マーケティング・集客
2019.08.28
年間1,000件以上の婚礼受注に成功。東京會舘とT&G提携に学ぶ、アドテクノロジーの活用法とは?
長らく紙媒体が婚礼会場と消費者の接点として有効だったウエディング業界も、次第にクチコミやSNSの情報を重視する選び方にシフトしてきています。
変化の渦中にいる業界で注目が集まっているのが、「アドテクノロジー」(以下、アドテク)。さまざまなデータを活用して最適なターゲットにインターネット広告を届け、広告配信効率の最大化を図る仕組みです。
ウエディング業界ではまだ導入事例が少ない中で、アドテクを有効活用して年間婚礼受注数1,000件以上を達成している式場があります。2019年1月、丸の内本舘のリニューアルオープンが話題になった「東京會舘」です。
東京會舘は広告をはじめとする新規顧客獲得を株式会社テイクアンドギヴ・ニーズに依頼し、互いに得意な領域で試行錯誤を続けた結果、2019年時点ですでに2021年の予約も入るほどの好調ぶり。大型結婚式に特化し、まもなく100周年を迎える東京會舘の「らしさ」が支持を集めています。
今回はこのロケットスタートの立役者である東京會舘取締役の星野昌宏さん、そして星野さんが信頼を寄せる株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの河野卓哉さんに、アドテクをはじめとする広告活用とその根幹となる価値観についてうかがいました。
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▼プロフィール
星野昌宏(ほしの・まさひろ)
株式会社東京會舘取締役。営業本部副本部長、戦略本部副部長を兼務。株式会社博報堂、株式会社ローランド・ベルガーなどのコンサルティングファームを経て、事業会社に転身。その後、ウエディング関連企業のCFOや企業買収ファンドのポートフォリオチームを経て、東京會舘に参画。2018年取締役に就任。
河野卓哉(こうの・たくや)
株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ運営統括本部事業推進部マネージャー。支配人の経験を経て、ウエディング事業本部広告宣伝室長に従事。その後海外ウエディング事業で広告を担当。現在は、東京會舘のリニューアルオープンから媒体やWeb広告による集客全般を担当。
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「結婚式」が人それぞれであることに立ち返ったスタート
── 東京會舘は2019年の丸の内本舘リニューアルオープンに合わせて、テイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)に新規顧客の獲得を全面的に委託されています。T&Gとの提携を決めた背景として、星野さんはどのような問題意識をお持ちだったのでしょうか。
星野さん(以下、星野):会場側が提示しているコンセプトをベースにしたプランニングが、ここ数年で特に意識されるようになったと思います。しかし業界全体がプランニングに意識を持っていった結果、お客さまの結婚式がイコール「プランナーの自己表現の場」になりすぎていないか。2017年に東京會舘に参画した際、私はここに課題意識を持ったんです。
特に東京會舘の場合は、列席者へのケアを重視されているお客さまが多くいらっしゃいます。人それぞれ結婚式の位置付けが異なりますから、「業界で注目される価値」ではなく「東京會舘をお好みになるお客さま目線の価値」を前提にしようと考えました。
── その問題意識を持たれた後、どのような経緯でT&Gと提携することにされたんですか?
星野:東京會舘らしさを最大公約数としてまとめるなら、最近のゲストハウスや専門式場のようなプランニングを重視して価値を太くする方法とは異なる基軸を打ち出すことになるだろう、と考えていました。
その頃T&Gの皆さんと議論した際、一からコンセプトを創造しようとするのではなく、東京會舘が持っているそもそもの資産や価値に自然とフォーカスが当たったんです。このプロセスを経たときに、T&Gとなら同じ未来を描けるだろうと直感してプロジェクトをご一緒することにしました。
価値を創るのではなく、すでにある価値に気づいていただく
向かって右が東京會舘の星野さん、左がT&Gの河野さん
── その後丸の内本舘ニューアルオープンに至るまでに、どのような戦略を検討されたのでしょうか。
星野:100周年を迎えようとしている東京會舘は、歴史と伝統に最たる特徴がある式場。だからまずは東京會舘が持っている価値を際立たせた上で、「そこに惹かれて来てくださるお客さまはどのような方々なのか?」「その方々にとって価値になるものは何なのか」を考えました。結果的に、「誰をお客さまにしたいのか?」を会場側が先に設定する最近のトレンドとは真逆の組み立て方になりましたね。
お客さまに対して価値をお伝えする方法として、提供している商品一つひとつに意味を付与していったんです。ペーパーアイテム一つとっても、単に見栄えが良いのではなく、初代本舘のレリーフを表現している。そうやって丁寧にメッセージを埋め込んでいく工程そのものが、自社の価値に根付いたコンセプトメイキングになっていったのだと思います。
河野さん(以下、河野):「ここがすごいんですよ」と押し付けるセールスをするよりも、お客さまがまだご存知でない東京會舘の価値を「こういう魅力があるんです」とお届けする。東京會舘の持っているものを第三者的な視点で発掘し、それを磨き上げてお伝えすることで、お客さまに価値に気づいていただく方法が合っていると思っています。
アドテクは顧客の日常に寄り添える有効な広告の手段
── 「気づき」の重視は、広告にはどのように反映されているのですか?
河野:セールスと同様に説明し過ぎる広告は東京會舘に合わないので、ビジュアルで訴求しています。ファッション雑誌のようにより美しく洗練させたビジュアル訴求の方法もあるのですが、そうではなく東京會舘の魅力を写真やコピーでそのまま表現しているだけです。
特別に演出したり着飾ったりせずにお伝えして、「なるほどね」と気づいていただく。他人から言われたことよりも自分で気づいたことのほうが記憶に残りますし、より魅力的に感じますから。
星野:河野さんに全面的にお任せできる理由は、「つなげること」にこだわっていらっしゃるからです。東京會舘がフィットしそうなお客さまが東京會舘を知り、会場に足を運ばれて、お申し込みされる。認知からアクションまで、それぞれのステップをつなげる必要があります。そのつなぎを広告で実現できるように、河野さんが数字と向き合いながら日々改善してくださっているんです。
── アドテクを導入されたのも、「気づき」が関係してくるのでしょうか?
河野:そうですね。アドテクは日常の中で認知していただくために有効なツールなので、「お客さまにとって良いタイミングでいらしてくださいね」とメッセージを込めながら定期的に「気づき」の機会をお届けしています。
結婚情報誌を手に取るタイミングって、結婚を本格的に意識した後ですよね。そこで認知してから、ご見学やお申し込みのアクションに移られるまでにかかる時間は人それぞれ。その間に温度が下がらないよう、接触できるポイントを常に用意しているイメージです。
── お客さまが媒体に接点を持つタイミングを意識されているんですね。
河野:はい、アドテクのみならず媒体ごとに役割を分担することを意識してきました。媒体によって認知からアクションまでのどの段階のお客さまがご覧になるのか、適切な価格帯、エリアが異なります。媒体の先にいらっしゃるそれぞれのお客さまに合ったメッセージをお届けする必要があるのです。
星野:前提として、お客さまのアクションを喚起すべきは私たち会場です。例えば自分でラーメン屋を経営していたとして、お客さまが来ないときに「チラシが悪い」と印刷屋に文句を言うでしょうか?文句を言ったところで困るのは自分ですから、駅前でチラシを配布したり近所の自治会に足を運んだりと、顧客とのアクションポイントを自分で開拓しようとするはずです。
同じように、会場が積極的に動いて試行錯誤を繰り返し、地道にやり続けることが大前提。無駄だと思われるものも含めて、他にもありとあらゆる方法を試しましたよ。アドテクも含めて自分たちなりに「なんとかいい成績を残せたらいいね」と考えながら試行錯誤してきたことが、たまたま結果に結びついただけなのです。
お客さまに一貫したメッセージを感じていただくために
── 丸の内本舘のリニューアルオープンでは年間受注数が1,000組を超えるなどの成功を収められています。今後は何を重視していこうとお考えでしょうか。
河野:広告での「気づき」を、会場にいらしたときに実感していただけることが重要です。お客さまに感じていただける価値をご提供し続けられるように努めていきたいと考えています。
星野:広告でお客さまに「気づき」をお届けできても会場でスタッフがお客さまに気づいていただくことを重視しなければ、広告と会場での接客に一貫性がなくなってしまいます。媒体や広告によってお客さまが気づかれた価値以上の体験を会場でお届けすることが、東京會舘の使命。お客さまとの全てのタッチポイントで東京會舘らしさを表現できるよう、今後も変化を続けていきたいと思います。
(取材・文:菊池百合子 / 写真:居藤 直人/ 企画編集:ウエディングパーク)
ウエディングパークでは2014年に業界で初めて、ブライダル業界向けにアレンジしたアドテク広告商品の販売を開始いたしました。ニーズの高まりを受け、2017年にアドテク本部を設立し、Google・Yahooとパートナー契約を結ぶなど、業界に特化した強みを生かしながら、最適かつ効果的なプロモーションをご提供しております。アドテクを活用した、少額から始められるWeb広告をご検討の際はお気軽にご相談くださいませ。