Wedding-UP CASE
2023.04.25
強みを活かしたブランディングで成約率70%超え。音羽山荘の自社集客の考え方【Wedding-UP CASE #012】
結婚するおふたりの式場検討時の情報収集源が多様化してきている今、ブライダル業界で注目されているキーワードの一つが「自社集客」です。予約機能のある中間サービスを通さずに、式場各社の公式サイトなどから直接予約してもらう集客方法を指します。
式場が伝えたいメッセージは公式サイトにこそ込められていて、その思いに共感した顧客とのベストマッチを叶えられるのが「自社集客」。
新型コロナがウエディング業界に大きく影響をもたらし、広告費を削減する傾向が強まっている今、顧客と式場双方にとって幸せなマッチング手法として「自社集客」はますます重要になっていくのではないでしょうか。
そこで結婚あした研究所では、自社集客に注力し成功している企業の事例(CASE)を紹介する新企画「Wedding-UP CASE 〜自社集客力を鍛える〜」を立ち上げました。各社がどのように自社集客に取り組み、その先に何を目指しているのかを聞いていきます。
今回取り上げるのは、大阪府箕面市にある明治の森 箕面国定公園に佇む料理旅館「音羽山荘」です。公式サイトをリニューアルし、自社集客を注力し始めたところ、成約率が全体の10%以上増加しただけでなく、宿泊やイベントなど、お客様とさまざまな接点も持てるようになったのだそうです。
お話をうかがったのは、広報・企画を担当する田村若菜さん。公式サイトリニューアルで重視したポイントや、公式サイト・LP作成ツール「Webつく」※1を活用した集客について聞いてみました。
■プロフィール
明治の森箕面 音羽山荘
大正時代の邸宅と、箕面国定公園内の恵まれた自然の中で、四季折々の景観を愉しめる料理旅館。「和やかなあたたかい宴」を一日一組限定でお迎えする。
公式サイト:https://sansou.otowa.ne.jp/
共感度の高いお客様を集客する。自社集客に踏み切ったきっかけ
ーーはじめに、自社集客に踏み切ったきっかけを教えてください。
音羽山荘は料理旅館ということもあり、全体の収益構造の最適化を図り(旅館部門、飲食部門、ブライダル部門、の収益の割合)当該部門においては、収益化を前提にしつつも、誠実にサービスを提供できる組数を定めて取り組んでおります。2016年に私が着任した当初は成約率が50%と、まだ伸びしろがあると感じておりました。結婚式実施組数が減少傾向にある中で、定めた組数を維持していくためには、成約率を改善させることが必要でした。
成約に至らなかった理由を分析すると「情報収集の段階でのイメージと、来館時のイメージに相違があった」ということが考えられました。来館前と後でお客様が抱くイメージに相違があったのは、表現がどれも包括的で、他社との違いが表されていないからだと。
当時は集客目的で複数の媒体に広告出稿をしていましたが、写真の位置や文章の長さなどのフォーマットが決まっているため、「音羽山荘らしさ」を表現するのが難しいと感じていました。音羽山荘の良さは、余白、余韻、余情といった目には見えないものと考えていたので、広告だけでは音羽山荘の思想まで共有しきれず、共感度の高いお客様を効率的に集客できていませんでした。
そこで、当社の世界観を伝えるためにも、自社の公式サイトをリニューアルすることで、来館時のイメージの齟齬をなくし、成約率アップを目指すことにしました。
また、「音羽山荘」の屋号名自体をもっと多くの方に知っていただくことが必要だとも考え、同時に広報活動にも力を入れ始めましたね。
ーー2023年4月現在、媒体への出稿は「Wedding Park」のみとのことですが、その理由についてもお聞かせください。
私たちが求めているものと「Wedding Park」の目指す思想が合致しているところに惹かれたからです。私たちは、マーケットの大小に関わらず本質的なメッセージを届けたいと考えている中で、常にカスタマー(カップル)目線でアドバイスをいただけることが、いつも参考になっています。
また、「Wedding Park」は当社の公式サイトに直接リンクを飛ばせる仕組みになっているので「世界観を伝えたい」という想いが実現できるのも、選んだポイントです。
「豊かさ」をテーマに公式サイトを改修。お客様の声をすぐに反映できるページ作り
ーー音羽山荘の公式サイトを拝見した際、晴れ晴れとした印象よりも、“湿度”を感じられる作りになっていると感じました。リニューアルの際に、何か意識されたことはあるのでしょうか。
音羽山荘の公式サイト
ブランディングは“余白の先豊かさ”をテーマにしています。自然に囲まれて、歴史的な建造物があるという「音羽山荘の豊かさ」、結婚までに乗り越えてきた不安や寂しさ、喜びなどさまざまな感情を得られるという「結婚式の豊かさ」…そういったあらゆる“豊かさ”を公式サイトで表現したいと思ったんです。
音羽山荘のウエディングは、1日1組の貸切スタイルです。そのため、式が終わってからも会場で余韻に浸っている方もいらっしゃいますし、久しぶりに会ったご親戚同士で連絡先を交換している方などもいらっしゃって、結婚式を通じて「ともに時間を刻む豊かさ」を肌で感じてきました。そんな“豊かさ”を表現することで音羽山荘らしさを伝えられると考えたのです。
リニューアルの際にはWebデザイナ―の方と話し合い、できるだけ公式サイトに長く滞在してもらうために、エッセイ調にして没入感を高め、音羽山荘が伝えたい余白が伝わるようなレイアウトにしたりと工夫をしました。
また、公式サイトに限らず、ブランディングの際には“音羽山荘に人格を持たせること”を意識しています。「音羽山荘ならどのような空間が好きだろう」「音羽山荘はどんなイベントが好きだろう」と考え、朗読会やコーヒーのイベント、音楽ライブを企画・開催し、ウエディングだけでない接点を増やすことができました。これからも、お客様と様々なコンテンツで共感し合い、長いお付き合いができたらいいなと思っています。
コーヒーイベントの様子
ライブの様子
ーー公式サイトをリニューアル後、どういった変化がありましたか?
私自身をはじめ、接客するスタッフと志向性の近い方が来館してくださるようになったことが印象的です。もちろん、これらは公式サイトに直接明示しているわけではないのですが、音羽山荘のスタッフが好きなものや世界観が公式サイト上にたくさん反映されているので、それを見て「いい」と感じてくださった方は、同じものを好きだと感じる傾向にあるのかなと思います。そのおかげで、お話もすごく盛り上がるんですよ。上記の効果は成約率向上に至った数ある要因の中のひとつと捉えています。
また、お客様へのアンケートも行っているのですが、初回のご来館時と結婚式終了時とで評価のブレがほとんどなくなったのも、大きな変化でした。これは、言い換えれば、お客様のご来館時にはすでに「音羽山荘らしさ」が伝わっていたと考えられます。自社集客を強化したことによって確度が高いお客様と出会え、最後までお付き合いできた成果だと思っています。
ーーちなみに公式サイトのウエディングのページは、公式サイト・LP作成ツール「Webつく」を活用してくださっているとのことですが、なぜ使おうと思ったのか、きっかけを教えてください。
音羽山荘のWebつく
リニューアル前には、当社の公式サイトにもウエディング専用のページを設置していたのですが、管理会社を介して更新しなければならなかったため、タイムラグが生じてしまうという課題がありました。なんとかしたいと考えていたときに、「Webつく」を紹介してもらい、導入することにしました。Webつくなら、管理会社を通さずとも自分たちですぐに情報を変更できますし、色やフォントも自由に変えられるので音羽山荘の世界観づくりに適していると思いました。
Webつくを導入してからは、写真だけでなく、コピーも新鮮なものにすぐ変えるようにしています。たとえば接客をする中で、お客様からいただいた「まるで旅先の結婚式」という言葉が印象的で、音羽山荘らしさも表現されていると感じ、すぐに公式サイトでも同様のメッセージを反映させました。写真に関しても、来館されたお客様に「SNSのどの写真がいいと思いましたか?」と伺い、すぐに反映させるようにしています。
個人的には、私は思い立ったらすぐに行動したいタイプなので、「今この公式サイトを変えたい!」と思ったときに、即時に反映できるスピード感や操作性の高さはWebつくの便利なポイントです。
成約率だけではなく、婚礼前日宿泊率が90%まで上昇
ーー自社集客に切り替えて、費用対効果はどのように変わりましたか?
デジタル広告へシフトし始めた2019年と比べ、2022年は広告宣伝費を年間33.7%削減でき、成約率は58.2%から70.2%とかなり伸びました。
複数媒体への出稿をやめた当初は、「広告宣伝費をかけなければ集客は見込めないのではないか」と不安になっていたのですが、先ほど述べたように、公式サイトを作りこみ世界観をしっかりと演出しブランディングをしていったことにより、来館数はあまり変わらなかったものの、成約率がぐんと上昇していきました。
自社集客によって削減できた費用は、お客様のために還元していこうと思っています。例えば、ずっと大切に持っていただけるオリジナルの結婚証明書をリニューアルし、お客様のお声を参考にしながら制作しました。集客手法や広告を見直すことで削減できた費用をお客様のための取り組みに充てることで、音羽山荘らしいより良い結婚式を提供できたらと思っています。
ーー費用対効果以外にも、何か変化はありましたか?
2019年は婚礼前日の宿泊率が31.6%だったのに対し、2022年には90%にまで増えました。
以前は利便性を理由に泊まってくださる方が多くいましたが、それだけではない理由を作りたいと考えて「結婚前、最後の家族旅行をする機会として宿泊されてはどうですか」と提案するようにしたんです。その結果、カップルでの宿泊だけでなく、家族水入らずの時間をつくるきっかけにすることができ、旅館としての収益も上昇しました。
数値的なデータは出ておりませんが、お子様のお食い初めを音羽山荘で行ったり、七五三で来てくださったりと、結婚式実施以降も遊びにきてくださる方もいます。今は、さまざまな思い出の場として音羽山荘を選んでいただけていることに喜びを感じています。
「弱みを強みに変えていく」音羽山荘が大切にする考え方
ーー最後に、音羽山荘が大切にしている「自社集客の考え方」を教えてください。
自社集客に限らない話ですが、「弱みを強みに変えていくこと」でしょうか。
ブランディングを考えるにあたって、多くの企業が自分たちの良さや弱みを分析すると思いますが、弱みを見つけたときに「弱みを強みに変換できないか」と考えるのが大切だと思っています。
弱みだと思っていたものが誰かにとっては利点になる可能性があります。ありのままを肯定的に捉え、共感しやすい表現に落とし込む。その意識を忘れずに、これからもお客様と向き合っていこうと思います。