結婚
2020.03.13
「25歳で結婚してなかったら、僕は何者にもなってなかった」箕輪厚介と考える“20代の結婚”
記事提供:新R25
結婚に対する価値観が変わり始めている昨今。
20代の方は特に、「もう少し働いてから結婚したい」「今は仕事を頑張りたい」「そもそも真剣に考えたことがない」という人も多いのではないでしょうか?
そんな若者にもっと結婚について考えてもらおうと、日本最大級の結婚準備クチコミ情報サイトなどを展開するウエディングパークは「#結婚はこのままでいいのか」プロジェクトを今年の2月に開始しました。
今回は、ウエディングパークとのコラボ企画として、「20代の結婚」をテーマに、この方にお話を伺っていきます。
【箕輪厚介(みのわ・こうすけ)】2010年に双葉社に入社。ファッション雑誌の広告営業としてタイアップや商品開発、『ネオヒルズジャパン』の創刊などをおこなう。2015年幻冬舎に入社した後、NewsPicks Book編集長として『多動力』『お金2.0』『メモの魔力』『ハートドリブン』などの話題作を生み出しつづけている。最新の編集担当書籍は宇野常寛氏の『遅いインターネット』
25歳で結婚し26歳で父親になった、幻冬舎の編集者・箕輪厚介さん。その働きっぷりや自由奔放ぶりは2児の父親とは思えないほどですが…意外にも、現在の箕輪厚介をつくりあげた原点は20代での結婚にあったそうです。
対談のお相手は株式会社ウエディングパーク ブランドマネージャーの菊地亜希さん。自身も20代で結婚されたそう
「想いだけで結婚を決めた」という箕輪さん…
菊地亜希(以下、菊地):私たちは、「結婚を、もっと幸せにしよう。」という経営理念のもとサービスを展開しているのですが、ここ数年、結婚に対する考え方がどんどん変化していると感じているんです。そんな時代にこの理念を掲げるのであれば、幸せの考え方もアップデートしていくべきだという思いで、「#結婚はこのままでいいのか」というプロジェクトを始めました。
箕輪厚介(以下、箕輪):今って結婚する人、減ってるんですか?
菊地:国立社会保障・人口問題研究所の調査(2018年)によると、50歳の時点で一度も結婚したことのない「生涯未婚率」の割合が、男女ともに5%を切っていた1985年に対し、2020年は男性が26.7%、女性が17.5%になると予想されています。一方で、20代~30代の男女の74.9%の方が「結婚したい」という調査結果(※)もあります。ウエディングパークが大学生・短大生向けに実施した調査でも約半数の方が、25歳前後で結婚することにポジティブなイメージを持っているという結果が出ているんです。
(※)国立青少年教育振興機構による若者の結婚観・子育て観等に関する調査(平成27年12月)
箕輪:へえ~。ギャップがすごいんですね。
菊地:そうなんです。結婚について考えるきっかけが少ないからギャップが生まれてしまうのかなと思っていて。今回は新R25読者のみなさんが結婚について少しでも考えるきっかけになればいいなと思って、箕輪さんにお願いしました!
あれ、なんだか今日はいつもの勢いがないですが…?
箕輪:いや~…結婚がテーマだと、切れ味鋭くいけるか不安ですね。妻も読むわけだから(笑)。
菊地:できるだけ本音で話していただけるとうれしいです(笑)。箕輪さんは比較的早くにご結婚されたと伺ってます。
箕輪:僕は25歳のときかな? 社会人2年目で結婚してますね。
菊地:奥様とは学生時代からお付き合いされてたんですか?
箕輪:そうです。インドに旅行したときに現地で出会いました。そこから2~3年友達だったんですけどその後付き合って。当時は本当に結婚に対して何も考えてなかったから、想いだけでしたね。「細かいことは結婚してから考えよう」くらいに思ってて、突き進みました。
新R25編集部「いつもと違いますね…」、箕輪「あ〜むずかしい」
箕輪:でも言い訳みたいになってますけど、妻には本当に感謝しかないんですよ。これだけは今日伝えたかったんですけど、僕は20代で結婚してなかったらマジで何者にもなってなかったと思うんです。
「イチ編集者のままじゃ家族が終わると思った」活躍の原点は家族にあった
箕輪:ホリエモンの本をヒットさせたり、見城(徹。幻冬舎代表取締役社長)さんの本を編集したことがきっかけで幻冬舎に入社したり、いろんな転機をチャンスに変えられたのは、全部結婚してたからなんですよ。
菊地:なぜそう思うんですか?
箕輪:冷静に、 25歳って結婚すべき年齢でもなければ経済力もなくて、正直キャパオーバーだったんです。実際、結婚式とか出産の大きなイベントのたびに毎回貯金がゼロになって、親に借りたこともありました。僕の場合、共働きしていた時からマジでお金がきつかったから本当にどうしようもなかった。
箕輪:「ちゃんと生きなきゃ、稼がなきゃ」って、それなりに人生を右肩上がりにしないと家族がヤバイっていう単純な焦りがあったんです。だから、イチ編集者としてボーっと生きてたら終わると思って「好きな本作って自己満足じゃダメだ。目に見える結果を出さなきゃ」ってずっと考えていて。
菊地:箕輪さんにとって結婚は、編集者という枠に収まらないスケールで活躍するようになった原点なんですね。
箕輪:そう。独身だったら、自分が好きなサウナとかインドの本ばっかりつくってますよ。独身の僕が今の僕を見たら、「あいつマジで売れる本ばっかりつくって、ダセエ」って言ってると思います(笑)。
菊地:箕輪さんって、結婚されてなくても上昇志向があるタイプだと思っていたので少し意外です。
箕輪:まったくない。基本的に現状を肯定してるので、成長意欲がないんです(笑)。
結婚してなかったら、34歳にもなって大学生の延長みたいな毎日を過ごして…それでも「これはこれで俺の幸せだから」って、強がりじゃなく言えちゃうタイプ。
箕輪:でも家族がいると、自分の成長がないと都内に住めないし、今の時代は成立しないんです。前の会社でボーナスが減ったときも、ヤバイと思って必死に転職サイトに登録したんですけど、ずっと解除の仕方がわからなくて。今でも毎朝、「箕輪さんにオファーが届きました」って求人を紹介されるんですけど(笑)。
菊地:それは解除してください(笑)。箕輪さんがここまでこれたのは、“家族を持った”という責任が大きかったと。
箕輪:大きいですね。今ってどんどん、「自分のためには頑張りにくい世の中」になっていってるんですよ。「働き方改革」や「多様性」と言われて、自分を肯定しやすくなってる分、身の丈以上に頑張る理由が見つけづらい。
箕輪:そんななかで僕が“毎年新しいことやって大きくなろう”という野心を早いうちに持てたのは、月並みですけど家族ができて責任感を持てるようになったからです。
結婚という制限を経験することで、いざというタイミングで本気を出せる
菊地:ただ、結婚したいと思っていても、いろいろな理由で一歩踏み出せない人も多いと思うんですよね。
箕輪:決断の遅い人って、決断をゴールだと思ってるから遅いんですよ。“どの選択がうまくいくのか”を考えてずっと悩んじゃうんだけど、ぶっちゃけ、よっぽどあり得ない選択肢を選ばない限り、そんなに大差ない。むしろ決断自体はゴールじゃなくてスタートでしかないんですよね。結婚だって同じで、結婚自体はスタートであって、そこから家族が幸せになるにはどうしたらいいかに頭を使えばいいと思う。
菊地:ちなみに、「結婚するとやりたいことができなくなる」という意見についてはどう思いますか?
箕輪:本当にやりたければやると思うけど…あ、でも僕も最初のころは大変でした。普段から育児、家事を妻に任せっきりなので、出張が入っただけでも、「やべえ怒られる…」と思って怯えてたし、飲み会も憂鬱で。お酒飲みながらず~っとビクビクして、「もう帰るから」って机の下で何度も奥さんにLINEして…
「次第に怒られなくなる(無関心になる)」そうです
箕輪:ただ、足枷あったほうがやりたいことも大切にできると思うんですよ。自分が仕事のアクセルを踏んだときって、『ネオヒルズジャパン』(双葉社。与沢翼氏責任編集長のムック本)、『たった一人の熱狂』(双葉社。幻冬舎・見城徹氏の著書)の編集と、「NewsPicks Book」を立ち上げた3回なんですけど、ここで完全に仕事に振り切ることができたのは、制限がある状態を経験してたからだと思うんです。
菊地:結婚生活という“制限”のなかで、振り切ることができたと。
箕輪:修学旅行って、普通の旅行より楽しくて張り切っちゃうじゃないですか。それって、午前中に寺とかまわるつまんない時間があったり、夜更かししてると怒られるっていう制限があるからですよね。制限があって無限に仕事できない環境を味わったほうが、仕事に振り切らないといけないタイミングがきたときに本気で頑張れるんじゃないですかね。
奥さんに「うざい」と言われることで、自分がまとっている虚像がリセットされる
箕輪:って、エラそうに語ってますけど、今でも毎日「離婚したい」って言われてますから(笑)。『死ぬこと以外かすり傷』(マガジンハウス。箕輪さんの著書)の表紙を見た妻が一言、「吐き気がする」って小さな声で呟いたのは衝撃でしたね。
「ちゃんと売れてる本なんだよ?」
菊地:(笑)。私も20代で結婚していて、家族ってどんなときも味方でいてくれる存在だと思ってるんです。仮に、箕輪さんに地位がなくなったとしても、奥さんは絶対に変わらないですよね。
箕輪:たしかに。そこだけはあるかも。なんか困難があるときのほうが家族の大切さを実感する、家族なら“みんなで乗り越えよう”って一致団結しそうじゃないですか。
箕輪:僕がテレビ出て有名になればなるほど、まわりは喜ぶけど家族は全然喜ばないんですよね。いつも逆なんです。そのおかげで、自分が虚像にならない安心感はありますよね。
菊地:どういうことですか?
箕輪:オンラインサロンのメンバーに「箕輪さんスゴイ」「さすがっす」って言われたり、昔の友達に「ミノ最高だぜ!」とか持ち上げられたりしてるのって、“もろい城”でしかないんですよ。でも、いくら僕が自分に対して批評的な斜めの目線を持っていても、まわりからもてはやされてばかりだと、もろい評価であることをどこかで忘れちゃうんです。
箕輪:だけど家に帰って、毎日のように「本当にうざい」「頭おかしい」って言われると、外で「ヒット編集者」って肥大化した虚像をまとってる自分が一度リセットされるんですよ。
菊地:いろいろな家族のあり方がありますもんね。「周囲から期待されている自分」から「素の自分」にちゃんと戻ることは、幸せに生きていくために大切だと思います。素敵です。
“戦い続ける”ためには、“戦わない場所”が必要
箕輪:あと、これは僕の特殊な事例になっちゃうんですけど、もうひとつ家族っていいなと思った瞬間があるんです。
菊地:なんですか?
箕輪:今、自分がものすごいスピードで危ないレースを走ってる感覚があるんです。そこには前田(裕二。SHOWROOM代表)さんとか、三浦(崇宏。The Breakthrough Company GO代表)もいるかもしれないけど、みんないろんなリスクや覚悟を背負って、テレビに出たり、本を出したり必死に走り続けてる。これってある意味、変動幅がハンパない非現実的な世界なんですよね。
箕輪:でも、僕が炎上しようが、仕事で面倒くさいことに巻き込まれていようが、家に帰ると家族はそんなことまったく知らずに、みんなでそうめんを食べてたりするんです。そういう瞬間にふと、「別に、いつこの危ういレースを降りてもいいや」って安心できるんですよ。ここだけは何があっても変わらず現実だなって。現実を持っているからこそ、たとえ非現実的なレースに参加してもどこかで地に足がついてる感覚を持てるというか。
菊地:たしかに。外向きの自分ばかりだと疲れちゃいますもんね。
箕輪:まさに。別に家族じゃなくてもいいのかもしれないけど、“戦い続けなくていい場所”がないと疲れるし、走り続けられないと思うんです。僕が仕事で関わってる活躍し続けてる人たちの悩みって、だいたい家族のことなんですよ。みんな表では言わないけど、家族のプライオリティがかなり高い。
菊地:活躍していて、外だと気を遣われてしまう人って、家族が自分に気を遣わないことがラクなのかもしれないですね。
箕輪:めっちゃわかる。自分が気を遣われてない環境って居心地いいですからね。最近、子供が朝ごはん食べてるところに行くと「パパ来ないで!! 嫌だ!!」って言われるんです(笑)。子供って朝機嫌悪いじゃないですか。
菊地:微笑ましいエピソード(笑)。
新R25編集部員・宮内:ちょっと聞きたいのですが、結婚しなくても、自分の親とか兄弟といった家族っていますよね。そんなに違いがあるものなんでしょうか?
箕輪:全然違いますよ!
箕輪:親の前だと“ウソの自分”になるんですよね。
菊地:「心配かけちゃいけない」って思いますよね。
箕輪:僕は外に対しても全然気を遣わない言動をとりますけど、正直それはそれでプレーみたいなところもあって、完全に本音かと言われれば自分でもわからない。だから本当に素の素でいられるのは、奥さんや子供の前くらいですね。
簡単につながれる時代だからこそ、家族はもっと特別になる
菊地:ウエディングパークでは「#結婚はこのままでいいのか」というプロジェクトを行なっているのですが、最後に、箕輪さんが「#結婚はこのままでいいのか」と感じることがあればお伺いしたいです。
箕輪:僕自身は今日話したように、20代で結婚したことで仕事で成果を出せたと思ってるし、結果論だけど早く結婚することに賛成派なんです。
ただ、今って「結婚してるんだから○○」という制約に見えるものが多すぎて、踏み切れない要因になってると思うんです。だから、結婚がもっとライトなものになっていったらいいんじゃないですかね。
箕輪:あと僕、家族ブームがくると思ってるんですよ。
菊地:家族ブームですか?
箕輪:そう。今ってインターネットで誰とでもつながれるから、つながること自体にあまり価値がなくなってきてると思うんです。
今度はつながりの質が大事になってきて、血のつながりとか家族が、「めんどくさいけど本当に信用できる場所」として、より特別なものになる。
箕輪:つながりがインスタントになったからこそ、「家族って大事だよね」みたいな社会的空気が生まれる気がするんですよね。
菊地:なるほど…!
箕輪:僕もいろんなコミュニティにいるけど、家族だけは、ほかの場所とは別の論理で動いている唯一のコミュニティですもん。ここだけは時間も動きもゆっくりしていて、価値観も変わらずある。やっぱり、結婚っていいなと思いますよ。
メディア上で華々しく活躍する箕輪さん。家族よりも仕事、という意識で輝き続けているのかと思いきや、意外なほど、結婚や家族への想いが強いよう…。
「自分にとっての“現実”は家族」という本音を聞くことができました。
「仕事でも頑張りたいし、結婚って制約になりそうで面倒…」と感じているR25世代の方がいたら、ちょっとだけ、その先入観を取り払ってみてもいいかもしれません。
〈取材・文=宮内麻希(@haribo1126)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷(@hasehidephoto)〉