映画『ママをやめてもいいですか!?』の豪田トモ監督夫婦から学ぶ、「補い合う」ためのパートナーシップ

映画『ママをやめてもいいですか!?』の豪田トモ監督夫婦から学ぶ、「補い合う」ためのパートナーシップ


誰しも大なり小なり抱えている孤独。その傷を一人で引き受けずに補い合えるパートナーシップを築けたら、心の支えになるかもしれない──。

子育てに悩みながら奮闘するママ、パパたちが登場するドキュメンタリー映画『ママをやめてもいいですか!?』は、「誰かと手を組んで一緒に生きていくこと」に希望を見出したくなる作品だ。

2月29日(土)から「新宿シネマカリテ」より全国順次ロードショー

観ているうちに、いつの間にか映画が自分ごとになる『ママをやめてもいいですか!?』。この映画を撮った豪田トモさんとプロデューサーの牛山朋子さんに、映画の誕生秘話とお二人のパートナーシップについてうかがった。

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■ プロフィール
豪田 トモ(ごうだ とも)

映画監督。映画監督になる夢を叶えるべく、29歳でカナダへ。映画製作の修行を経て、2010年にドキュメンタリー映画『うまれる』、2014年に二作目『ずっと、いっしょ。』を公開。2020年2月29日から映画『ママをやめてもいいですか!?』(ナレーション: 大泉洋)を公開予定。小学生の女の子を育てるパパ。

牛山 朋子(うしやま ともこ)
映画プロデューサー。出版社でのファッション誌編集、インターネットショッピングモールでの企画・マーケティングを経て、2007年に映像の世界へ。公私ともにパートナーである豪田トモが監督したドキュメンタリー映画『うまれる』『ずっと、いっしょ。』、今作『ママをやめてもいいですか!?』のプロデュースを務める。

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「ママをやめてもいいですか」の叫びに宿る孤独

── 『ママをやめてもいいですか!?』(以下、『ママやめ』)がまもなく公開されますね。どのような映画なのでしょうか。

DSC_0996(1000).jpg監督の豪田トモさん(奥)とプロデューサーの牛山朋子さん(手前)。二人は公私ともにパートナーで、一女の子育て中。

豪田さん(以下、豪田):時には「ママをやめてもいいですか!?」と思いながら育児に奮闘するママたちを写した、ドキュメンタリー映画です。多くのママが育児をしながら抱えている「孤独」をテーマにしています。

── どんなきっかけでこのテーマを取り上げようと決めたんですか?

牛山さん(以下、牛山):現代のママが置かれている子育ての環境を知ったことがきっかけです。

豪田:僕らは10年以上、「命と家族」をテーマに取材・撮影を続けてきました。そのなかでここ数年、産後うつ、ワンオペ育児、孤独な子育て、といったキーワードをよく耳にするようになったんです。

取材を続けたところ、「ママをやめたい」と思った経験のあるママは、なんと77%もいました。分娩後の日常生活に支障が出る「産後うつ」についても、ママ・パパともに10人に1人に近い割合で発症している。それでも子育てを頑張っているママたちに対して自分は何をできるのかな、と考えるようになりました。

『ママやめ』をとおして、子育てで幸せを感じる人たち、笑顔の子どもたちを増やせたら嬉しいなと願っています。

2年半の制作期間が、大きな気づきをくれた

── 今回は制作に2年半かかったとのことですが、ご自分の変化はありましたか?

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豪田:二つあって、一つは「ママのことを分かっているようで分かっていなかった」と知りました。たくさんのママたちに聞いたパートナーシップにおける課題やストレスの話は、僕にとっても発見が多かったので、映画を観る方にも新しい気づきがあればいいなと思っています。

── もう一つはどんな変化があったのでしょうか。

豪田:自分の親との関係が子育てにいかに影響するのか、あらためて学びました。今回の映画には、親から十分に愛情表現をされずに育ってきたと感じているママに登場してもらっています。彼女たちは、自分の子どもにどう愛情表現していいか分からない。でも必死に子どもと向き合おうとしている。その先にママと子どもはどんな景色を見つけるのか、『ママやめ』をとおして届けられたらと思っています。


言葉と行動で伝え合うパートナーシップ

── 自分の親との関係を乗り越える上で、妻や夫とのパートナーシップが影響するのでしょうか?

豪田:そうですね。両親との関係に問題があった人は、自覚せずに相手を傷つける言動をとったり、ストレスを感じやすかったりするんです。

僕自身も30数年間にわたり親子関係が良くなかったのですが、彼女は僕を受け止めてくれました。おかげで、時間をかけて少しずつ傷を癒し、親との関係も乗り越えられたんです。いつも自然体でいてくれる彼女に救われたと思います。

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牛山:例えば私たちのように、親子関係に傷を抱える人とそうでない人で手を組んで、どう補い合えるのかを考えてみる解決策もあると思います。私が彼を補うだけでなく、私も彼に補ってもらっている部分がありますから。『ママやめ』にも孤独やすれ違いを乗り越えていく夫婦の関係を映しているように、二人の補い合い方を考えるだけで孤独の乗り越え方が変わっていくと思うんです。

── そんなお二人が、パートナーシップにおいて大切にしていることはありますか?

豪田:結婚当初は大切にすべきことがたくさんあると思っていたのですが、全てを完璧にできないと気づき、3つに絞りました。一緒にいること、愛情や感謝を表現すること、話をしっかり聞くことです。

牛山:「ありがとうね」と声をかけてくれたり、今日の出来事を聞いてもらったりするだけで救われる場面があると思います。あとは、よく花を買ってきてくれるよね。

豪田:そうそう。パートナーシップを維持するために、花はおすすめです。忘れそうなら、Googleカレンダーにアラート登録しておくといいと思います(笑)。

自主上映会の開催から、映画を行動につなげたい

── 今回の『ママやめ』をどう届けていきたいですか?

牛山:試写会では涙する人がたくさんいたり「感想を言いたくてしょうがない」エネルギーが伝わってきたり、私たちも反響に驚いています。

これからママ・パパになるかもしれない人からも感想をいただいているので、ママ以外の方にもぜひ観てほしいですね。

豪田:映画を観るだけでなくその後の行動につながったら嬉しいなと思い、僕らの映画では自主上映会を全国各地で開催いただいています。

DVDにすると、一クリックで購入できて、一人で観られますよね。でも自主上映会を開催するなら、場所を確保して日時を決めて、チラシもポスターも作る。これって一人じゃできなくて、自主上映会をきっかけに新たなつながりができるんですよ。

行動に移せば、仲間が増えて未来につながる。『ママやめ』の自主上映会をきっかけに、新たなつながりが生まれたら嬉しいです。


(取材・文:菊池百合子 / 写真:土田凌 / 企画編集:ウエディングパーク

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