費用の透明化から、安心して挙式できる社会へ。新サービス「mieruupark」から拓く結婚式の未来【わたしたちの「デザイン経営STORY」 #3】

費用の透明化から、安心して挙式できる社会へ。新サービス「mieruupark」から拓く結婚式の未来【わたしたちの「デザイン経営STORY」 #3】

デザイン経営とは、「デザインの力を、ブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法」のこと(特許庁)。

わたしたちウエディングパークは、結婚するカップル、ウエディング業界、そして“社会の視点”を全社員が持ちながら、デザインの発想を取り入れて経営理念とビジョンを実現していくために、 2021年10月からデザイン経営を推進しています。

デザイン経営に挑戦する企業や人を取材する本シリーズ、今回はウエディングパークが2024年にリリースしたサービス「mieruupark(ミエルーパーク ※旧 mieruu)」に着目します。mieruuparkは、結婚式場が提供する正確なデータをもとに、式場を見学する前に、カップルが結婚式にかかる費用をシミュレーションできるサービスです。

サービスの背景にある課題は、「結婚式費用の不透明さ」。挙式したカップルから「結婚式には満足しているが、費用の納得度が低い」といった声が上がっている現状を踏まえ、mieruuparkではこれまでオープンになっていなかった実際の費用データを可視化しています。

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2024年4月からベータ版の運用を始めたところ、サービスを利用した8割前後の人が「費用感や金額調整のポイントがつかめた」「式場への信頼度が上がった」と回答するなど、高い評価を得ました。

このプロジェクトを推進してきた一人が、松尾美緒さんです。2021年にウエディングパークに新卒で入社したZ世代である松尾さんは、「カップルが安心して挙式できる社会にしたい」との思いで、mieruuparkの責任者を務めています。

今回は松尾さんに、mieruuparkによって解決したい課題と、その先に思い描く結婚式のあり方について聞きました。


■ プロフィール

株式会社ウエディングパーク 松尾 美緒

2021年、ウエディングパークに新卒入社。2022年に新しくリリースした、先輩カップルの結婚式の様子をショート動画で見られる「ムビレポ」の立ち上げを担当。2024年には責任者として、結婚式費用のリアルなシミュレーションができる「mieruupark」をリリース。同年、+Creation本部 本部長に就任。

結婚式の費用に関する正確な情報を得られる新サービス

── まずは「mieruupark(ミエルーパーク)」について、どのようなサービスなのか教えてください。

mieruuparkは、カップルが式場見学前に自ら結婚式の費用をシミュレーションできるサービスです。式場見学の前に費用の内訳や見積もりの仕組みをあらかじめ確認しておくことで、見学の際にウエディングプランナーと具体的な相談がしやすくなります。

結婚式の費用を構成する項目は、挙式の日時から招待する人数、食事や装花など多岐にわたり、それぞれの項目で何を選ぶのかによって、費用が変動する仕組みです。mieruuparkでは式場が提供するデータを使用しており、何を選ぶとどのように値段が変わるのか、自分で操作しながら正しい情報を得ることができます。

▲ 式場が提供するデータを元に、消費者が自分で項目を選びながら結婚式の費用をシミュレーションできるWebサービスは、mieruuparkが業界初(2024年11月時点 ウエディングパーク調べ)

── mieruupark開発する際に工夫したポイントは何でしょうか。

ポイントの一つが、結婚式の費用について分かりやすく伝えるデザインです。カップルにとって費用の話は、結婚式の準備における非常に大切なトピックであり、現実的な側面でもあります。いざ費用に向き合ったときに数字ばかり並んだ画面を見ても、具体的な費用をイメージしにくいものです。

ですからmieruuparkでは、カップルにとって親しみやすい印象になるよう、温かさを感じられる表現を選びました。例えば結婚式をイメージしたイラストを随所に入れたり、過去の挙式データを確認する画面で「みんなはいくらかかってる?」とあえてカジュアルな言葉を使用したりしています。

▲ 式場における過去の費用データを取り込んでいるため、その式場で結婚式を挙げたカップルのうち、どの程度の割合の人がどのような選択をし、総額はいくらになったのかを確認できる

── mieruuparkを開発した背景を教えてください。

結婚式について知っている情報の差がカップルと式場の間で非常に大きいことで、カップルにとって結婚式の費用が不明瞭に感じるのではないか、と考えているからです。

そして費用の仕組みが見えづらい結果、不安につながってしまいます。実際に「結婚式の費用に関する不安」についてアンケートしたところ、回答者の約8割が「不安がある」と回答しました。

── 金額が大きいので、なおさら不安に感じますよね。

この現状に対して、費用への不安を払拭することを目的に掲げたのが、mieruuparkです。消費者にとって費用の大まかな想定ができることで、費用にまつわる「想定外」を減らすことを目的にしました。

事前に結婚式費用の「感覚」を知ることによって、ブライダルフェア当日にプランナーの方と、費用についてのより具体的な質問や相談ができるようになると考えています。費用の透明化を目指すことで、誰もが安心して結婚式を挙げられる社会を目指したサービスです。    

▲ 2024年に実施した、結婚式準備における費用への不安に関する調査

結婚式を未来に残していくために、今解決すべき課題

── mieruuparkの開発を決めた背景には、どのような課題意識があったのでしょうか。

ウエディングパークでは、2021年10月からデザイン経営を推進しています。デザイン経営における特徴の一つが、ユーザー中心のアプローチです。ユーザーの潜在的なニーズを発見し、そのニーズに基づいた製品やサービスを開発します。

ユーザーの視点から当社が取り組むべき課題だと考えていたのが、「結婚式費用の不透明さ」です。挙式したカップルから「結婚式には満足しているが、費用はこんなに上がると思っていなかった」「友人に結婚を報告した際に、結婚式の費用について気を付けたほうがいいポイントを共有された」といった声を聞き、費用への不安が幸せな結婚式の足かせとなっている状況に、課題意識を持っていました。

── プロジェクトが動き出したきっかけはありましたか?

mieruuparkは、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)とウエディングパークの共創プロジェクトです。T&Gから当社に「費用の不透明さを一緒に解決したい」とお声がけくださり、すぐに二社で取り組むことが決まりました。

── 松尾さんがこのプロジェクトに入ったのは、どのような経緯だったのでしょうか。

ウエディングパークには自ら手を挙げる文化があるので、「ぜひプロジェクトに入れてほしい」と社長に直談判して、メンバーに入れていただきました。そして本格的に開発に入るタイミングで、プロジェクトの責任者になった経緯です。

▲ 株式会社ウエディングパーク +Creation本部 本部長/mieruupark事業責任者 松尾美緒さん

── この課題に強い思いを持っていたんですね。

私自身、2023年に挙式したことで、大切な人が一堂に会する結婚式の素晴らしさを経験しました。現在は挙式しないカップルが増えていますが、結婚式を文化として未来につないでいくべきだと私は考えています。    

だからこそ、費用の不透明さによって、幸せなイベントであるはずの結婚式をカップルが安心して挙げられない状況に、違和感を抱いてきました。カップルにとって費用の仕組みが分かりづらいために、費用に対する不安がウエディング業界全体へのマイナスの感情につながり、ひいては負のイメージにまでつながってしまうのではないか、と懸念しています。

── どれだけ誠実な式場があっても、マイナスの印象は広がりやすいですよね。

逆に言えば、費用の不透明さを業界全体で解決すれば、カップルは不安を感じずに結婚式を挙げられる可能性が高まるはずです。結婚式のポジティブな思い出を周囲に伝えることができて、業界に対してもプラスの印象が広がると信じています。ユーザーに近い視点を持った一人の当事者として、この課題に積極的にアプローチしていきたいです。    

▲ 松尾さんの挙式での一場面

強みの異なる二社が、前例のないサービスを実現するまで

── 今回はT&Gとウエディングパークの共創プロジェクトとのことですが、「費用の不透明さ」を解決するためのアプローチはどのように決まったのでしょうか?

式場を決める前のカップルに、式場側から費用についてオープンにする取り組みは、前例がありません。しかもサービスを完成させれば終わりではなく、安心して挙式できるカップルを増やすことが目的ですから、二社でどのような未来を目指すのか、そのために何を実現するのか、時間をかけて議論しました。

── 前例のないプロジェクトに、一社ではなく二社で取り組む、大きなチャレンジだったんですね。

そうですね。二社が互いの視点や物事の進め方の違いを受け入れ、その違いを強みとして発揮しながら同じ目標に向かう「チーム」になるまでの過程が、最もチャレンジングだったように思います。

チームビルディングに時間を注いだことで、「このサービスはカップルにとって重要であり、社会に求められている」と確信を持った状態でリリースまで進められました。

── アプローチが決まってから、開発においてこだわった点は何でしょうか?

開発のスピードです。サービスをリリースしてみなければ、この方法で課題を解決できるかどうかは分かりません。ですから今回は、時間をかけて精度を高めることよりも、機能を絞って早く式場で使っていただくことを優先し、ベータ版を完成させました。

── 完成してから、どのように式場に導入したのでしょうか。

2024年4月から、T&Gの式場2か所で運用をスタートしています。プランナーからの案内があって初めてカップルにmieruuparkを知ってもらえるので、導入の際には当社の社長と私で式場を訪問し、サービスの意義や目指していることを式場の方々に直接お伝えしました。式場のみなさんから前向きな反応をいただけて、一緒にこの課題を解決していく仲間として心強く感じています。

費用の透明化が、式場への信頼につながることを証明

── 実際にカップルに使ってもらい、どのような反響がありましたか?

非常にポジティブな反響をいただいています。mieruuparkを使ったユーザーへのアンケート調査によると、回答者の約8割が「費用感や金額調整のポイントがつかめた」と回答し、「mieruuparkを他の人におすすめしたい」と答えた人は8割を超えました。

使ってくださった方々から「どのように費用が追加されるのかが理解できた」「雑誌やアプリでは見られない情報なのでありがたい」といった具体的なお声をいただけたことで、mieruuparkが役立っていることを確認できて、手応えを感じています。

▲ ベータ版を導入した式場でサービスを利用したユーザーへのアンケート結果

── カップルの課題を着実に解決できているんですね。意外な反応はありましたか?

アンケートの設問ではmieruuparkが結婚式準備の安心につながっているかを聞いていなかったのですが、フリーコメントの欄に「項目ごとに費用が見えるため、安心につながる」といった「安心」の言葉が多く集まりました。

── ベータ版の段階から、このプロジェクトの目的を達成していることがうかがえます。

さらに興味深いのが、mieruuparkが費用の不安を解消するだけでなく、式場へのポジティブな評価にもつながっている点です。

「mieruuparkを利用した後に式場への信頼度が上がった」と回答した人が8割以上にのぼり、「不透明だった部分を消費者に開示する取り組みをしていること自体に、好感が持てた」といった式場の姿勢を評価するコメントもありました。

実際に、T&Gの式場でmieruuparkを使用し、他の式場も見学した上でT&Gに戻ってご契約されるケースも出てきています。消費者が式場への信頼を重視していることに、私もあらためて気づくことができました。

▲ 利用の流れ。式場見学を予約したカップルにmieruuparkの案内メールを送っているが、見学当日に式場スタッフが案内することで、mieruuparkの利用に結びついているケースも多い

業界だけでなく社会にとっての課題を解決する共創の輪

── mieruuparkは今後どのように展開していきますか?

mieruuparkを全国の式場で使っていただき、課題の根本的な解決につなげることが、私たちの使命です。そのために、2024年11月8日にウエディングパークの商品として正式にリリースし、全国の結婚式場への販売をスタートしました。

そして今後は、業界から社会に広げていきたいと考えています。なぜなら私たちは、このテーマを業界だけの課題だと考えていないからです。

── どういうことでしょうか?

「業界課題」とは、例えば働き手の不足や業務効率化の必要性など、業界の視点から見て課題になっていることです。一方で、カップルの「最初の見積もりから想像以上に費用が上がってしまった」「この項目の内訳がわからない」といった声は、カップルの視点から見た「費用の不透明さ」の課題を表しています。

カップルが安心して結婚式を挙げられない状態であることは、カップルの属する「社会」にとっての課題と言えるでしょう。

── 費用の不透明さは、社会にとって解決すべきテーマである、ということですね。

だからこそ、業界や社会のみなさんとの共創が重要になってきますし、結婚式の未来をつくっていこうとする私たちの考え方にきっと共感していただけると考えています。

当社は2004年に、業界で初めてウエディング情報のクチコミサイトをスタートしました。当時は今のようにSNSもなく、クチコミサイトも一般的ではなかったため、無謀なチャレンジだと言われていましたが、20年経った今では式場のクチコミを公開することが業界のスタンダードになっています。

同じようにmieruuparkも新たなスタンダードにしていくために、「カップルにとって、社会にとって結婚式はどうあるべきか」を模索しながら結婚式の未来を拓く道のりを、ぜひみなさんとご一緒できたら嬉しい限りです。

(取材・文:菊池百合子 / 写真:伊藤メイ子 / 企画編集:ウエディングパーク


誰もが安心して結婚式を挙げられる社会の実現を目指し、結婚式費用を透明化するとともに、結婚式費用の超リアルなシミュレーションができるサービス 「mieruupark(ミエルーパーク)」の全国結婚式場への販売を11月8日に開始いたしました。

(プレスリリース)誰もが安心して結婚式を挙げられる社会へ  結婚式費用の超リアルなシミュレーションができるサービス「mieruupark(ミエルーパーク)」全国の結婚式場へ販売開始

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