」とおっしゃるお客様がたくさんいらして。「思ったよりも自分にはこだわりがないかも」だとか「たくさんのパターンを見ていたら、結局シンプルなデザインになりそう」と思う方々が、ワンポイントとして刻印を入れるケースが多いですね。

── お話をうかがっていると、無理に時代に合わせようとしたり「mina.jewelryらしさ」に固執したりするよりも、目の前のお客様に向き合って柔軟に対応されているように感じます。

矢野:僕は、変わることがマイナスなことではないと思っていて。変化させない大切な部分もあるのですが、僕自身が何もかもスタート地点の形を守りたいタイプではないんです。その時々で一番おもしろそうなことを追求して、スタッフと一緒に模索するほうが楽しい。

岩﨑:確かに、時代の変化やトレンドはあまり意識していないですね。むしろ、結婚に関する流行もお客様から教えていただくことが多いです。結婚式のコンセプトを決めるとか、挙式しないから指輪にはこだわるとか。インターネットで調べることもできるのですが、ここにいらっしゃるお客様から直接お話を聞くことを大切にしたいなと思っています。

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お客様と一緒に選択肢を考え続ける

── Instagramに「“選ぶ”のではなく“考える”」というフレーズがありましたが、時に新しい選択肢を作りながらお客様と一緒に考えてきたことが、そのままブランドらしさにつながっているんですね。

矢野:どうしてもブライダル業界ってしきたりが強くて、変化をおこしにくかったんですよね。結果、一つの「正解」が当たり前になっている現状に僕は疑問を抱いていて。指輪であれば、オーダーメイドも手作りもできる。既製品を否定したいわけではないんです。他の選択肢も知った上でお客様が考えて、自分に合う道を決められればいい。そのお手伝いをしていきたいと考えています。

岩﨑:例えば、ご夫婦で違う色・デザインを選ばれることも多いんです。肌の色によって似合う色も違いますし、好みが異なることもあるので、7種類の色の中でどちらかの好みに無理に寄せるなら別々でもいいと思いますよ、とお伝えしています。2本セットを印象づけたかったら、一部だけ交換して色を入れる、同じ色をワンポイントで入れることもできるので、お二人それぞれが心から納得できる選択肢を一緒に考えたいですね。

矢野:一生身に着けるものだからこそ、今見えている選択肢の中からなんとなく選ぶんじゃなくて、お二人で考えること自体を楽しんでいただければいいなと。僕たちとしても、お客様と一緒に新しい選択肢を考えていけることがおもしろいなと思っています。

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(取材・文:菊池百合子 / 写真:伊藤メイ子 / 企画編集:ウエディングパーク)


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