ホーム > Business > 結婚式の選択肢を増やしたい。“Mr.ブライダル”が再婚で挑戦したホテル・会費制・子ども無料の「ウエディングパーティ」とは?

結婚式の選択肢を増やしたい。“Mr.ブライダル”が再婚で挑戦したホテル・会費制・子ども無料の「ウエディングパーティ」とは?

会場に入ると待っているのは、スポットライトを当てられた新郎新婦。260人が集う会場に次々と登場するのは、シェフ付きのビュッフェ、マルシェにピエロ。バーでの利き酒勝負から、ゴルフ場でのパター大会まで。

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コック帽をかぶって料理にソースをかける新婦。鉄板で焼かれる和牛を前に、ゲストに混ざって列に並ぶ新郎。

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そう、まるで新しいお祭りのような、とある結婚式のお話。

こんな突飛にも見える披露宴には、「結婚式にもっとさまざまな選択肢があっていい」「それぞれの新郎新婦に合ったウエディングの形を選べる世の中にしたい」の思いが込められていました。

料理・進行・空間を大事にした結婚式へのこだわり。その背景には、「結婚式の本質って何なんですか?」の問いかけ。

4月に再婚のための結婚パーティーを東京渋谷のセルリアンタワー東急ホテルで開催した伊藤淳さんは、長年ウエディング業界に関わり、Mr.ブライダルとも呼ばれているとか。現在はウエディングプランナーの教育に力を注ぐ伊藤氏に、ご自身の結婚式に込めた思いを伺いました。

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▼プロフィール
伊藤淳(いとう・じゅん)
1969年生まれ。大学卒業後にリクルートに入社、人材広告の営業を経てゼクシィに異動。「茨城・群馬・栃木版」「ホテル別冊」の立ち上げ責任者を経験。2006年にウエディングプランナーの人材輩出を目的とした「クラリスウエディングプランナースクール」を創設。執筆やセミナーを通じた業界内外への発信に注力。
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カップルの多様な夢を実現するプランナーを育成

── 「ウエディングプランナーの教育」を掲げて事業を立ち上げられたのは、どのような経緯だったんでしょうか?

日本と海外のウエディングの違いを調べていたら気づいたことがあったんです。

海外のウエディングを見てみると、披露宴にあたるパーティーの形は非常に様々で、それはパーティーを一から設計できるプランナーがいるから。会場よりもプランナーを先に選ぶくらい、プランナーの存在が重要なんです。一方で、日本の結婚式といえばこういう進行でこういうイメージで、って一つのイメージが定着しているでしょう? だから、日本のプランナーって新しいやり方に挑戦する機会がないんですよ。結果、結婚式の座席や演出一つとっても、「このルールにはどんな意味があるんですか?」って質問に誰も答えられなくなってしまっているんです。

でも、お客様の要望って本来は多様なはず。だから、リクエストに応えながらお客様に合った披露宴を設計できるウエディングプランナーを育てていきたいと思ったんです。「こういう結婚式を挙げたい」に対して、ちゃんと要望を実現できる業界にしたいなって。そう考えて事業を立ち上げました。

「披露」よりも「おもてなし」をしたかった

── ウエディング業界に対しての思いと、今回のご自身の結婚式にリンクしている部分はありますか?

僕にとって今回の結婚は再婚で、妻は初婚。どんな式がいいかを考えたときに、どうしても従来の「お披露目型」の披露宴に抵抗がありました。再婚には自分たちが自分たちをお披露目するやり方は合わないし、両親やお世話になった方々をもてなしたい気持ちが強かったんです。やりたい形でやってみようと思って、自分で進行を考えて結婚式を設計しました。

 ── ご自分の結婚式で大切にされたことを教えてください。

 来てくださる方を精一杯もてなすこと。そして自分も楽しめるものをつくること。そのために、まずコンセプトを設定しました。「つながり、が繋がる。はじまりはここから」です。お世話になった方々をどうもてなせるか?と考えたときに、ゲストどうしが交流を深めてもらえる場にしたいと思って。

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── 具体的にはどのようなことにチャレンジされたんでしょうか?

僕が「もてなす」側なんだから、ゲストに余計な気を遣わせたくない。そう思って、結婚式に来る前から負担のないように準備していきました。断りやすいように、招待状はWebで送って、返信もWebで完結。引き出物はないけれど、ご祝儀もナシ。一律2万円の会費制にしました。幼い頃からウエディングを経験してほしくて、お子さんは無料でご招待。小さいお子さんのいるママにも気軽に参加してもらえるように、ベビーシッターを呼んでキッズスペースを用意しました。

結婚式で重要視したのは、「楽しめる料理」「読めない進行」「あっという間の時間」。ゲスト同士が交流するには、テーブルごとに知り合いが固められていたら不可能ですよね。なので、主賓も席次もやめて、コースではなくビュッフェ形式にしました。そしてビュッフェのカジュアルなイメージを覆す、クオリティーの高い料理にするために、ホテルでの開催を決めたんです。

進行はもちろん、型どおりにはしません。次の展開がわかっちゃっている映画って、おもしろくないでしょう?(笑)だから、起承転結を意識しながら自分で進行表をつくっていきました。僕らが会場内に立ってゲストをお迎えして、ドカンと盛り上げた「起」、美味しい料理と他のゲストとの会話をじっくり楽しめる「承」……というように。

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image8.JPG席替えをしたタイミングでビュッフェを出して、「転」を料理で演出しました。シェフがズラーっと並んで、国産和牛の塊を会場で焼いて。料理が好きな妻にとってコック帽が憧れだったので、ソースをかけてゲストにお渡しして。メインテーブルもなくして、僕は肉を食べるために並んで(笑)。二人別々に動いてゲストとの交流を楽しんでいました。

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── 普段の結婚式では目にできない場面がたくさんありそうですね!

僕がやったことは突飛に見えるかもしれませんが、家で友だちを呼んでホームパーティーを開く場面を想像してみてください。友だちに先に家に入ってもらって、自分たちが後から家に入ってこないと思うんです。自分たちが一番いい席について、ずっと座りっぱなし、なんてこともない。友だちに楽しんでもらえるように、できる限りのおもてなしをしたいと思うはずです。僕がやったことはそれと同じで、260名をおもてなしするためのホームパーティーを開催しただけなんです。

自分たちの結婚式から選択肢を増やしたい

── 結婚式を開催されてみて、いらした方々の反応はいかがでしたか?

「結婚式の選択肢を増やしたい」と思って仕事をしているので、自分の披露宴で新しい結婚式の形をお見せしたかったんですよ。だから参列してくださった業界の方々から「楽しかった」「もう一度行きたい」だけでなく、「伊藤さんのような結婚式をやりたいっていう声があって」と聞けて、やってよかったなとすごく思っています。

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いえ、本当は誰でもできるんです。どんな結婚式をつくりたいかを真剣に考えてみて、勇気を持って「僕たち、こういうのをやりたいんです」、「これはこういう理由でやりたくない」って会場に伝えてみてください。要望をどんどんプランナーにぶつけて、実現できないなら実現できる会場を探してみてください。お色直しだってケーキ入刀だって、やらなきゃいけない演出なんて一つもない。自分たちが本当に叶えたい結婚式のかたちを、ぜひ実現してください。

もちろん、これまでの「お披露目型」にも良さと意味があります。でも「これって自分たちがやりたい結婚式ではないよね」と思う人には、違う選択肢をつくっておきたいと考えています。ウエディングにはもっと可能性がいっぱいあって、僕の形も一つの例だから。たくさんの人が「どんな結婚式をしたいか」を考えて、どんどん実現していける世の中にしたいなと思っています。

image11.jpg(文:菊池百合子 / 編集・写真:小松崎拓郎 /企画:ウエディングパーク

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