ダイヤモンドジュエリー選びを、もっと自分らしく。新たな選択肢を増やすBRILLIANCE+の挑戦【Your SUSTAINABILITY #3】

ダイヤモンドジュエリー選びを、もっと自分らしく。新たな選択肢を増やすBRILLIANCE+の挑戦【Your SUSTAINABILITY #3】

新型コロナウイルスの影響は、日常に「問い」をもたらしました。例えば購買行動。購買前にしっかり検討する傾向が強まるなか、重視されてきているのが「サステナビリティ」(持続可能性)です。

何を大切にしたいのか。未来に向けて、今踏み出せる一歩とは何なのか。この問いが、人々を変えつつあります。

当メディアを運営するウエディングパークは、「結婚を、もっと幸せにしよう。」を経営理念に掲げてきました。この理念を体現するために、誰もが自分の望む道を選び、幸せを目指せる世界を創っていくことが、私たちの使命です。そして、そのために今選びたい道こそが「サステナビリティ」だと考えました。

ウエディング業界から、未来につなげる幸せの選択肢を増やしたい。そんな思いで、サステナビリティに取り組む業界の方々を取材する連載「Your SUSTAINABILITY 未来につなげる、はじめの一歩」を始めます。一歩目の踏み出し方を、共に学びませんか。

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今回取材したのは、ダイヤモンドジュエリーを販売するブランド「BRILLIANCE+(ブリリアンス・プラス)」です。

BRILLIANCE+では、これまで天然のダイヤモンドのみを取り扱ってきましたが、2022年9月には海底から採掘する「海底ダイヤモンド(オーシャン・フロア・ダイヤモンド)」、2023年4月には人工の「ラボグロウンダイヤモンド」を新たに発売。これまでになかった、サステナブルな選択肢を提供しています。

なぜこのチャレンジに踏み切ったのか、その先にどのような未来を思い描くのか。BRILLIANCE+を運営する株式会社キューの代表取締役社長 三木芳夫さんにお話を伺いました。


■ プロフィール
BRILLIANCE+
株式会社キューが運営するダイヤモンドジュエリーのブランド。ダイヤモンドとリングを自由に組み合わせてオーダーメイドできる。2006年創業。2021年に、土屋鞄製造所の親会社である株式会社ハリズリーがキューをグループ会社化。公式サイト

必要なものを必要な数だけつくるビジネスモデル

── BRILLIANCE+の特徴を教えてください。

三木:完全受注生産のスタイルで、在庫を持たずにブランドを運営している点です。お客様にダイヤモンドとリングを選んでいただき、オーダーが入ってから製品づくりに入るビジネスモデルは、創業当初からブランドの土台になってきました。

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── ジュエリーショップであれば在庫を持つことがスタンダードに思えますが、なぜ在庫を持たないことが可能なのでしょうか?

中間業者を挟まないシステムを採用しているからです。ダイヤモンドは通常、販売までに多くの中間業者が関わるので、その分の手数料が重なっていきます。私たちはダイヤモンドジュエリーをもっと手軽に身につけていただくために、直接サプライヤーさんと取引して、適正価格で商品をお届けしてきました。

── ブランドの立ち上げ当初から、大量消費・大量廃棄ではないビジネスモデルを構築されていたんですね。

そうですね。ですから私が2021年に代表取締役社長に就任して、BRILLIANCE+が続けてきたことに合うメッセージを探したときに、おのずと「サステナビリティ」に行き着きました。

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▲ ダイヤモンドが販売されるまでの行程。BRILLIANCE+ではサプライヤーのデータを連携することで、世界中のダイヤモンドからお客様の注文に合うものを検索できる。

高品質でサステナブルな選択肢を、共に実現するパートナー

── 新たに発売された「海底ダイヤモンド(オーシャン・フロア・ダイヤモンド)」と「ラボグロウンダイヤモンド」には、キーワードとして「サステナビリティ」が含まれています。これまでの天然ダイヤモンドには、サステナビリティにおいてどのような課題があるのでしょうか。

三木:前提として、ダイヤモンドは地球上の限りある資源です。生産量はすでに減少に転じていて、ダイヤモンドを採掘できる鉱山が2050年頃にはほとんど閉山するとも言われています。いつかなくなってしまうものを採掘し続けるのは、そもそもサステナブルではないですよね。

さらに、採掘による環境破壊も指摘されてきました。ダイヤモンドを採掘するために山を削ると、地形は戻りません。時には削られた穴に汚水が溜まり、周囲の土地に影響が出るケースがあります。他にも、劣悪な労働環境や児童労働の問題を完全にクリアできている、とは言い難い状況です。

── 解決したい問題が山積みなんですね。

そうなんです。そして私たちのブランドは、ミッションとして「こころから語りたくなるジュエリーで、人生に輝きをプラスする」と掲げています。お客様が自ら語りたくなるジュエリーとは何なのかを追求したときに、それは「自分らしい価値観を象徴するジュエリー」なのではないかと考えました。

BRILLIANCE+で選べる婚約指輪は、ダイヤモンドとリングの組み合わせが700万通り以上あります。その中から選び取った1つは、お客様の価値観を表していると言えるのではないでしょうか。そんなお客様らしい選択を尊重し、多様な価値観を肯定することが、BRILLIANCE+の使命だと考えています。

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▲ 株式会社キュー 代表取締役社長 三木芳夫氏

── 特別な存在になるジュエリーを、どう選ぶか。確かにそこには、その人の人生が反映されそうです。

 だからこそ、さまざまな嗜好性をお持ちのお客様がいらっしゃるなかで、サステナブルな選択肢も提示できるブランドであるべきだと考えました。

 そこでサステナブルな素材を探して見つけたのが、海底で採掘される「海底ダイヤモンド(オーシャン・フロア・ダイヤモンド)」と、研究所で生成される「ラボグロウンダイヤモンド」の2種類。どちらもすでに流通している素材ですが、私たちが求めるクオリティとサステナビリティの両立を実現しているパートナーと出会えたことで、発売が実現しました。

── まず海底ダイヤモンド(オーシャン・フロア・ダイヤモンド)(以下、「海底ダイヤ」)について伺います。どのような点がサステナブルなのでしょうか?

海底ダイヤは、ダイヤモンドを含んだ地層が川に流れ、海底にたどりついたものです。海底での採掘は、鉱山での採掘よりも環境破壊が少ない点で注目を集めています。

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▲ 2022年9月に発売された「海底ダイヤモンド(オーシャン・フロア・ダイヤモンド)」のシリーズ。成分も輝きも、地上で採掘される天然ダイヤモンドと変わらない。

── 海で採掘できるダイヤモンドがあるとは知らなかったです。

海底での採掘は以前から行われてきて、天然ダイヤモンドの一部として流通しています。しかし今の仕組みでは、ダイヤモンドがいつどのようなルートで販売されたのか、追跡できないんです。採掘現場の状況や流通経路がわからなければ、環境破壊や労働環境の問題といった課題がクリアされたことになりません。

── その課題を解決できるパートナーが見つかったのでしょうか?

はい。海底ダイヤモンドを採掘している、イギリスのオーシャン・ダイヤモンド社との取引が実現しました。この会社は、海底ダイヤモンドの採掘権を政府の公認で購入し、ダイヤモンドがどのポイントで採掘されたのか、トレーサビリティ(追跡可能性)を証明できる仕組みを敷いています。

他にも、成人の専門ダイバーを雇い、海が穏やかな日にのみ出航する労働環境をはじめ、ここまでサステナビリティに対して取り組んでいる会社は他に見つからなかったので、取引することに迷いはありませんでした。

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▲ ダイバーを乗せたボート。海の環境に配慮し、小型船で出航する(オーシャン・ダイヤモンド社提供)

── 次に、ラボグロウンダイヤモンド(以下、「ラボグロウン」)についても教えてください。

ラボグロウンとは研究室で生成された人工ダイヤモンドのことで、成分も美しさも天然ダイヤモンドと変わりません。天然物よりも安定的に供給されるため、安価で購入できて、国外ではすでに広く流通しています。採掘による環境破壊が発生しないため、ぜひ取り扱いたいと思いました。

── 販売の実現までに難しかった点はありますか?

取引先の選定が難航しました。ラボグロウンは世界中にたくさんのサプライヤーがいて、良いものも悪いものも流通しています。BRILLIANCE+はこれまで品質にこだわってきたので、ラボグロウンの品質にも一切妥協しないために、素材を見極めることに時間がかかりました。

── 結果、アメリカのWDラボ・グロウン・ダイヤモンド社との取引を決定されたのはなぜでしょうか。

高品質であることと、サステナビリティに配慮した取り組みをしていることが理由です。通常のラボグロウンの生成には膨大な熱エネルギーを必要としますが、この会社は2020年に世界で初めてカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出実質ゼロ)、さらにはクライメートニュートラル(温室効果ガスの排出実質ゼロ)のラボグロウンダイヤモンドの生成に成功しています。あらゆる工程において環境負荷を減らした認証を取得している点が決め手になりました。

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▲ 2023年4月に発売された「ラボグロウンダイヤモンド」のシリーズ。石にとって理想的な環境で結晶化するラボグロウンは、透明度が高く不純物が少ない。

できあがった商品が、社内のモチベーションと共感を高めた

── 天然のダイヤモンドのみを取り扱ってきたBRILLIANCE+にとって、海底ダイヤとラボグロウンを発売することは大きな決定だったかと思います。社内からはどのような反響があったのでしょうか?

三木:驚いたのかなと思うのですが、実際どうでしたか?

広報・渡邉:そうですね、特にラボグロウンを販売することへの戸惑いがありました。宝石の仕事をしている私たちですら、成分や結晶構造が天然物と同じだとわかっていても「ラボグロウンって大丈夫かな?」と思ってしまうので、お客様に「偽物を売っている」と受け取られるのではないかと不安がありましたね。

── その懸念はどうやって乗り越えたのでしょうか。

広報・渡邉:実物に触れたことが大きかったです。ラボグロウンに対して懸念があったメンバーでも、サンプルを手に取ったことで、一気にポジティブな反応に変わりました。「ここまで良いものならラボグロウンを選ぶお客様もいらっしゃるだろうから、伝え方を工夫していこう」と社内のモチベーションが上がりましたね。

── 品質へのこだわりが、社内の意欲を高めることにつながったんですね。一方、お客様への伝え方については何を意識されましたか?

三木:海底ダイヤもラボグロウンも、お客様の手元に渡るまでのプロセスやストーリーに対して共感していただける発信を意識してきました。サステナビリティはその一部の要素であって、大々的に押し出そうとはしていません。

世代を超えるアイテムを購入するときに、自分が誰かに言いたくなるような選択をすることで、ダイヤモンドだけでなく自分の思いをも、次の世代につないでいける。オーシャンとラボグロウンは、その選択をより自分らしいものにする選択肢の一つである、と考えています。

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── 発売後、お客様の反響はいかがでしょうか。

想定どおりではありますが、発売当初は特に、ラボグロウンのデザインに惹かれても、最終的には天然のダイヤモンドを選ぶ方が多かった印象です。まずは選択肢を知っていただくことから始めて、少しずつブランドを育てていけたらと考えています。

ただ、最近変化が起きているんです。「このダイヤモンドがいい」と海底ダイヤやラボグロウンを指名されるお客様が少しずつ増えてきました。数あるジュエリーブランドのなかで、新しい取り組みをしているブランドとして指名していただけるようになってきたことは、BRILLIANCE+にとって大きな一歩だと考えています。

共感する人と手を取り合い、世の中をポジティブに変えていく

── サステナブルな取り組みをする意義について、どう考えているでしょうか。

三木:こうした取り組みがきっかけで、当社に共感してくださるお客様や、当社の事業によってポジティブな影響を受ける取引先の存在が可視化されてきました。それにより、働いているメンバーが自分の仕事に誇りを持てるんですよね。ここが特に、サステナビリティに取り組む意義を実感している点です。

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── 今後どのようなことにチャレンジしていきたいですか?

事業に落とし込んでいるわけではなく想像の段階なのですが、ライフステージの変化における大変さを緩和することに興味があります。最近だと、産後ケア施設のホテルの方にお話を聞きました。

今って、20代男性で一度も交際経験がない人の割合が約4割とも言われていますよね。結婚する人も挙式する人も減り、出生率も下がっている。その原因の一部に、お付き合い、結婚、出産、子育てに何かしらのストレスを感じている面もあると思うんです。

そのストレスを減らすことに取り組む企業と協力しながら、今ある負の部分を少しでも解消したいと考えています。

── ウエディング業界の枠を越えた協業が実現しそうですね。

そうですね。一社で全て手がけるのではなく、共感する人を集めてコンソーシアム(組合)のように動くための、足がかりになる取り組みをやりたいです。

「解決したいこと」に向かって共通した志を持てるのであれば、組織を越えて一緒に動けると思うんです。その協働によって志が可視化されて、共感の輪が広がる。そうやって少しでも世の中をおもしろくしながら、次の世代に対して「夢も希望もあるよ」と伝えられる社会人でありたいなと思います。

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(取材・ 文:菊池百合子 / 写真:関口 佳代/ 企画編集:ウエディングパーク

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