フォトウエディング
2018.03.28
フォトウエディングは日本の観光資源のひとつになる――SNSの普及により変わっていく「結婚写真」の概念と、インバウンド需要とは
2017年度年間流行語大賞に選出された「インスタ映え」。わずか7年前に登場した「Instagram」だが、今や若者たちの消費購買行動に明らかな影響を与えており、ブライダル業界も例外ではない。今回は2015年1月にフォトウエディング、前撮りの検索サイト「Photorait(フォトレイト)」をスタートし、現在事業責任者を務める小林氏に、インスタ流行に伴う、フォトウエディング業界の変化と、これからの日本のフォトウエディングについて話を聞いた。
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▼プロフィール
(株)ウエディングパーク Photorait事業責任者
小林司忠(こばやし かずのり)
2008年、株式会社ウエディングパークに中途入社、営業本部に配属となり、関西エリアを中心に営業活動に従事。その後、西日本エリア責任者着任、2015年からPhotorait営業責任者、2017年よりPhotorait事業責任者に。
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SNSの普及により、変化したフォトウエディングの概念
ウエディングパークの制度である「N1(新規事業コンテスト)」がきっかけで、2015年にPhotorait事業の計画がスタートしたのですが、当時フォトウエディングという言葉は今よりも知られていませんでした。フォトウエディング、いわゆる「結婚式写真」は、結婚式をするカップルが記念に撮るものとして、式場からの提案で検討されることが多かったのですが、Photoraitを立ち上げたこの時期は、FacebookやInstagramなど、SNSの普及に伴い、フォトウエディングの見え方や考え方が少しずつ変わり始めていた時期でした。少し前まで結婚写真は「親や親族に見せるためのもの」でしたが、現在は「新郎新婦自身がこだわりを持ち、撮影を楽しみ、拡散するもの」という時代に変わりました。
結婚式を挙げない「ナシ婚層」であっても、65%~70%がフォトウエディングを実施(2014年Photorait調べ)しており、挙式・披露宴という形式での“結婚式”を挙げないという決断をした人たちにも、「フォトウエディング」という形で、結婚のタイミングでのセレモニーの素晴らしさを感じてもらったり、良い思い出を残してもらったりしたいと考えています。
また最近では、結婚をするタイミングでのフォトウエディングに限らず、結婚式を終えられてからの後撮りやバウリニューアル(夫婦が、結婚記念日や家族の節目・記念日などに改めてお互いへの愛を誓い合うというセレモニーのこと)といった形でフォトウエディングを実施されるケースも増えています。
ドレスのまま海へ入って撮影…フォトウエディングにも「インスタ映え」
これまでは、フォトウエディングといえば、フォトスタジオ内などで整列して撮影する、畏まったイメージが強かったと思いますが、SNSの普及により、フォトウエディングの見え方が変わり、よりカジュアルなものになりました。例えば、和装でジャンプをしたり、フォトプロップスを持って撮影したりなど、新郎新婦自身が楽しんで撮影をするようになったのも1つの特徴です。また、写真の構図や仕上がりにこだわりがある人も増えており、撮影時にInstagramのページを印刷してきて、撮影ポーズやシチュエーションのリクエストをされることが非常に多くなったという声を現場でよく聞きます。自分が理想とする撮影ができるのであれば、時間をかけたり、お金を使ったり、遠方に行ったりすることを厭わない、という行動の変化も出てきていますね。
人気のスタイルはカメラを意識せずに、自然体での撮影です。二人で向き合ったり、ストーリーを感じさせる撮影スタイルが多いですね。また場所は、ロケーションが重視されるようになり、外での撮影を希望される方が増えています。季節はやはり、桜や紅葉のシーズンが人気ですが、スタジオ撮影でも、まるで海外の街中にいるような雰囲気の中で撮影できるところも増えてきています。最新トレンドは、ドレスのまま海の中に入って撮影をする「スプラッシュ・ザ・ドレス」。2年前から流行り始めています。
ドレスのまま、海に入る「スプラッシュ・ザ・ドレス」(画像提供:DOR WEDDING)
春は桜の下で撮影するロケーションフォトが人気(画像提供:STUDIO AQUA 新宿店 (DECOLLTE &Company))
まるで海外の街中にいるような雰囲気の中で撮影ができる(画像提供:オレンジスタジオNAGOYA)
「古き良き日本でフォトウエディングを」。高まるインバウンド需要
訪日観光客の増加伴い、フォトウエディングの需要は今後も増加していくと考えられます。その背景の1つに、以前話題になった訪日観光客の「爆買い」という行動が「コト買い」に変化してきていることが挙げられます。また、これまでは団体のパッケージ旅行が主でしたが、現在では個人旅行が増えていますので、旅先での時間制限がなく、自由に動けるようにもなっています。日本の場所で、日本の衣装で、結婚写真を撮影する価値はこれからも高まっていくと感じています。
一方で、サービス提供側には、訪日観光客が日本のフォトウエディングの情報をキャッチアップできるメディアづくりや発信が求められます。
これまではフォトウエディングに興味を持ちつつも、撮影に関する情報が不足しており、検討を辞めてしまう方々がいました。現在は、メディアやSNSを通してキャッチアップできる情報が増えたことで、フォトウエディングの実施率も高まり、また、結婚式の前撮りの実施率も増えてきていると感じます。
言葉の問題や支払い方法など、解決していかなければいけないことも多くありますが、これから日本のフォトウエディングは、日本の観光資源のひとつとなっていくのではないでしょうか。