Your SUSTAINABILITY
2023.03.27
実現の鍵は「仲間づくり」。ノバレーゼがサステナビリティを掲げて目指す業界の姿【Your SUSTAINABILITY #1】
新型コロナウイルスの影響は、日常に「問い」をもたらしました。例えば購買行動。購買前にしっかり検討する傾向が強まるなか、重視されてきているのが「サステナビリティ」(持続可能性)です。
何を大切にしたいのか。未来に向けて、今踏み出せる一歩とは何なのか。この問いが、人々を変えつつあります。
当メディアを運営するウエディングパークは、「結婚を、もっと幸せにしよう。」を経営理念に掲げてきました。この理念を体現するために、誰もが自分の望む道を選び、幸せを目指せる世界を創っていくことが、私たちの使命です。そして、そのために今選びたい道こそが「サステナビリティ」だと考えました。
ウエディング業界から、未来につなげる幸せの選択肢を増やしたい。そんな思いで、サステナビリティに取り組む業界の方々を取材する連載「Your SUSTAINABILITY 未来につなげる、はじめの一歩」を始めます。一歩目の踏み出し方を、共に学びませんか。
今回取材したのは、株式会社ノバレーゼです。会社のホームページでは、事業紹介、会社概要に続いて「SUSTAINABILITY」の項目を置き、サステナビリティに取り組む姿勢を社内外に発信しています。
そんなノバレーゼは、サステナビリティになぜ注力し、どのように活動を実現しているのか。社内でサステナビリティの活動を企画・実現してきた人材開発部 前野徹志さん、財務経理部 岩井雄紀さんと、ノバレーゼの活動を発信する広報室の松井環さんにお話を伺いました。
■ プロフィール
株式会社ノバレーゼ
2000年創業。企業理念に「Rock your life 世の中に元気を与え続ける会社でありたい」を掲げ、婚礼プロデュース事業、レストラン事業、写真事業など、ウエディングに関わるさまざまな事業を手がける。 公式サイト
関わる全員が「オールウィン」になる活動を目指して
▲ 2023年3月現在、ホームページの一番上に「SUSTAINABILITY」の項目を並べている。
── サステナビリティに取り組む会社を調べるなかで、取り組みへの姿勢を明確に感じたのがノバレーゼでした。ホームページのトップに「SUSTAINABILITY」を掲げた背景を教えてください。
広報室 松井:ホームページにまとめたのは、2022年のことです。それ以前ですと、2008年からCSRに積極的に取り組んできています。これまでの取り組みを「サステナビリティ」の文脈で整理し直したことがきっかけで、まとめてご紹介できるページを作成しました。
── 「サステナビリティ」が注目される以前から、サステナビリティにつながる活動をされていたのですね。
人材開発部 前野:そうですね。当社は企業理念として「世の中に元気を与え続ける会社でありたい」、社訓として「人のために生きよ」と掲げ、行動に移すことを続けてきた会社です。その行動を発信するキーワードとして、以前はCSR、今はサステナビリティと、時代に合わせて変化させています。
ですので「サステナビリティの活動をしよう」と動いているのではなく、スタッフ、お客様、ステークホルダーの皆様に対して何ができるかを愚直に考えて行動してきたことが、結果的にサステナビリティの文脈でお伝えできている状態です。
株式会社ノバレーゼ 人材開発部 部長 前野徹志氏
── それらの活動の原点には、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
松井:始まりは、木を植えたことです。2008年に、当社が年間で結婚式をお手伝いしたカップルの数と同じ本数の杉を植樹しました。お客様に還元するだけでなく、世の中に還元できることはないかと考えた当時の広報担当が、森林伐採や温暖化の問題を踏まえて企画したんです。
しかし実際にやってみたところ、杉を植えに行ったスタッフでもあまりピンと来なかったと聞いています。事業とCSRの乖離が大きく、当社が活動する意義を実感しきれなかったようです。
── 社会的に意義がある活動でも、ノバレーゼが手がける意味を見出しにくいと、活動に対するスタッフのモチベーション維持も難しそうですね。
松井:以来、当社だからできる活動に力を注ぐようになりました。植樹をした翌年には、食材について勉強するために農作物の生産現場に行って、みかんの摘果や商品開発のお手伝いを始めています。これは私たちのレストラン事業において、生産者の思いや流通の仕組みを知ることが重要だと考えているからです。
現在では他にもさまざまな活動を広げていますが、活動に関わる誰もがオールウィンになるように意識しながら続けています。
▲ ホームページには、社内外に向けた多様な活動がずらりと並ぶ。
一人の「もやもや」が共感を呼び、協力の輪を広げた
── サステナビリティにつながる活動のアイデアは、どのように生み出されているのでしょうか?
松井:当社にはサステナビリティやCSRに特化した部署はなく、やりたい人が誰でも手を挙げて活動できる仕組みです。ここにいる岩井と前野も、部署の仕事をしながらサステナビリティに関わる企画を出して、実現してくれました。岩井はキッズドレスのプロジェクトを、前野は遊具設置のプロジェクトを担当しています。
── それぞれのプロジェクトについて伺いたいのですが、まず岩井さんが担当されているのは、どのようなプロジェクトなのでしょうか。
株式会社ノバレーゼ 財務経理部 マネージャー 岩井雄紀氏
財務経理部 岩井:レンタルを終えて本来であれば廃棄するウエディングドレスをアップサイクルして、キッズドレスを制作するプロジェクトです。2022年に実現し、現在も継続しています。
▲ 岩井さんが発案したドレスのアップサイクルプロジェクト。ウエディングドレスの上質な素材を活かしたキッズドレスが、3,300円でレンタルできる。
岩井:私はウエディングプランナーとして結婚式の現場にいた当時から、ドレスの廃棄について気になっていました。レンタルのドレスは使用回数が決まっていて、その回数に到達すると廃棄することになっています。この仕組みの必要性を理解しつつ、「廃棄してしまうには早いのではないか」ともやもやしていたんです。
── ご自身の課題意識が、プロジェクトを立ち上げるきっかけだったんですね。
岩井:はい。「結婚式事業を手がける会社ができるSDGsって何だろう?」と考えてきたのですが、業界全体を見渡してもなかなか取り組まれていないのが、ドレスの廃棄問題だと思います。廃棄問題を解決するにはハードルがあると知っていましたが、何よりも自分がやりたくて仕方がないことだったので、発案しました。
▲ 岩井さんが都内のファッション系専門学校に自ら電話をかけてプレゼンした結果、タッグを組むことになったのが東京モード学園。約90名の学生が授業の一環としてドレスのデザインに取り組んだ。
── 実現に向けて特に重視したことは何でしょうか。
岩井:最初に社内に協力者を増やすことです。協力してほしいスタッフに声をかけて、仲間を集めました。加えて、プロジェクトを続けるために重要だと考えたのが、関わるスタッフの満足度です。こまめな連絡を意識し、誰もが積極的に関われる環境づくりを意識した結果、今ではプロジェクトの参加希望者がどんどん増えています。
実際に活動してみて、「ドレスの廃棄について、私も心の中でずっと抱えていた悩みだったので、取り組んでくれてすごく嬉しい」との声が社内から大きかったことが印象的です。私もスタッフも、義務感ではなく「やりたい!」という熱量が強かったから、こうして実現できたのだと実感しています。
自社で閉じずに、社外の「プロ」とパートナーになる
── 前野さんの担当されている遊具設置とは、どのようなプロジェクトなのでしょうか。
前野:児童養護施設に遊具を寄贈するプロジェクトです。2022年に初回を実施したのですが、寄贈するだけでなく、20名ほどのスタッフと一緒に設置してきました。
▲ 2022年の遊具設置の様子。前野さんを含め、ノバレーゼの全国の拠点からスタッフが集まった。
前野:SDGsやサステナビリティについて情報収集し、自分なりにやりたいことを探すなかで、すでにサステナビリティにつながる活動をされている方々と一緒に動く選択肢を考えました。
── 確かに、サステナブルな活動に注力されている団体は多くありそうですね。
前野:そうなんです。いくら大義名分を掲げていてもその活動のニーズがなければ、活動している人たちの自己満足になりかねません。今回は、ニーズを見出されて活動されているプロの方々との協働を目指しました。
しかし、パートナー探しには苦労しましたね……。数多くの団体の情報を収集するなかでご縁をいただいたのが、「特定非営利活動法人プレイグラウンド・オブ・ホープ」様です。被災地や児童養護施設に手作りの遊び場を寄贈されていて、ノバレーゼの文化にぴったりの活動内容だったので、協働が実現しました。
── 前野さんも実際に遊具を設置されて、どのような手応えを感じられましたか?
前野:まずは、子どもたちが目の前で喜んでいる姿を見られたことです。スタッフと一緒に半日ほどかけて手作りしたアスレチックが完成し、子どもたちが一斉に駆け寄っていく姿を見て、涙が出そうなほど感動しましたね。
加えて、活動に参加したスタッフの意識が高まることも実感しています。事業をする上での社会的な責任をこういう形で還元している会社なんだ、と体験することで、会社の文化が浸透するだけでなく、スタッフのモチベーションアップにつながっていました。
── 今後はどのように活動を続けていきたいですか?
前野:活動回数を増やしたり、被災地にも遊具を設置したりと活動を広げながら、この取り組みが定着することを目指します。それから、活動を通じて社外にどんどん出会いが広がっていくので、ご縁を大切にしていきたいですね。2022年に遊具を設置しに行った養護学校にも、2回目に違う形でお邪魔できたらと思っています。
「サステナビリティ」が会社をつなぎ、業界の枠を越える
── 「ノバレーゼのような活動を自社でやってみたい」と思っても、「会社の売上につながらない」という意見も出てきそうですが、会社としてサステナビリティに取り組む意義を、どう考えていますか?
岩井:会社の売上につなげることをゴールにしてしまうと、サステナビリティの本質からずれてしまう可能性があります。私の場合は、社内への反響が大きいことを念頭に置いた上でプロジェクトを発案しました。会社にとって、社内スタッフへの影響や文化醸成につながる投資は全く無駄ではないので、その意義を伝えられれば実現できる可能性が高まるかもしれません。
前野:付け加えると、現場と経営者とプロジェクトメンバーが三位一体になることが重要だと考えます。現場にも会社にも長い目で見ると良い影響があることを、それぞれのキーマンに対して情熱を持って伝えていく。キーマンから理解を得られたら、一気に実現しやすくなるはずです。
ノバレーゼの場合はもともと経営陣からの理解がありますが、それでも安くはない予算を獲得し、現場スタッフを大きく巻き込むプロジェクトの提案になるので、提案の準備には細心の注意を払いました。活動をする目的やステークホルダーに及ぼす影響を全て綿密に調べ上げ、最終的には情熱で勝ち取った決済だったと思います。
── 今回お話を伺って、サステナビリティをきっかけに社内や社外にパートナーを増やすことの可能性を感じました。
岩井:そうですね。ドレスの廃棄問題でいえば業界全体の課題なので、キッズドレスのアップサイクルだけでなく、アプローチの方法を増やしていきたいです。ノバレーゼだけでなく業界が一緒になって取り組んでいくことで、「ウエディング業界って魅力的だな」と思ってもらえるうねりを起こしていきたいと思っています。
そしてサステナビリティこそが、1社の1人のアイデアでさまざまな業界の人をつなげるきっかけになることを実感しました。自分から率先して業界を越えた橋渡しができるような取り組みをしていきたいです。
前野:ウエディング業界って、行動力や企画力がある優秀な人が揃っているんですよね。私たちが本気を出せば業界をもっと盛り上げられるし、他の業界と一緒に日本を盛り上げることができると信じています。皆さんと仲間になって、サステナビリティの切り口から、業界の内にも外にも影響を届けられたらすごく嬉しいです。