デザインの力でカルチャー浸透とブランディングを促進する。【わたしたちの「デザイン経営STORY」 #2】

デザインの力でカルチャー浸透とブランディングを促進する。【わたしたちの「デザイン経営STORY」 #2】

デザイン経営とは「デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法」のこと(特許庁)。企業の競争力を強化する経営手法として注目される一方で、デザイン経営への切り替えは簡単でないこともまた事実です。

コロナ禍を経て社会が急速に変化し、未来の予測が困難な状況になった今。多様化する価値観に寄り添ったサービスを展開し続けるためには、どうすべきなのか。

結婚するおふたり、ウエディング業界、そのすべてを取り巻く“社会の視点”を全社員が持ちながら、デザインの発想を取り入れることで、経営理念とビジョンを実現していきたい。わたしたちウエディングパークはそんな思いで、 2021年10月に「ウエディングパーク的『デザイン経営』宣言」を発表し、デザイン経営を推進しています。

そしてウエディングパークと同じように、デザイン経営に挑戦する企業や人を取材するシリーズを始めました。

#1では、ウエディングパークがデザイン経営を導入してからの2年間を振り返りました。今回は、デザイン経営3年目に入ったウエディングパークの今をお届けします。

2023年9月30日と10月1日に開催された、日本最大級のデザインカンファレンス「Designship 2023」では、ブランドクリエイティブ本部の菊地亜希がパネルディスカッションに登壇し、ブランドを構築するためのデザインの活かし方についてお話しました。

さらにウエディングパークでは10月1日からデザイナーチームの体制を変更。デザイナーチームと広報チームを同じ「ブランドクリエイティブ本部」に配属し、よりデザイン経営を推進できる組織を目指します。

この記事では、前半はDesignshipのディスカッションから、ブランドとデザインに関する学びをレポートします。後半では菊地へのインタビューから、組織変更の先に目指す未来について聞きました。進み続けるウエディングパーク的デザイン経営のあゆみをお届けします。


■ プロフィール
株式会社ウエディングパーク 菊地 亜希
ブランドクリエイティブ本部 本部長。2014年ブランドマネージャーに就任。現在は全社のブランディング全般を統括するブランドクリエイティブ本部にて、戦略設計やチームマネジメントに従事。「Wedding Park 2100 ミライケッコンシキ構想」プロジェクト責任者。

言語化しにくいブランド「らしさ」の伝え方

Designship 2023にて、ウエディングパークは「ブランド構築におけるデザインの力」をテーマに掲げたパネルディスカッションに参加。ブランドをデザインでどのように表現し、どう実践していくかが議論されました。

登壇したのは、株式会社マネーフォワード CDOの伊藤セルジオ大輔さん、株式会社ゆめみ CCOの栄前田勝太郎さん、そしてウエディングパーク ブランドクリエイティブ本部 本部長の菊地亜希です。モデレーターは、株式会社MIMIGURI プロダクトデザイナーの田島佳穂さんが務められました。

▲ 左から、マネーフォワード 伊藤セルジオ大輔さん、ウエディングパーク 菊地亜希、ゆめみ 栄前田勝太郎さん、モデレーターのMIMIGURI 田島佳穂さんの4名でパネルディスカッション

前半は、社内のお話から。言語化しにくい会社の独自性や社風をブランドとして表現するためのプロセスが語られました。

3社の中で直近にブランドを刷新したのは、ゆめみのデザインチームです。2023年5月にデザインブランドの象徴として新たに掲げた「YUMEMI DESIGN CROSS OVER」に至るプロセスが語られました。

ゆめみ 栄前田「言語化って、本当に難しいなと思います。例えば『デザイン』の言葉一つ取り上げても、同じように『デザイン』と言っているけれど、少しずつ違うことを指しているんですよね。

だから僕たちは、言語だけに頼らないことにしました。一人ひとりのデザイナーに、これまで自分が手がけてきたデザインについて『絵』で表現してもらって、お互いに見せ合いながら『これはどういう絵なの?』と対話を重ねたんです」

1年かけてたどりついたスローガンは、これから目指そうとする状態ではなく、今の自分たちを表す言葉でした。

栄前田「かつて、外注してつくっていただいた言葉を掲げたこともあったのですが、メンバーが納得していない状態で進めて失敗したことがありました。今回は自分たちの内側から生まれてきた言葉を選んだことで、『ゆめみらしい』と思える言葉にたどりつけたと感じています」

ブランドを守り育てていくためのカルチャーデザイン

新たなデザインブランドを掲げたゆめみに対し、すでにある自社のブランドを守り育てていく方法を語ったのがウエディングパークとマネーフォワードです。

ウエディングパークがブランディングを促進させるキーワードとして掲げたのは、「カルチャー」。経営理念、ビジョン、そして行動規範を核にしながら、カルチャーの浸透を目指しています。

ウエディングパーク 菊地「カルチャーは、どういう価値観を大切にするのかという認識形成からできあがっていくので、カルチャーに関わるテーマで自分の言葉で話してもらう機会を意識的につくっています。

経営理念やビジョンを共通言語にしながら『これって本当に、ミッションのとおり“結婚をもっと幸せに”できているかな?』と議論して、チームの認識を合わせていくんです」

この「カルチャー」は、ブランディングにおいてどのように役立つのでしょうか。

菊地「経営理念やビジョンに共感して入社したデザイナーが、カルチャーを理解しながら仕事することで、ウエディングパークらしいデザインになっていくと考えています。カルチャー醸成を地道に続けることが、ブランド表現における揺らぎを小さくしてくれるんです」

一方のマネーフォワードも、ボトムアップでカルチャーづくりを全社で推進したことで、「Japan Branding Awards 2022」にてカルチャーブランディングが評価されました

育ててきたカルチャーを基盤にしつつ、2,000人近い社員で50以上のプロダクトを展開する軸として、ブランドのガイドラインを社内に共有しています。

マネーフォワード セルジオ「言語化できる部分を言語化しつつも、ガイドラインをあまり細かくしないようにしているんです。メンバーの仕事に制約をかけるのではなく、素直なブランド表現を後押しするガイドラインにしたいと考えています」

とはいえプロダクトごとのタッチポイントが膨大にある状態で、どのようにマネーフォワードらしさを調整しているのでしょうか。

セルジオ「ブランドに関わるデザイナーが丁寧に伴走して、一緒に考えながら少しずつ共通理解を醸成しています。

例えばマーケターの方は、短期間での成果を見ていることが多い。対してブランドデザインは、短期的な成果につながらないように見えるけれど、長い目で見たら『らしさ』が醸成され、結果的に指名購買が増えていく。こうやって時間軸を調整したコミュニケーションをすると、理解してもらえることが多いんです」

こうした対話の重要性には、他の登壇者も強く共感を示していました。

ウエディングパーク 菊地「何かを決めるときに少しでも『ブランド』に意識を向けてもらえるように、他の事業部の責任者とのコミュニケーションを増やしています」

ゆめみ 栄前田「ゆめみのブランドって、エンジニア視点とデザイナー視点では違う見え方だと思うんですよ。それでも『ゆめみらしさ』を感じてもらうために、意識的に社内をかき混ぜて、体験を共有しています」

部署や職域を超えて対話を重ね、カルチャーへの共通理解を築いていく。このプロセスが、ブランド構築においてデザインの力を発揮する鍵なのかもしれません。

マネーフォワード セルジオ「相手を知ることが、対話のきっかけになるんですよね。もし会社のブランドを高めたいのであれば、まずは周囲を見ていくことが重要だと思いました」

登壇者から会場の参加者とも関わっていきたい旨が語られ、40分間のパネルディスカッションが締めくくられました。

デザイナーが、より力を発揮しやすい組織体制を求めて

Designship 2023のパネルディスカッションで菊地がお話したように、ウエディングパークはカルチャー浸透を通じて、社内におけるブランドの共通理解を進めてきました。

そして理念やビジョンなど、ウエディングパークの思いをより社会に届きやすくし、ブランドをより強固にしていくために、2023年10月より、デザイナー組織を変更。広報チームとデザインチームが協働してブランド構築を推し進めていく体制になった背景について聞きました。


 ── 今回の組織変更とは、どのような変更なのでしょうか?

菊地:ブランドクリエイティブ本部はこれまで、広報チームのみが所属していました。そこにデザインチームが合流したのが、今回の大きな変更です。ブランドクリエイティブ本部の人数が3倍以上になりました。

── なぜ変更を決めたのでしょうか

菊地:デザイン経営を導入してから2年が経ち、「21世紀を代表するブライダル会社を創る」ビジョン実現に向けてスピードを上げていくための判断だったと聞いています。

ウエディングパークがビジョンを達成するためのキーがデザイン経営の推進です。そのために、デザイナーがより力を発揮できる組織体制を検討した結果、今回の変更に至りました。

▲ウエディングパークのデザイナーが手掛けた「まほうのブティック」。Wedding Park 2100「Parkになろう −結婚式は未来の新しいパブリックに−」展で初お披露目されたものが、Designship 2023で再現された

──  デザイナーと広報を合流させた背景を教えてください。

菊地:デザインと広報の仕事は、考え方が近いと感じています。短期的な利益よりも、ブランド資産を少しずつ積み重ねる発想で、社会や受け手の感情に寄り添い、長期的な視点を持ちながら思いを形にしていく点が、デザインにも広報にも共通していると思うんです。

ですから同じ部署にすることで、お互いに刺激し合えるのではと期待しています。クリエイティブを通して社会に思いを届けるチームとして、デザイナーと広報担当が対話を重ねながら、視点の数を増やしていきたいです。

全社員でデザイン経営を実践し、ビジョンの実現へ

──  今回の変更を経て、チームとしてどのように動いていきたいと考えていますか?

菊地:全社横断組織のデザイナー、広報担当者として、全体を俯瞰する役割を担い、ブランド全体の顧客体験を考える視点を持ちながら事業やサービスを育てていきたいです。全社横断組織であることにより、全社に対して発案したり横の連携を促したりしやすいので、一気通貫したブランドづくりを通じてデザイン経営の実践を進めていきたいです。

──  これまで2年にわたってデザイン経営を進めてきて、デザイン経営を取り入れる意義をどのように感じているでしょうか。

菊地:「デザイン経営」と掲げると、デザイナーだけに関係ある言葉だと思われることがあります。しかしそれは誤解です。デザイナーだけでなく全員がデザイン思考を持つことで、サービスがさらに良いものになり、使ってくださる方が増える。それによって選ばれ続ける会社になり、周りを見渡せば、業界も、ひいては社会もより良くなっていく。デザイン経営にはそんな可能性があることを、ウエディングパークが証明していけたらと考えています。

ここからは、より精度の高い実践を積み重ね、デザイン経営で「21世紀を代表するブライダル会社を創る」ビジョンを実現したいと考えています。

写真:関口佳代 / 取材企画編集:ウエディングパーク


■関連記事

ウエディングパーク的デザイン経営宣言からの2年間を振り返る。コロナ禍での決断から、成功事例を生み出すまで【わたしたちの「デザイン経営STORY」 #1】

新連載 「わたしたちの『デザイン経営STORY』」をスタートします。

関連記事