ホーム > Special > 相手の欠点を受け入れることは「妥協」じゃない。犬山紙子の考える"結婚"との向き合い方

相手の欠点を受け入れることは「妥協」じゃない。犬山紙子の考える"結婚"との向き合い方

皆さんは、結婚にどんなイメージを持っていますか? 華やかな結婚式、好きな人と暮らす幸せな毎日……。でも、結婚生活は楽しいものばかりではありません。経済的な問題、家事と仕事の両立、パートナーの家族との関係など、結婚する前から不安に思っている人も多いはず。実際、結婚生活とはどのようなものなのでしょうか。

今回は、ブログや著書などで、同年代の多くの女性から共感を集めるエッセイスト・犬山紙子さんに、ご自身の結婚についてお話を伺いました。結婚を経て、自分自身の内面が大きく変わったと言う犬山さん。犬山さんの語る結婚のリアルとは?

■「結婚しろハラスメント」がうっとうしい!結婚願望が強くなかった独身時代

――2014年に、ベーシスト・漫画家の劔樹人と結婚された犬山さん。そもそも、結婚願望は強いほうだったんですか?

「独りでいると寂しいな」という気持ちはありましたが、結婚願望自体は強くありませんでしたね。「結婚したら女性が家に入って、家事をして」という世間の結婚のイメージには、自分が当てはまらないなと感じていたことが大きいと思います。だから、自分にしっくりくる形にならなければ、無理してまで結婚、という考えはありませんでした。

――とはいえ、周囲からの「結婚しろ」というプレッシャーもあったのではないでしょうか。

はい、世間の「結婚しろハラスメント」のようなものはうっとうしいと思っていました。いまだに女性って、アラサーくらいになると、「早く結婚しろ」という世間の目にさらされますよね。私はつるちゃん(旦那様の呼称)と運よく付き合って結婚することになりましたが、もしそうでなかったら、うっとうしさに爆発していたと思います。

――劔さんとは、お付き合いしているときから結婚の話はしていたのですか?

つるちゃんとは同棲していましたが、結婚について具体的な話をすることはありませんでしたね。ただ、お互いがおじいちゃん・おばあちゃんになったときの話が出てくることがあったので、「この人とは将来も一緒にいるんだな」と漠然と思っていました。

――同棲していると、リアルな結婚生活もイメージできたかもしれませんね。

そうですね。家賃と生活費は私が担当、家事は彼が担当、という具合に分担したのも同棲時代です。お金の話って、同棲していてもタブー視されがちですが、私はバシバシ聞こうと思っていました。きれいごとではなく、暮らしていくためにお金は重要なので。

170908_0003_50%.jpg


■女性からのプロポーズはあり!結婚に対する男性のプレッシャーも理解して

――そうした同棲生活を経て、結婚することになったきっかけは何だったんでしょうか。

年齢のことはありました。子どもを持つかどうかまだわからなかったけれど、お互い30歳を超えていたので。でも、何より、2人でいると居心地がよくて、一緒にいるとお互いの人生がプラスの方向に進んでいくのが見えたんです。「つるちゃんと結婚しないで、ほかの人と結婚する」ということは考えられませんでしたね。

――具体的に、「劔さんといるとプラスになるな」と思うのはどんなときですか?

まず、性格面。私はどちらかというとせっかちで、とげとげしちゃう部分もあるのですが、つるちゃんといると、そうした部分が浄化されていくのを感じます。
あとは、役割分担の面。たとえば、私はお金周りのことを扱うのが好きなのですが、これに対してつるちゃんは、仕事は好きでもお金にはまったく興味がない人なんです。また、私は家事が大嫌いなんですが、彼は人のために何かをすることが好きで。そういう、お互いの得意・不得意が合致しているのは大きかったですね。

――プロポーズは犬山さんからされたんですよね?

はい。つるちゃんの性格上、自分から言わないということはわかっていたので。男性って、「奥さんや子どもを養っていけるだけのお金がないと、プロポーズできない」というプレッシャーがまだまだあると思うんです。つるちゃんも似たようなプレッシャーがあったんじゃないかと。でも私は共働きで、2人の収入を足して2人で生活できれば結婚していいと思うんですよね。それで、私からプロポーズしました。

――女性からのプロポーズって、ありだと思いますか?

ありだと思いますよ! むしろ「なし」だと思って待ち続けるほうが、時間を無駄にすることが多いような気がします。そして大事なのは、女性がプロポーズするにしても、男性がするにしても、お互いの「結婚に対するプレッシャー」を理解しておくことだと思います。そうすれば、プロポーズのときにも建設的な話ができると思うんです。女性側が「私も働き続けるつもりだよ」「貯金がこのくらいあるからやっていけるんじゃないかな」だったり、専業主婦希望の場合は「こんな風に仕事に集中できる環境を整えられるよ」と提案するとか。

――実際に結婚を決意するにあたって、不安なことなどはなかったんでしょうか。

私はまったくありませんでしたね(笑)。まず、彼との同棲は一人暮らしの何倍もよかったので、生活面での不安はなかったです。家事やってもらえることで、仕事に集中できて、その分、生産性がアップしたので、家賃や生活費という私の担当分も負担になることはなかったんです。また、お互い自分の時間を大切にしているので、「結婚して自分の時間がなくなってしまうのではないか」という心配もしなくてよかったです。

170908_0001・ソ50%.jpg

■相手の欠点を一生背負う覚悟、ある?

――結婚してからは、生活面や精神面など、変化はありましたか?

生活は同棲時代と変わりませんでしたが、性格面は大きく変化しましたね。とにかく、夫が私と一緒にいてストレスにならないよう考えるようになりました。私は、家に帰ると癒やしてくれるつるちゃんがいるので、「家に帰りたい!」といつも思うのですが、つるちゃんからすると、「家に帰るとイライラしているやつがいる」と思ったら、家に帰りたくなくなりますよね。そうならないために、私もニコニコしていたいな、と考えるようになりました。
それから、相手の欠点を背負っていかなければいけないというのは、結婚のリアルだなと思います。たとえば、つるちゃんのようにやさしすぎる人だと、人に言えないところがある分、自分の中で抱え込みすぎてしまうことがあると思うんです。そこはちゃんと把握して付き合っていこう、と思っています。
そんなふうに、人の長所と短所って表裏一体。欠点のない人はいないし、自分だってそれを受け入れてもらってる。そして、それを受け入れるのは妥協ではなく人付き合いの上で当たり前のことなのかなと。
よく「結婚は妥協」と言う人がいるけれど、もし自分が相手にそう言われてたら最悪じゃないですか。それに世間の理想像に自分の大切な人を当てはめて、理想と違う部分を妥協と呼ぶのってすごくずれていると思います。

――「欠点を受け入れる」というのは、結婚後もずっと仲良くやっていくための秘訣かもしれませんね。ほかにも、良好な関係を続けていく秘訣はありますか?

秘訣とまではいきませんが、「離婚しない努力」は怠らないようにしています。カップルが離婚する理由って、コミュニケーション不足やすれ違い、浮気が多いんです。だから、そこに対する予防策を打とうと考えるようになりました。
まず、お互いに意見をためないで言うようにする。同時に、相手が「これを言ったら気まずくなる」と思わないように、話すときも空気を悪くしないよう意識しています。それから、2人の時間を必ず取る。子どもが生まれた今でも、2人で食事に行くなどするようにしています。
浮気については、相手をコントロールするのは無理な話なので、自分自身が浮気をしないようにすることが大切だと思っています。「少しでもときめいたら、その人とは仕事をしない」「連絡先も全部消す」というシミュレーションはしていますね。

■自分を全部後回しにしないといけないような生活なら、離婚した方がいい

――お話を聞いていると、犬山さんは結婚していいことばかりなんですね。「夫から離れて独りになりたい」と思うことはあるんですか?

ないですね(笑)。喧嘩もしないですし。ただ、喧嘩をしないのは、逆に問題がある面もあると思っています。夫が言いたいことを言わずに、ためちゃうクセがあるので。私がもともと怖く見えるから、言いにくい空気を出してしまっているかもしれませんし。だから、夫がためこんでていつか爆発してしまわないよう、ヒアリングは徹底しています。「今何かやりにくいことある?」「こうしたほうがもっとうまくいく、と思っていることある?」といったことを積極的に聞くようにしています。

――「ない」と言い切れるってすごいですね! そんな相手を見つけるためのポイントは何だと思いますか?

私の場合は結婚してからわかったことなのですが、客観的に自分を見ると、おもしろいようにどんな相手がいいかわかってきます。たとえば、「長所は物事をきちんと言えるところ」「短所は怒りやすい、家事が苦手といったところ」のように、自分の特徴を洗い出すんです。そうすると、自分に足りないところを補ってくれる人を選べます。世間で言うスペックよりも、そういう内面から選んでいくのはポイントかもしれません。

――結婚における注意点があれば教えてください。

自分を全部後回しにしないといけないような生活になるんだったら、結婚はやめたほうがいいんじゃないかと思います。「私さえ我慢すればうまくいく」という考え方は美徳に見えますが、その先で幸せになっている人をあまり見たことがないですね。
もちろん、状況的に、我慢せざるを得ない状況はあります。でも、そういうときって、家族全員が等しくつらいはず。そのつらさが、家族のなかで偏っていて、自分だけが重荷を背負っているような状況になってしまうのであれば、離婚したほうがいいんじゃないかと思います。

170908_0014_50%.jpg

■犬山紙子が考える「結婚の意味」とは?

――人生において、「結婚」とはどのような意味を持つものだと考えますか?

 「結婚に必ず意味がある」というよりも、それをした結果、自分の人生がよりよくなるもののひとつとして、今、結婚があるという感じを抱いています。私の場合は、相手がつるちゃんだったからこその自分自身の成長も含め、人生がよりよくなっている、という感覚ですね。

――では最後に、読者の方へ結婚についてメッセージをお願いします。

結婚において大切なのは、目的が「結婚」ではなく「その人と結婚することで自分の人生がよりよくなるか」であるということ。「この人と一緒だったら人生がよりよくなりそう」という人と出会ったのなら、結婚はとても良いものだと思います。だから、世間の「結婚しろハラスメント」や「結婚相手は妥協したほうがいい」といった意見は無視してください! 「結婚したい」「結婚しなきゃいけない」と単に思うのではなく、自分の人生の在り方と照らし合わせて、結婚について考えられればいいと思います。

(文・執筆・西東美智子/YOSCA、写真・栗原洋平、企画編集協力・FIREBUG)



プロフィール
犬山紙子(いぬやま・かみこ)
エッセイスト。『負け美女』でデビュー後、雑誌やテレビなどで活動。現在、NHKラジオ「ごごラジ!」の月曜パーソナリティーを務めるなど、アラサー女子の代弁者として大人気。近著に『私、子供欲しいかもしれない』(平凡社)がある。

https://twitter.com/inuningen


関連記事